【童話訳】 絵のない絵本・第19夜 (1837)
巨匠アンデルセンが月に託して語る
「芸術は長く人生は短し」の寓話
第十九夜
今宵も月が語ります。
「ある夜、ぼくの下には劇場があった。大きな立派なところさ。新人俳優の初舞台だからって溢れんばかりの入りだった。
楽屋の窓に、その俳優がいた。ふさふさのヒゲを生やした騎士の恰好で、ガラスに張り付くようにぼくを見上げて、涙を流している。
第一幕で、観客たちにさんざ笑われ冷やかされ扱き下ろされたんだ。
かわいそうなやつ! 彼の方は心から芸術を愛しているのに、芸術の方は見向き