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最近読んだ小説の感想

こんにちは、昨日はプチ失踪気分だったらふこです✋

今日は最近読んだ小説の感想を簡単に残したいと思います。
今書かないと思ったことを忘れそうなので…。
読みたいけど、まだ読んでないと言う方はネタバレに注意です⚠️

『夜のピクニック』 恩田陸

ずっと家で積み本になっていたけど、ようやく読み通せました。
もう20年前くらいに出版された本で、当時は本屋大賞を受賞して映画化され、かなり話題になっていた記憶があります。
学生青春系の小説はあんまり得意じゃなくて、今まで読まず嫌いで避けてきちゃったのですが、この本は面白かった。
最後の方になると終わるのが寂しくて無駄に寝かせたりしてました。

物語のあらすじを簡単に書いておくと、
主人公が通う高校には、全校生徒が夜通し80キロを歩き通す歩行祭という伝統行事があります。
物語では、高校3年生の最後の歩行祭で起こる、主人公を取り巻く人々の友情や恋愛が描かれています。

主人公の貴子と同級生の融(とおる)は異母兄妹なのですが、それを周囲に隠して学生生活を送っています。
2人の父親は亡くなっているので、どちらも母子家庭。
融が、母親を大切に思いながらも、早く母親から自立したいと気が急いている場面では、「母子カプセル」なんて嫌な言葉を連想します。
私も母子家庭で育っているので、融の気持ちは痛いほど伝わってきました。
自立への渇望みたいなのって、高校生の頃から特に強く感じるんですよね。

物語の中では、自立する未来だけを目指して高校生活を蔑ろにする融を、親友や主人公たちが「今」に目を向けさせます。
登場人物は結構多いのですが、書き分けが上手だし、それぞれが魅力的です。

心に残ったのは、病気で亡くなった2人の父親のこと。
貴子の母親と不倫して、2人の女性に同学年の子どもを産ませた男性です。
行動だけみると一生罪を背負って生きていきなよと思うのですが、融が回想しているように、この父親の性格がもっといい加減でプライドが高くなければ、彼はまだ生きていたのだろうと思いました。
同じように、もしくはもっとだらしない人は世の中に結構いると思うけど、みんなが自死するわけじゃない(父親は一応病死ですが)。
そんな無様な自分に耐えられなかった、犯した罪の責任を抱えきれなかったということなのかな。
状況は完全に違うけど、現実から逃げ出したという点において、なんとなく身につまされました…。


ある場面で、「学者のアイデアがひらめくのは、散歩中のことが多い」っていうセリフがありました。
散歩は創造性を高めるなんて聞きますが、よく散歩をする私からみても、確かにそうかもなあと思います(私の創造性は一向に高まりませんが)。
最近は何かに悩んだら、散歩してる間に浮かんできた考えが最適解なのではと感じてます。

貴子と融はお互いに嫌われていると思っているので、途中かなりギクシャクしているのですが、それが血を分けた兄妹だからという理由と、恋愛感情を持っているからという理由の、どちらも表現されているように感じます。

和解した先も、その変えられない関係性によって悩んでいくストーリーが作者さんの中では既にあったんだろうな。
それでも唯一無二の理解者を得られた2人は、きっと乗り越えていけるということなのでしょう。
うーん、なんて輝かしい青春。羨ましい。

『ぼくは勉強ができない』  山田詠美

まずこの秀逸なタイトルがすごいですよね。
この本は平成8年に出版されてるので、上記の本よりさらに前です。
現代の空気感とはちょっぴり違うかもしれませんが、いつの時代も変わらない学生時代の悩みや本質みたいなものが表現されてます。

簡単に言うと、勉強が苦手だけど女性にモテる主人公が、窮屈な学生生活を小気味よく駆け抜けていく短編集です。

この本の解説にも書かれているのですが、読了後の感想はまさに「見抜かれた」っていう感じです。
例えば、
「どんなに成績が良くて、りっぱなことを言えるような人物でも、その人が変な顔で女にもてなかったらずい分と虚しいような気がする」
「女の子のナイトになれない奴が、いくら知識を身につけても無駄なことである」
「気分が悪くなってる間ってね、なんにも考えられなくなるの。すごく利己的な自分に気付くのよ。」
「人が人を無責任な立場から裁くことなんて出来ないよ。」
などなど

それが言いたかったんだよ〜と思うこともあれば、言われてグサっと刺さる言葉もあります。ズバリ言うわよって感じ。

物語の中では、同級生が自殺してしまうというエピソードもあります。
その同級生を想いながら主人公が電車の中で考えていたことが胸にきました。
『…(中略)他愛のない喜び、それが日々のひずみを埋めていく場合もあると、ぼくは思うのだ。』
春の陽気に微笑むこととか、本当はそんな小さな喜びがあれば、生きていくのに十分なのでしょうか。

あと痛快だったのは、学年の美少女とのエピソード。
自分が周りに愛されることに関して一切手を抜かない美少女。
でも、それを人工的なものでなく自然だと思わせるためのテクニックを駆使しています。
私も今までの人生で何人かこんな女の子に出会ったことがあります。
すごく綺麗で性格も良いんだけど、何か腑に落ちないものを感じていて、でもやっぱり良い子だし周りも良い子って言ってるし、最終的にちょっとでも違和感を持つ私の方が性悪だという結論に至りました。
でも私が思ってたことを主人公が言語化してくれて、なるほどと思いました。
「ぼくは、人に好かれようと姑息に努力する人見ると困っちゃうたちなんだ。ぼくの好きな人には、そういうとこがない。ぼくは、女の人の付ける香水が好きだ。香水よりも石鹸の香りの好きな男の方が多いから、そういう香りを漂わせようと目論む女より、自分の好みの強い香水を付けてる女の人の方が好きなんだ。」
これか、私のモヤモヤの正体は。
この違和感を感じてる人が、地球上に私1人じゃなくてホッとした。

でも、その後美少女も主人公に反撃。これもグサッときました。

「優越感をいっぱい抱えてるくせに、ぼんやりしてる振りをして。(中略)自由をよしとしてるのなんて、本当に自由ではないからよ」

おっしゃる通りですね。
媚びが嫌いで、逆にぼんやりしているアピールをしてしまう。
私はどちらかと言うと、主人公の思考に近いです。
私の場合は元々かなりぼんやりしてるんだけど、過剰にぼんやりしてる感を出しちゃう時が確かにある気がする。
…私はいつになったら、ちゃんとした大人になれるんでしょうか。
書いてたらちょっと悲しくなってきた。

おわりに

最近、エッセイだけじゃなくて小説も読めるようになってきたので、少しずつ積み本を減らしていこうと思います。

ここまでありがとうございました!

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