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どうも~、ラジオポトフの者(今田)です。ではさっそく、スープ句会の「選」を続けてまいります。なお、今回は全5段階のうち、その②にあたりますよ!

今後のスケジュールとしてはこんなかんじ。

① 入選句発表(2月1日夜)← 公開済み!
 ▲全入選句を作者名なしで発表します
高澤コメント公開(2月2日[金]朝)← 当記事!
 ▲高澤が書いた選評コメントを公開します
ラジオポトフPtf.408配信開始(2月2日[金]夜)
 ▲高澤による選評トークです
今田コメント公開(2月9日[金]朝)
 
▲今田が書いた選評コメントを公開予定です
⑤ ラジオポトフPtf.412公開(2月9日[金]夜)
 
▲今田による選評トークの予定です

さて、今回は「②高澤コメント公開」です。
高澤によるコメントがびっしり! 選句にあたっての心構えや選評コメントなどをぜひお楽しみください。

==▼=ここ=▼=から=▼=たか=▼=ざわ=▼==

選句のコメント(高澤)

投句してくださった皆様、本当にありがとうございました。
16名の方からいただいた48句の中から、4句選ばせていただきました。皆さんの「スープ句」はとても捨てがたく素敵な句ばかりで、これどうやって選べばいいのと迷子状態でした。まずは、私が「スープ」をどう捉えているか、そして私は誰であるかということをシンプルに考えてみることにしました。
「スープ」というお題にはスープにまつわる人間の様々な行動が含まれていると思います。
私は思考より行動のエネルギーが強い人間で(今田氏からは猪突猛進すぎると言われます。)、俳優をしています。俳優にとって演技をする上で重要なことは「伝えること」と「反応すること」です。俳優である私は、「句を通して行動が見えてくるか」、「考えさせられるよりも突き動かされるように反応したくなったか」という二つの視点で句を選びました。

痩せた身の重さ スープさえ泥の(南雲ゆゆ)

 とても惹かれました。「重さ」という言葉が持つ意味、量・大切さ・速度・・・、読み手がどれを選択して解釈するかを「痩せた身」と「スープさえ泥の」が知らせてくれそうな位置どりをしていますが、眺めても眺めてもわからない。じゃあなんで惹かれたんだろうと考えてみると、私がこの句を見た時に何か「ただ事じゃなさ」を感じたからだと思いました。
 最初に読んだ時は「痩せた身」の量、つまり何グラムかといったことで解釈しようとしたのだけど、や、待てよ、この「重さ」って「ことの重大さ」を示しているんじゃない?もう一度「痩せた身」と「スープさえ泥の」をくるりと見てみる。ぬかるんだ路上の水溜りと、過酷な生を強いられている「痩せた(人間の)身」を見てしまった。私がこの句を素通りできなかった理由は目の当たりにしてしまった絵面が持つ「ことの重大さ」に身動きが取れなくなったからでした。しかも「〜の」で止まっていて、終わりがない、私の服の裾を引っ張ってきて、くるくると何度も読まされてしまいます。

ぐつぐつと爪がペダルが放課後が(小山あすか)

 ぐつぐつ言っていると、焦る。コゲつきやしないか?吹きこぼれやしないか?ぐつぐつ音がもう聞こえているのに、私は鍋の様子を気にしながらゆっくり混ぜることしかできない、沸騰したらそれでOKじゃないんです。スープは。ちゃんと具材に火を通しきって、少し冷まして、味が落ち着くのを待って、カレー粉を溶かして(固形のカレールウはある程度刻んでから入れたほうが溶けやすくて良い)。そう、「ぐつぐつ」とはうまく付き合わねばならない。爪も、ペダルも、放課後も、ぐつぐつ音がもう聞こえている。時が来るのを待つべし。でも、待ってらんないんだよ、塗りたてのネイルが乾くのも下り坂で漕いじゃうペダルも、放課後の待ち合わせも、はやる気持ちを抑えるのは難しい。焦ると必ず何かドジをする。ご飯を炊くのを忘れていたり。いろんなものが私を焦らせにくる、日常はトラップだらけですね。そんな焦らせ代表の「ぐつぐつ」が、この句を気持ちの良いリズムとスピードで包んでいる。素敵なBGMヅラをしている。油断できない。

シェフによる 最後の一滴選手権(ときたま)

 現代川柳という創作行為の中に創作行為の厳しさと楽しさが含まれたクリエイティブクリエイティブな句だと思いました。
 「シェフによる」のあとの一字空けは2つの意味を示していると思います。ひとつはこの選手権に人生を懸けている多くのシェフ(たち)のプライド。たった一滴、それも「最後の一滴」へのこだわりはあらゆる仕事人が共通して持っている彼彼女らの矜持です。「最後の一滴」、最後の一秒、最後の一言、最後の一発、最後の一球。最後の最後まで、最後だから、全身全霊をかけて最高の終わりを創り出すという意味。もう一つは言い切り。一字空いたその隙間は「シェフによる」と言い切った後の間です。この句はシェフが最後の一滴を競う選手権という捉え方がストレートだと思いますが、この「選手権」において、何を優れているとするかは「シェフによる」=それぞれのシェフによって異なるとも捉えられます。そして私はその読みを選択しました。なぜなら「シェフによる」の後に一度切れているから。言い切りを意味しているから。
 最も優れた「最後の一滴」を判断するのはその創り手たちによって異なるという捉え方を選択してみると、単に人それぞれということではなく、「正解(判断)はまず初めに創り手自身にある」といった創作活動の厳しさと楽しさが見えてきて、私も頑張っていこうという気持ちにさせられます。

殺そうとスープを刺しているフォーク(太代祐一)

「を目撃したコーク」
 すみません、蛇足ですが、仲間に入れて欲しくてつい書いてしまいました。語呂がよくてかっこいい五七五だと思いました。
 スープを刺すとは、なんと無駄な行動であろうか。や、無駄じゃないのかもしれない、すでにスープは他のものに殺されていて、もう死んでいるのに刺し続けているのかもしれない、お前のことは私が殺るはずだったのに・・・せめて私にも刺させてください。だから刺す、飛び散る!顔、髪、服、テーブル、地面に、飛び散るスープ。そんなふうに想像を巡らせながら、句に描かれた現場を考えたとき、もしかしたら赤ちゃんなのかもしれないと思いました。赤ちゃんの、スプーン・フォーク食べの練習時期なのかもしれません。てことはやっぱり、無駄な行動ではないですね。複雑な愛の眼差しを感じます。そういえば、昨年、弟夫婦に子供が産まれたので、名前の刺繍を入れたスタイを贈りました。

==▲=ここ=▲=まで=▲=たか=▲=ざわ=▲==

今回の選は以上です。

繰り返します。今後のスケジュールは以下。

① 入選句発表(2月1日夜)← 公開済み!
 ▲全入選句を作者名なしで発表します
高澤コメント公開(2月2日[金]朝)← 当記事!
 ▲高澤が書いた選評コメントを公開します
ラジオポトフPtf.408配信開始(2月2日[金]夜)
 ▲高澤による選評トークです
今田コメント公開(2月9日[金]朝)
 
▲今田が書いた選評コメントを公開予定です
⑤ ラジオポトフPtf.412公開(2月9日[金]夜)
 
▲今田による選評トークの予定です

ご意見ご感想ご苦言など、どしどしお寄せくださいね!

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