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世界を良くしたければ種をまきなさい

私が実家に戻って家庭菜園を始めたのは岡本よりたかさんの「自然農」の思想に影響を受けています。

命を循環させる力

とはいえ、ちゃんと著書を読んだわけではなく、主にSNSでの発信からですが、それらによると東京でメディアの仕事をしていた岡本さんは、ある時から今の消費経済をベースにした社会のあり方に対する疑問と限界を感じ、農作物のオーガニック栽培を手がけるようになったそうです。

もちろんすぐにうまくいくわけもなく、試行錯誤と紆余曲折を経て、植物が本来持っている命を循環させる力を活かす形の今の農法に至ったとか。

岡本さんの言葉の中でとても印象的だったのは「世の中を少しでも良く変えたいと思うなら、プランターひとつでもいいから、まず自分で食べるものを自分の手で育ててみてください」というようなことでした。

そうすれば少しずつ自分の食べるものに関心が向き、それがどこから来ていて何からできているのかを考えるようになる。

そして、その現状を変えようとすることが社会運動の一環にもなるというような意味だと私は思いました。

強く共感したものの、当時の私は狭い賃貸住宅に住んでいたので、何かを植えるということができず、スーパーで買ってきた豆苗の根元を残して、それを水耕栽培する、ということから始めたのを覚えています。

はじめての家庭菜園

その後、マレーシアへの短期移住を経て、神奈川県中西部にある実家に住むようになり、父が残したのべ2坪ほどの家庭菜園を使って、この半年、野菜の無農薬栽培を試みてみました。

肥料は、同じように家庭菜園をやってる友人にもらった牛糞と、土中の善玉菌を育てる「マコモ」を入れた水。ただし、庭木の手入れを頼んだシルバー人材センターの方が知らない間に化学肥料を追肥してくれました。知った時はショックでしたが、善意であるだけでなく、この方はプロの農家だったので、何も言えませんでした。

亡父は、家庭菜園でもラウンドアップなどを撒いていた一方で、自分なりに勉強して、元々は畑に向かない粘土質の土地だった庭の土を改良してくれたようで、初めてにしては自分なりに満足のいく結果が得られたと思います。

苗から植えたのは、サニーレタス、ミニトマト、トマト、なす、ピーマン、かぼちゃ、とうもろこし、にら、落花生、バジル、ゴーヤ、びわ、ブルーベリーと雑多ですが、このなかのいくつかはテキストにあった組み合わせです。特に落花生は土を育てる役割があり、バジルは防虫などのコンパニオンプランツの役割を果たしているはずでした。

あと、途中で台所で芽を出してしまった里芋とさつま芋と小分けネギの根元も植えてみました。それからどこかからシソの種が飛んできて、それも育ちました。

栽培開始は4月中旬から6月くらいまで、収穫は5月中旬から現在(11月初旬)にかけて行いました。食卓に上がったのは、サニーレタス、ミニトマト、トマト、なす、ピーマン、にら、しそ、バジル、ゴーヤ、里芋です。

途中、ドクダミを摘んでお茶や化粧水、虫除けスプレーなどを作ることにもハマりました。

サニーレタスは7月いっぱいくらいまで毎日食べられました。食べる直前に庭に降りてむしった葉をトーストに添えて食べたりしましたが、スーパーで買ったものとは比べ物にならない、甘さを感じる味でした。

ミニトマトは一番よく育ちましたし、たくさん実も取れました。下枝を切ったらそれを水につけて根が出たものを土に植えると苗になると、YouTubeで教わったので、実行したらその通りになったので、近所の方におすそ分けしたり、新たに育てたりしました。

件のYouTuberの方は元海外青年協力隊で、南米にいた時に貧しくて種が買えない現地の人にこの方法を教えてあげたそうです。

なす、ピーマンも家族で消費するすべてを家庭菜園でまかなえたわけではありませんが、まぁまぁ取れました。

バジル、シソも虫にも食われたけど、よく育ちました。シソの実は塩漬けに、バジルはオリーブオイル漬けにしました(シソの葉も)。

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里芋の根(実)は煮物にして食べ、茎はずいきにするために乾燥中です。さつま芋は細くて小さく、食用にはできませんでしたが、ツルが伸びて葉がよく茂りました。調べてみたら、さつま芋の葉や茎は食べられるとのことだったので、まずは葉っぱを摘んで味噌汁に入れてみました。普通に美味しかったです。

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一方、実にならなかったのは、かぼちゃ、とうもろこし、落花生です。かぼちゃととうもろこしは自家受粉をしないと実がつかないそうなので、次回もし植えたら今度は頑張ります。

感動の自家採種

そして、この中で種が採れたのは、ゴーヤとニラです。自然農は「種を取るまでが一つのサイクル」だと教わったので、とても嬉しかったです。今思えば、なす、ピーマン、トマトも頑張って種取りすればよかった。

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私が自家採種にこだわったのは、この自宅の庭の片隅で続けてきたささやかな営みが、お金が価値を持ちすぎている今の社会に対抗するひとつのデモンストレーションの形でもあるからです。

今、世界では種や苗が利権の対象となり、農家はそれらを企業から農薬や肥料と一緒に買わされ、企業の言いなりに作物を作らされる、時には設備や機械のために借金を追うことになり、破産したり土地を追われるというようなことが起きています。

こうしたことは日本でも対岸の火事ではなく、豊かな土地や水に恵まれているのに食料自給率が50%以下で年々下がり続けているという状況は、こうした一連の流れと無関係ではありません。

さらに今、「種苗法」が改定されようとしていることは、その動きを加速させるだろうとして農業関係者の間では危惧されています。

「世界を良くしたいなら、種をまいて、自分の食べるものを育てなさい」

そう言われてはじめた試みでしたが、この半年間の私のなんちゃって自然農が世の中を良くしたかどうかわかりません。しかし、私自身にとってはとても良い体験でした。

何か特別なことをしなくても、私が特別な存在でなくても、土は、自然は、私たちに恵みを与えてくれるということが身をもってわかったからです。

「環境保全」が大切なのは、私たちは、自然からいただいたものをなるべく自然な形で返していくことで、この循環を守らなければいけないからです。

ポンコツなくせに頭でっかちな私は、このシンプルな原則を育てた野菜たちから学んだ気がします。

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