これも「読み」ですか? 11
どうも、ラジオポトフの今田です。
現代川柳の「読み」シリーズ第11回です。
今回は小池正博さん編・著の『はじめまして現代川柳』の帯にある6句に「読み」をほどこしていきたいと思います。
過去回は▼のマガジンにまとめてあります。
それでは6句、一気にまいります。
【1】
記憶にはない少年が不意にくる
/石部明
■見ず知らずの少年を「記憶にはない少年」と呼ぶことで世界は始まる。記憶にないのだから当然不意にくるし、おそらく不意に去りもするだろう。ちなみに川柳は不意に始まるが、17音くらいで終わるだろうと予想がつくのがいいところ。
【2】
都合よく転校生は蟻まみれ
/小池正博
■すさまじく質が高く、商品価値のある「ボケ」だと思う。「ボケ」なだけにまじまじと鑑賞するのは野暮な気がしてしまうのでこのへんで。あ、都合がいいのは転校生でも蟻でもなく、言葉を好き勝手に運用する川柳のほうだと思います。
【3】
ややこしいので馬肉だと言っておく
/丸山進
■じゃあ馬肉じゃないってことか、とツッコめるのは読む側が解釈をひとつに絞っているからだ。たしかに馬肉だと言っている。が、そこに「馬肉でないことを糊塗しようとする意図」があるかどうかは慎重に考えたい。ユニコーンの肉は馬肉だろうか。
【4】
先生の生まれた町のあぶらあげ
/八上桐子
■ぽちゃん。ぽちゃん。「先生」というしずくが起こした波紋と「あぶらあげ」というしずくが起こした波紋の不規則な干渉を見る。先生はもうその町にいないだろう、と先生に鑑賞のスポットをあてがちだが、同じだけあぶらあげにも光をあてねば。
【5】
いけにえにフリルがあって恥ずかしい
/暮田真名
■これも【2】に近い心意気というか、ふざけへの意識の高さを感じる。「いけにえ」と「フリル」の距離感と、それが「恥ずかしい」ことなのだという解説。現代川柳の、ある側面におけるクラシック。
【6】
銀河から戻る廊下が濡れている
/加藤久子
■前にラジオポトフの本編でも鑑賞した句。スーパーや公園ではなく、銀河から戻ってきたからこそ濡れた廊下の特別性に気づけるのでは。じっさい、宇宙飛行士がスピリチュアルな経験を語るのはよくあることだ。
【おわり】
はいおわりで〜す。このくらいのサイズ感で、だいたい週1ペースでやっていきたいな〜と思っていた第11回から3ヶ月ほどあいだが空きましたが、それでもわたしはまた思っています。だいたい週1ペースでやっていきたいな〜
改めて、各句の作者のみなさんに、ありがとうございましたの11文字をお送りします。
ありがとうございました
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