続・奥信濃への道 第27走:経験は山と泳ぐ
人間というもの、一度経験したことに関しては鈍感になる物だ。
1年前には50kmという途方もなく感じた距離も、経験値と言うものは刺激を鈍らせるには十分な要素の一つ。
2年目の奥信濃50kmは良くも悪くもリラックスして臨むことが出来たのは、その経験であろう。
補給は昨年と同様に準備しつつも、エイドの充実さを身をもって体験したため、余裕はあるが持ちすぎない程度に留めザックに放り込む。
ヘッドライトは本年の目標として”日が出ているうちに完走する”としている為、必携品なので持ち合わせてはいるが、ザックの一番底に収納する。
ソックスも50km程度であれば多少ぬれても、脚に影響が出る前にゴールできそう。
であれば予備は持たない。
ある程度の熟練者がそうであるように、経験値から得られる一番のメリットは携行品の低減だ。荷物は軽ければ軽いほど良い、UL系が流行っているのも必然ではあるが、携行品持ちすぎないテクニックには経験値が必要。
さて、そんな中スタートした今年の奥信濃50kmカテゴリー。梅雨入りにも関わらず奇跡的に天気は雲時々晴の予報、トレランには最適な気候の中走り出した。
昨年の反省から最初のエイドである5㎞地点の糠塚エイドは、トイレのみでエイド支給の補給品を数点頂戴してほぼスルーする。
登りでの渋滞を回避するために早めに前の集団を抜いていく。なぜならシングルトラックの沢登は渋滞のメッカであるため、前々で通過するのがタイム短縮の鉄則と昨年学んだ。
今年から渡河ポイントには数か所橋が掛けられ渋滞は昨年ほどひどくなかったが、それでも上り下りが険しい個所は通過待ちの渋滞が発生する。
渋滞中に補給を行い、走れる場所は極力走る続けることにより、無駄なタイム短縮を狙う。
50kmであれば多少強気に走っても脚が持つと見越していた。
斜度のある登りのセクションでは歩幅を短くし、緩斜面ではストライドを大きめにとってペースの良い歩行を心がける。おかげで登りでは、他のランナーにあまり抜かれることは無かった。
第2エイド”かやの平”の手前でこのコース最高部を通過する。
しかし、私は如何せん下りのテクニックが無い。具体的には下りで脚に負担をかける走り方が出来ないのだ。体重が68kgと重量級なのもあるが、身体を重力に任せて下ってしまうと、ブレーキを掛け速度を調整するのに、太股の前側の筋肉を非常に酷使する。
かやの平までのジープロードの下りが7㎞ほどあるが、のんびり下っていると登りで抜いたランナーさんにさっそうと抜かれる。
自分よりほんの少し早いペースなので後ろについて一緒に下って行くが、これが誤算であった。
幾分、登りで余裕を持てたこともあり、気持ちよく着いて行った結果、かやの平に到着地点ですでに脚に来ている。
タイム的には昨年度よりいいペースで来ているのだが、その代償は少なからずジワジワと脚を侵略しつつあった。
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