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政治家レイシズムデータベース2022年12月

 反レイシズム情報センター(ARIC)です。
 
 ARICでは、政治家はじめ公人によるヘイトスピーチやレイシズムの記録を行い、データベース化しています。

 このnoteでの「政治家レイシズムデータベース」では、毎月追加したデータの中から、特に深刻なケースをこのnote記事上でピックアップしていきます。

 今月も追加した差別事例から一部を紹介したいと思います。

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 今月追加した記録においても、やはり「外国人生活保護」バッシングが多く見られた。その中には行政による差別を追認したものも含まれており、今回はそれを追認した投稿について取り上げる。

愛知県安城市役所による差別の追認

 今回取り上げるのは、元衆議院議員(元参議院議員)の桜内文城による「外国人生活保護」バッシングだ。この桜内文城は以前、「慰安婦」が「性奴隷」であることを示した歴史研究者の吉見義明氏の研究書を捏造だと主張したことで吉見氏と名誉毀損を焦点に裁判を争っていた人物である(判決は吉見氏の敗訴に終わった*1)。

 その桜内氏は、日系ブラジル人に対する生活保護支給を拒否するために「外国人に生活保護費は出ない」と説明していたことが発覚した事件について下記のように言及していた。

毎日新聞のフェイクニュース。最高裁判例(2014/7/18)において「生活保護法が永住外国人に適用されると理解すべき根拠が見当たらない」と判示されている。当事者には気の毒だが、悪質な印象操作。

Twitter、2022/12/23
https://twitter.com/fsakura/status/1606215999283294208

 元の記事はこちら。日系ブラジル人の生活保護申請希望者に対して市役所の職員が虚偽を説明を行い、さらには「国に帰ればいい」といったヘイトスピーチも行っていたことが今月発覚した。

 桜内氏は2014年の最高裁判決を根拠とし、毎日新聞の報道を「悪質な印相操作」と断じている。しかしながら外国籍者への生活保護が出ないというのは事実レベルで異なるだけでなく、言及されている当該の判決においても追認されていないデタラメだ。「外国人」に生活保護法が適用されないとしても(これ自体差別であるが)、それは支給の否定を意味しない。

 2014年の最高裁判決を「根拠」とした「外国人生活保護」否定論は使い古されたデマであり、上記事によれば厚生労働省も事実上これを正している。依然として同じデマを活用した「外国人」に対するレイシズムが煽動されているのだ。

 またそもそも元となった市職員による言動自体が公務員による人種差別であることにも注目する必要がある。日本も締結している人種差別撤廃条約の第4条(c)項では、「国又は地方の公の当局又は機関が人種差別を助長し又は扇動することを認めないこと」を締約国に求めている*2。つまり安城市における事例は人種差別撤廃条約の趣旨に反するのだ。公の機関による人種差別を正当化している(しかも明らかなミスリードを利用して)点が桜内氏の投稿における重大な問題だ。

 愛知において職員が虚偽の説明を行なって生活保護受給を阻止しようとしたことは、影響力のある人物がデマを利用し、普及してしまっていることと無関係ではないだろう(バズフィードの記事がファクトチェック記事を掲載していることは、その広まりを示しているといえる)。顕在化した今回の事例は氷山の一角であり、同様の被害があるか調査することが求められる。


*1 吉見氏が敗訴した根拠は、桜内氏の主張が「論評」の域を出ないとしたため。
https://www.bengo4.com/c_23/n_4192/

2* https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinshu/conv_j.html

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*新聞・雑誌記事、動画、書籍等でレイシズムの疑いがある公人による発言を見かけた場合は、ARICのHPから通報フォームにてご連絡ください。Twitterで「#政治家レイシズム」のハッシュタグをつけてリツイートしてくださっても結構です。

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