シンデレラの『ガラスの靴』魔法はなぜ解けなかった?
「いけない!もう12時だわ!」
ガラスの靴を片方落とし、走り去るシンデレラ。
十二時の鐘が鳴ると、馬車はカボチャへ、白馬はネズミへ、ドレスは粗末な服へと戻ってしまいます。
そしてガラスの靴はと言うと……あれ? 戻っていません。
王子さまは言います。
「国におふれを出し、このガラスの靴がぴったり合う女性を妃にする」
12時どころか何日たっても、ガラスの靴はガラスの靴のままです。一体なぜでしょう。
今回はそんなガラスの靴の謎について解明していきたいと思います。何卒、最後までお付き合いくださいませ。
そもそも魔法の種類が違う
妖精(魔法使い、仙女とも呼ばれる)がシンデレラに馬車やドレスを授けるシーンについて、フランス語原文「ペロー童話集」の和訳には、下記のように表現されています。(出典:福娘童話集 きょうの世界昔話)
『妖精はそのカボチャを魔法のつえで叩きました。するとそのカボチャがどんどん大きくなり、何と黄金の馬車(ばしゃ)になったではありませんか。』
『ハツカネズミはみるみるうちに、立派な白馬になりました。』
『妖精が魔法のつえで灰色のネズミをさわると、今度は立派なおひげをした太っちょ御者に早変わりです。』
『シンデレラが集めたトカゲは、魔法のつえでお供の人になりました。』
『妖精が魔法のつえを一振りすると、みすぼらしい服は、たちまち輝く様な純白の美しいドレスに変わりました。』
ここまでは全て、同じ魔法を使っていますね。カボチャを馬車に、ハツカネズミを白馬に……という風にモノを別のモノへ変えてしまう、変化(へんげ)の魔法です。
では問題のガラスの靴についてはどうでしょう。
『そして妖精は、小さくて素敵なガラスのクツもくれました。』
これに関しては「くれました」なのです。
そう。ガラスの靴を提供するにあたり、何かを変化させているわけではないのです。妖精は、靴を履いていないシンデレラの足に対して、魔法でゼロから創り上げたガラスの靴を履かせたことになっているようです。
つまり、これは言うなれば創造の魔法です。
フランス語の原文では、馬車やドレスなどにおける変化の魔法については「être changê(変わる)」の動詞を使っていますが、靴に関しては「donna(与える)」と表現しています。
このことから、靴に関してはそもそも、他とは使っている魔法の種類が違うと言えます。
なぜ違うのか?
創造魔法でゼロから創ったものは時間の制約を受けないと分かっているのならば、全てのアイテムについてそうすれば良い話ですよね。
妖精がそうしなかった理由について、私は二つの理由を考えました。
1.魔力が足りなかった
シンプルに魔力が足りなかったのではないでしょうか。RPGをプレイする人なら分かると思いますが、魔法を使う時には基本的に、MPやマナと呼ばれる、所謂魔力を消費するものです。
元々そこにあるものに手を加える変化の魔法より、存在しないものをゼロから生み出す方が大変そうですよね。きっと、全てのアイテムをゼロから創造できるような魔力は持ち合わせていなかったのではないでしょうか。
2.靴を落とすことを予見していた
妖精、魔法使い、仙女などと呼ばれる彼女のことです。シンデレラを舞踏会に行かせた時点で、それがハッピーエンドへの扉であるということを、ある程度予知していてもおかしくはありませんよね。
靴については最初から、階段で落とし、王子様に拾ってもらう目的で創造していたとしたら面白いですよね。
まとめ
ガラスの靴は、他のアイテムとは根本的に出来方が違うということが分かっていただけたでしょうか。
ここまで調べてみて思ったのは、やはり童話や昔話というものは、国境や世代を超えて伝播していくうちに変化していくのだなということです。
原文では過激だった表現がだんだんと改変されて民間に馴染む例も多くあるので、これはある種の適応と呼べるかもしれませんね。
「あなたは何と美しい。僕と一緒に踊りませんか?」
「お待ちください! せめてお名前だけでも!」
王子様にそんな言葉をかけられてみたいあなたからのハート、コメント、フォローお待ちしてます!
以上ラケットでした!
参考文献
・BiBi シンデレラのガラスの靴だけ残った理由は?魔法が解けない謎を考察 https://bibi-star.jp/posts/3309
・福娘童話集 http://www.hukumusume.com/douwa/pc/world/03/31.htm
・フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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