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石に枕し流れに漱ぐ

早朝5時、雨は上がったようだが、土のにおいが辺り一面を包んでいる。
テレビの気象予報士が言っていた通り朝方には雨はあがり、雨具は家に置いて少しでも身軽にしたい。
目的地は茨城県土浦市と茨城町涸沼。どちらもシクロクロスの会場であり同県内で同日開催、さぞ参加者はどちらに参加しようか悩んだに違いない。私は名古屋に帰省するはずだったが予定は急遽変わるのが常、空いた時間に参加者応援に行こうと思い立った。

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自走で向かう計画を立て、ほぼ知らない道を走るのは例え130kmの道のりでも非日常がそこにあるから素晴らしい。少々痛めている右膝に気を使いながら一路北へ向かう。
道を知らないというのは素晴らしい事でありギルティでもある。大動脈の国道6号線は所謂ヒトケタ国道よろしく交通量と比例し、路肩はお世辞にも良くはない。
「ヨーロッパでよく見かける石畳(パヴェ)もこんな感じ」と思いを馳せようにも所詮、北関東へ続く国道沿いの道、景観が違いすぎ苦行であった。路面と信号機が多い区間は利根川を越えればある程度は緩和される。しかし真っすぐ土浦に向かおうとするもの粋ではない、かの有名な牛久大仏を見ずして北には行けぬと進路変更。

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遠巻きからでもわかるその存在感は出来の悪い特撮映画のような違和感を与えてくれた。ここまで大きいとありがたみも俗っぽく感じてしまいがちだが、どことなく雲に包まれたその姿も神々しい。

ほどなく土浦バイクロアの会場に到着、いつもの顔ぶれに挨拶をし時間があっという間に過ぎていくが、私のゴールはここではない。

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早々に退散し涸沼を目指す。ここからは完全に未知の領域となる、事前にルートを半地元民にヒアリングしたおかげで道は好調快走路、100km超えても脚と膝は快調、路面も快走、風は向かい風。完璧なものなどない、何か一つ欠点があった方が魅力的に感じるではないか!と思いたい。

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雨上がりの土の匂いは都内からここまでずっとついて来る。自然とはそういうものだ、自身の脚を回し進む事でしか味わえない距離感と移動速度、これが好きだ、と自分自身再確認をする。眼前に広がる道は当たり障りのない丘陵地帯に伸びる林と田畑を横目にデジャブとも言える同じように続く。
涸沼に付けばシリアスな競技者がその名の通り力を尽くして力走している。普段はコーステープの内側から見る景色を外側から見る。これも非日常で刺激的。走り切った友を労い、リザルトに目を通す。自身が走っていたらどの位置だったかなんて無意味な思想も今日だけは許して。

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知らぬ道を紡ぎ目的地に着く、その過程があれば目的地なんて必要ないのかもしれない。なんて、かっこいい事言ってみたいが、私には無理なので次回も目的地の選定と根拠探しから始めようと思う。

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