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偶然の出会いは必然に変わる。


1998年9月のある日、渋谷駅。
田舎から出て来た者たちが最初に受ける洗礼、
渋谷スクランブル交差点に立っていた。

「これが噂に聞いていた渋谷の
スクランブル交差点か・・・」


バーボンとマルボロとサラブレッドの名産地であり、
フライドチキンで認識されているアメリカの大いなる田舎、
ケンタッキー州からやって来た自分は人の多さに立ちすくんだ。


黄色に赤い文字で書かれたTOWER RECORDS
それを目指せば良いと弟に言われたけど、
どんだけ看板あるのよ・・・渋谷。

この看板の数だけお店があり、仕事をしている人がいる。
当時、自分は大学を卒業し、何もしていない。
学生でもなく、会社員でもバイトでもない。


宙ぶらりんの僕には看板が無い。
とても不安な状況。
漠然と抱いている夢に縋ろうとしていた。


現状不安定、未来は不確定。
財布にはまだ捨てることの出来ない
大学の学生証。


肩書き:無職
渋谷のスクランブル交差点を
忙しそうに歩いている人達が羨ましかった。
どこか目的があるから急いでいるんだろう、と。

交差点を渡れずに途方に暮れていると

"困った時は人に聞きなさい"


母からの教えを思い出した。
しかし、誰かに聞こうとするも
早すぎる人の流れに声をかけることはハードルが高すぎる。
目に入ったのは「渋谷駅前交番」


「すいませーん」
はい、どうしたの?
「あの、、タワーレコードに行きたいんですけど・・・」
え?タワーレコード?(ちょっと驚いた表情)
んー、じゃあ連れて行ってあげるよ


かくして僕はお巡りさんと一緒に
スクランブル交差点を渡り、
タワレコまで 連行  連れて行ってもらった。

警:兄ちゃんどこから出てきたの?
「あ、アメリカです。」
警:え?アメリカ??
「ケンタッキー州という田舎から」
警:ほぉ〜そうなんだ。

人生初のタワレコは警察官と一緒に向かった。
いい人だった。

てくてく、、、はい、ここ。
え!到着。早っ!近っ!恥っ!



渋谷はタワレコと今はもうないHMV。
でも、一番通ったのは新宿駅、南口のタワレコかな。


お金がないから新譜をチェックするために
視聴機は隈なくチェック。

僕がよく通っていた頃はヘッドホンは
頭の上に乗せるタイプじゃなくて
反対にアゴの下に頭の部分がくるタイプだった。


あのヘッドホンで聴く音楽は魔法がかかったように
めちゃくちゃ音楽が良く聞こえた。


あれは音質というよりも
音楽との出会いが嬉しく、
自分が発見した!(発見していないけどね)
という気持ちが強く表れていたんだろうな。



そして、店員さん達の情熱が感じられる
手書きのポップ

この熱量!手書きだからこそ伝わる。

この手描きのポップを読みながら
視聴機で音をチェック。
顔も知らない店員さんと会話をしている
そんな気持ちになる。

推し曲が同じだと
「分かる!」となったり。


やたらアルバムのオススメが多い店員さんとか
カラフルな色使いのポップとか
音楽を届けるための工夫。
出会ってもらいたい!という熱意。


オマエ、ワスレテ、ナイカ?

あ、あなたは!デヴィッド・ボウイ様‼︎

「オマエ、ハイスクールのキッドだった頃、
フレンズに自分の好きなミュージックを
熱く語ってイナカッタカ?」


確かに。あの頃、
「これ、めちゃくちゃいいよ!」と
アーティストの情報や、曲のバックグラウンドは無視をして、
ただ、鬱陶しいほどの情熱だけで
音楽を聴いていたし、シェアしていた。


ラジオという媒体で音楽を紹介する時は
好きなものだけ紹介することは無理である。

が、

「これ、好きです!あなたはどうですか?」
という言葉にはせずとも熱量を伝えることは
あの頃と変わらない。

むしろ、強くなっている。


音楽を届けたい!
心の火種を燃やし続けなければ。

このタワレコの店員さんのように
作った音楽にリスペクトを込めて
リスナーに届けて行きたい。


そうだよね、Bowie?

当然だろ。
何を当たり前のことを言っとんだオマエは。


梅田大阪丸ビル店が1月19日をもって閉店した。
その最終日にお店へ。

ここはFM COCOLOの番組
MARK'E MUSIC MODE

サテライトスタジオから生放送していた。

DJのマーキーさんに
番組スタッフ

ラジオDJとしてデビューする前、
僕もよくサテライトに番組見学しに行っていた。


渋谷のスペイン坂スタジオはTFM
渋谷のHMVはJ-WAVE
渋谷のタワレコはInter FM

渋谷にはたくさんの
FMサテライトスタジオがあった。


インターFMのサテスタは
通りに面しててカッコよかったな。
自分もDJになったらサテライトで
番組をやりたい!そう思っていた。

サテライトスタジオは
FMラジオにとって大切な場所だと思う。


見えないラジオが見える!
というのが新鮮だし、スタッフの仕事ぶりも
のぞき見することが出来る。


何よりDJってカッコイイ!と
思ってもらえる場所・・・
だと思う。


名古屋のZIP-FMのラシックにある
サテスタはこれからも続いて欲しい。


そんなたくさんの夢や希望を
与えてくれる場所、CDショップ。


中学生の頃、初めてデートの
待ち合わせはCD屋だった。


緊張してなかなか話せなくても
音楽があれば共通の話題があった。

お互い好きなバンドの話や
知らない音楽の話はいつの時代も
モジモジしちゃう世代の強い味方だ。


高校生の頃は自分が知らない、
なんなら周りの友人も聞かないような
アーティストを探す場所だった。

THE CUREというバンドに出会えたのも
CDショップだったし、
ジャケ買いしたPRINCEのアルバムが
後に「名盤」と呼ばれるものと知って
ムフフとなったり。


大学生の頃は
ジャズのアルバムを中古CDショップで
探すのにハマった。
今でいう「ネオソウル」と呼ばれる
ヒップホップとジャズのコラボレーションの最初の頃。


ラジオDJオーディションで使用する
音源も、番組でオンエアする曲も
CDショップで手に入れていた。


時代は変わる。


もちろんサブスクリプションの登場で
音楽の聴き方の革命が起きている。

僕もApple MusicでJ-Pop Now Radioで
世界165ヵ国に向けて配信している番組を
担当している。

これね。聞いてね。


音楽は時代も場所も言語も飛び越える
すごい芸術だと思う。

その素晴らしい芸術作品を紹介するのが
ラジオDJやディレクターの役目であると思う。


より音楽の声に耳を傾け、作品の声を聴き、
作者の意図をより明確に言語化することが
僕たちの仕事。


今、多くの人が音楽にアクセスしやすい環境だからこそ、
「何を聞いていいのか分からない」
と言う恵まれ過ぎた状況も生まれている。


例えば食べ放題のお店に行き、
あまりのジャンルの多さに自分が食べたいものが
分からなくなるような状態。

そこに店員さんが
「お肉ならこちらのステーキや唐揚げもありますよ」
とか、
「麺類はラーメン、とんこつラーメンがオススメです」

など声をかけてくれると
自分が何が欲しいのかが分かることがあるでしょ?


今後よりラジオはそういう場所になって行くだろう。
もちろんCDショップも大切な出会いの場所は変わらない。
店員さんも、よりキュレーターのような存在になる。


僕も平日はROCK KIDS 802 OCHIKEN Goes ON!!で
音楽を中心にリスナー同士を結ぶ番組を、
日曜日はChillin’ Sundayで最新の洋楽や邦楽を独自の角度で
リスナーの皆さんに届けようとしている。


そして、Apple MusicのJ-Pop Now Radioでは
その名の通りJ-Popを中心に地上波とは違う視点で
日本国内はもちろん、世界の架け橋になるような気持ちで
番組を担当している。


僕が多くの音楽とCDショップで出会ったように
僕の番組で人生のサウンドトラックとなるような
音楽と出会えてくれたら嬉しいな、と思っている。


最後に、
タワーレコード梅田大阪丸ビル店
長きに渡り多くの方の音楽ライフを支えて頂き
有難う。

あの地下に降りていくお店の作りは
ライブハウスに向かうのと似たような気持ちでした。

「そこに、心揺さぶる何かがある」
NO MUSIC, NO LIFE

ありがとうございました。



















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