【短編訳】 老人とフープ (1909)
帝政ロシア象徴派の作家フョードル・ソログープの描いた老残と哀愁。
I
母親が、4才になる息子を連れて朝の田園を散歩している。みずみずしい頬を輝かせて、落ち着いた愛情ゆたかな微笑を浮かべ、子を見守っている。
子はフープと戯れている。大きな新品の黄色いフープだ。投げては追いかけ、膝をむき出した丸々しい脚でとことこ走り、けたけた笑っている。棒きれを振りながら、そんなにうまく回せなくても笑っている。
初めてのフープだった。まだまだ走るのに慣れておらずとも夢中になれるほど