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これも「読み」ですか? 9

現代川柳の「読み」文章シリーズ第9回です。
過去回は▼のマガジンにまとめてあります。

さて、今回取り上げる7句は、わたくしどもラジオポトフが初めてこしらえたネットプリント「ラジオポトフ2022」の収録句です。高澤聡美さんのぶちかまし35句、鳥原弓里江(ゆりえ)さんの生まれて初めて作った7句、今田健太郎さんの珠玉の14句などが読める楽しい紙です。

印刷期限は
セブン:2022/12/26(月曜)
その他:2022/12/27(火曜)
印刷料金は40円です。


【1】

明日のアイデンティティ茄子とす
/高澤聡美「茄子」
■勝手なことを言い出した。むろん川柳の限られた文字数ではどんな句も勝手にならざるえない。それでもやはりこの句こそを勝手だと感じるのは、あまりに無茶な内容と「なすとす」というすとんとした言い草の組み合わせのせいだ

【2】

胡瓜より茄子が早いと嘘ついて
/鳥原弓里江「茄子」
■嘘をつかれる側は彼岸の、つく側は此岸の住人と読んだ。嘘の素材として選べるのは双方からアクセスできるものに限られる。それが胡瓜である。そして茄子である。悪意であざむく嘘ではなく、じゃれあうような嘘。

【3】

ほらまた調子良いこと言ってる烏
/高澤聡美「茄子」
■ひとまず烏側のヒアリングも必要だと思った。句に描かれる世界が事実であるはずはなく、せいぜいがたんなる「見方」だとすれば、そこにはかならず主観の歪みが存在するだろう。そのことを恐れない句である。

【4】

茄子とともに去りな 仁王立ちの湖
/鳥原弓里江「茄子」
■当該?の映画は3時間だか4時間だかのすさまじい大作で、それをあっさり茄子にしてしまったのなら相当な胆力の持ち主だ。ただ立っているだけで仁王立ちに見えるだろう。

【5】

真夜中に茄子が爆発する季節
/今田健太郎「茄子」
■四季でいうとどの季節かな~、という方向性で考えていてはたどりつけない5つめの季節があるのかもしれない。春夏秋冬◯。さてなに? この大喜利はことのほかむずかしいです。

【6】

ベッドまでサーフィン真面目ですよねってか
/高澤聡美「他人」
■「ってか」「やらかいの」「ほらまた」作者が意識的に崩した表現や破調を採りがちなのはこのネットプリント全体を通じて言えることだが、では逆にきっちり定型におさめるときの心性は。おそらくそこに鍵がある。なんの。

【7】

シーサーのテーマパークにひとりきり
/今田健太郎

■2体セットが基本のシーサー。そのテーマパークでひとりぼっち。かりゆしウェアのキャストが髪にハイビスカスを挿してくれる。シークワーサーカクテルの氷がからんと音を立てる。がしゃん。それはシーサーが割れる音。

はいおわりで〜す。

ここで改めて「ラジオポトフ2022」の収録内容をおしらせします。

■川柳連作「茄子」(ひとり7句)
・高澤聡美
・鳥原弓里江
・今田健太郎
■川柳連作(それぞれ7句)
「ひとり旅」「他人」「ナイフ」「少女」
・高澤聡美
■川柳連作「小さいシーサー」(7句)
■茄子小説「すべる」
■一句を読む
《何笑ってんだかビーナスは二色刷り/小池正博》
・今田健太郎

というわけで、たっぷり大ボリュームの怪文書「ラジオポトフ2022」どうぞよろしく!


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