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見逃しを防ぐための腹部CTの読影の順番

胸部に引き続き、腹部CTの読影の順番についてまとめます。

胸部CTの読影の順番はこちら

腹部CTでは以下の順番で読影をしましょう。(あくまで個人的な順番です。)

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順番に解説します。

肝→胆→膵→脾→副腎→腎→尿管

漏れなく読影するために自分で追う臓器の順番を決めましょう。

私の場合は上のように追っています。

まずは肝臓です。

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大きな右葉ばかりに目が行きがちですが、左葉や尾状葉もしっかり追いましょう。また右葉もドーム下から肝下縁までしっかり追うことが重要です。

肝下縁の腫瘍、肝左葉の腫瘍を見落とした経験、私もあります(^_^;)

続いて、胆嚢です。

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胆嚢では、壁肥厚・胆石・腫大の有無をチェックします。

その後、肝内胆管〜総胆管の拡張がないか、結石がないかもチェックします。

続いて、膵臓です。

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膵臓は、細長い臓器ですが、立体的に存在していますので、膵鉤部、膵頭部、膵体部、膵尾部と丁寧に全貌を追いましょう。

その際に、主膵管の拡張・膵腫瘍・膵のう胞・石灰化の有無を見ます。

続いて、脾臓です。

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脾臓は、他の臓器と比較して病変があることは少ないですが、脾腫瘍・脾腫・副脾・脾動脈瘤の有無をチェックしましょう。

続いて、副腎です。

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副腎は腎臓の上にあり、漢字の「人」のような形をしている小さな臓器です。

小さいので読影するのを忘れがちなので注意です。

副腎では、腫大がないか、腫瘤がないかをチェックします。

続いて、腎臓です。

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腎臓は左右に2つありますので、両側見ましょう。

腎嚢胞・腫瘤・水腎症の有無をチェックしましょう。

また腎周囲の脂肪織濃度上昇が非特異的に認められることがありますが、それに左右差がないかもチェックしましょう。

続いて、尿管です。

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尿管は追いにくいこともありますが、基本的に上から膀胱に至るまで追うことができます。

尿管の拡張がないか、結石がないか、腫瘍がないかなどをチェックしましょう。

特に腎臓で水腎症を認めている場合にはその原因検索として尿管をチェックします。

膀胱、前立腺あるいは子宮、膣、付属器

尿管を追った後で、膀胱をチェックします。

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膀胱では、壁肥厚・腫瘍・結石の有無をチェックします。

続いて、男性の場合は、前立腺を、女性の場合は、子宮・付属器・膣をチェックします。

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これらの骨盤臓器はMRIには負けてしまいますがCTで分かる範囲で観察します。

前立腺では前立腺肥大・前立腺腫瘍の有無をチェックします。

子宮では筋腫・腫瘍の有無をチェックします。

付属器では、嚢胞や腫瘍がないか、嚢胞がある場合は、機能的な嚢胞で説明が可能なのかをチェックします。

大動脈およびその分枝

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その次に、血管を追います。

大動脈自体とその周囲をチェックします。

大動脈自体では、動脈硬化・動脈瘤・解離の有無をチェックします。

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またリンパ節腫大は大動脈やその分枝周囲に認めることが多いため、大動脈〜総腸骨動脈〜内・外腸骨動脈およびその分枝沿い、下大静脈周囲をチェックしてリンパ節腫大がないかをチェックします。

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前立腺癌、膀胱癌、子宮頚癌、子宮体癌などでは、内腸骨動脈の分枝である閉鎖動脈周囲の閉鎖リンパ節に転移を来すことがあるのでそこも意識してチェックしましょう。

消化管

続いて、消化管をチェックします。

CTで追うことができる消化管は

☑️食道→胃→十二指腸
☑️直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回腸末端・盲腸→虫垂

となっています。

逆に言えば、この間の小腸(空腸および回腸)は基本的には追えないということを知っておきましょう。(腸閉塞などで拡張している場合は追えることがあります。)

消化管腫瘍はCTでスクリーニングするものではなく、あくまで内視鏡ですが、CTでわかるような腫瘍を見つけた場合は当然指摘する必要があります。

まず、食道→胃→十二指腸を追います。

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壁肥厚や腫瘍性病変の有無をチェックします。

また胃、十二指腸では潰瘍性病変を認めることがありますので、その有無も見ましょう。

続いて、下部消化管です。

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下部では、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回腸末端・盲腸→虫垂と肛門側から追っていきます。

追いにくい場合はCTの濃度を調節して(ややウインドウ幅を広げて(400程度))読影します。

虫垂は同定できることが多いですが、できないケースも割とあります。

脊柱管

その後で、脊柱管をチェックします。

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血腫や腫瘤などがなにかを観察します。

筋肉など軟部

その後、筋肉など軟部組織を観察します。

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基本的に左右対称ですので、左右差がないかをザーっと見ていきます。

筋萎縮・血腫・膿瘍・皮下腫瘤などがないかをチェックします。

骨条件

最後に骨を見ます。

骨を見る場合は腹部条件のままではなく、骨が観察しやすい骨条件に変更する必要があります。

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肋骨骨折・腫瘤や椎体の変性、腫瘤の有無をチェックします。

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冠状断像や矢状断像があれば、それらもチェックします。

特に矢状断像では、圧迫骨折(冠状断像でも観察可能)、配列異常の有無、変性の程度をチェックします。

以上を動画にまとめました。

見逃しを防ぐための腹部CTの読影の順番(動画版)

この動画を出した後で、放射線科の大先輩からメッセージが届きました。

こちらの書籍も書いておられる偉大な大先輩です。

いつもわかりやすい解説ありがとうございます。腹部CTの読影手順ですが、最初か最後にきっと肺野条件も見てられると思います。

・・・・。

肺野条件で肺炎や肺腫瘍が見つかることがあります。

熱源精査で腹部CTが撮影され、実は肺の肺炎があったということはよくあります。

肺野条件

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腹部条件から骨条件に変更するように、簡単に肺野条件に変更することができます。

この方では肺炎や肺腫瘍は認めていませんが、気腫性変化を認めていることがわかります。

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ということで動画での解説に加えて肺野条件もチェックしましょう。


最後までお読みいただきありがとうございますm(_ _)m


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