株主利益を無視する経営陣の企業②
前回の記事で株主と経営陣の利害が一致しない場合があり、それが個人投資家に不利をもたらすことを指摘した。具体的にどのような不利益を投資家にもたらし得るのか、またそれを避けるにはどうすれば良いのかを最終的に考察するのが目的となる。
本稿では、具体例として挙げる企業の財務状況を確認する。
さて、以下の企業について投資を検討してみよう。
これだけ見ると、平凡な業績指標を持つ不人気な中小企業である。
しかし、この企業をピックアップしたのはある理由がある。
この企業は、時価総額を優に超えるほどの現金を保有している。それも事業を運営していくために使うわけでもない、タンス預金のように手つかずのままになっているお宝である。投資界隈ではネットネット株と呼ばれている。
具体的にどれだけ貯めこんでいるのか見てみよう。
価値の判断が最もブレにくい流動性の高い資産だけを評価した場合でも、市場で評価されている会社価値(時価総額)の2倍以上を持っていることになる。
つまり、あなたがこの会社を127億円で丸々買い、その後直ちに会社を解散させれば271億円はあなたのものである。買った瞬間にリターンが確約されているという点で最高の買物だと言っていい。
しかし、この企業が不当に安い株価のままでいるのは、投資家が正当なリターンを受けられると評価していないためである。つまり、お金を沢山持っていても還元してくれないなら意味がないよね、ということだ。
企業活動とは、投資活動とも言える。ある計画に対する投資によって利益が生み出されることはどの事業においても共通である。
話を広げると、余剰現金を保有しているならば企業はそれを利用して利益を生み出し、株主に還元することが当然期待される。通常の企業活動における投資から期待できるリターンが得られないならば、余剰現金は自社株買いや配当金という形で株主に還元するのが自然な流れであり、取締役会に求められる行動である。
次回は、なぜ株主に還元されないのかについて考察していく。
*本稿は投資に関する助言を意図したものではないことに注意されたい。
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