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『女子大に散る』

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成熟まぎわの花々を活写しつつ条理なき「大学」を剔抉する連作短編集、各4000字程度・第一部として全10話。
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#学問への愛を語ろう

『女子大に散る』 第8話・パパを探して

 しばらく図書館をうろうろしてから帰路についた。停留所に大学始発バスが待っていた。午後6時を回ってガラガラで、おそらく最終便だろう。これぞ渡りに船と朝タクシーで来たことも忘れて飛び乗ったら、 「あ~せんせ~」  二年生のOさんが降車口そば二人席の先頭をニヤニヤ占めていた。毎度のように三限で一戦まじえてきたところだ。 ──次、Oさん。 ──えっとお、…… ──ん? もっかい。 ──だからあ、…… ──やべえ全然聞こえねえ…… ──エッへせんせおじいちゃん~。 ──最近なん

『女子大に散る』 第6話・えくぼの悪魔

 なんだか気だるくて早めに四限を終えた。ごった煮でよくわからない残り香ただよう教室で、消灯して、窓辺の空調棚に腰掛けてボーッとしていた。  五限始まりのチャイムが鳴った。午後4時半前、同じ階にわりあてられている授業はない。ようやく止んだ梅雨の雲居を静かに青が裂いてくる── 「わっ」  あけっぱなしの前扉から花車がひょっこり、 「びっくりしたあ」 「アハハしなないで」  三年生のSさんだ。相変わらず黒と白を基調に赤の点景をちりばめたゴシック風の粧いが板についている。