怖いのは死じゃない、見捨てられること(私の知らないわたしの素顔)
「私の知らないわたしの素顔」を観たのでレビューします。
【作品情報】
監督:サフィ・ネブー
出演:ジュリエット・ビノシュ
【おすすめ度】
★★★★★★★☆☆☆(7 / 10)
【あらすじ】
50代ながら美しい容貌を持つ大学教授のクレールは、ある日年下の恋人にフラれたことをきっかけに、自身の年齢を24歳と偽ってSNSを始める。彼女はSNS上で純朴なとある若者と交流し、互いの仲を深めていく。だが現実で彼と会うことができないため、2人の間で次第に齟齬が生じ始める。どう転んでもうまくいかないクレールの恋は、予想外の結末を迎えるのであった。
【感想】
若い子になりすましてSNSを始めた主人公クレールが、年下の恋人を作ってしまい、徐々に破滅へ追い込まれる物語です。いい歳した大人が年齢を偽ってキャッキャウフフしている様が痛すぎて、最初は観ているのが苦痛で仕方がありませんでした。現実的に考えて、こんな人がいたら相当気持ちが悪いと思います。現実的に考えて、こんな人はいるのでしょうが・・・
中盤までは恋に溺れるクレールの熱い気持ちや、気持ちの悪さを延々見せつけられるだけなので、面白くもなんともないのです。が、中盤以降はサスペンス味が一気に増し、展開も二転三転するので面白くなります。
クレールが現在のようになってしまった理由が、単なる承認欲求のためだけではなかったことに、同情を感じずにはいられません。とっくの昔に壊れていたんですね・・・
ラストでとった行動は、自分を廃人に追い込んだ人間と同じ行動を、これから始めようとしている可能性を考えると・・・狂気的としか言いようがありません。恋愛サスペンスとも言うべき、よく捻られた脚本が秀逸な映画でした。
【セリフ抜粋】
「怖いのは死じゃない、見捨てられること」
クレールがカウンセラーに本心を打ち明けるシーンにて。底知れない病みの闇深さを表すセリフ。