創作(2)「サギの池」

サギの池

草木の眠る丑三つ時、雲一つない闇の中、そこには大きな月の花。
街灯一つ無い畦道に迷い込むは、齢十九の女子なり。

衣無ければ食も無し。宿も無ければ身寄りも無し。何処へ向かうその足取りは、朧気ながら確志あり。

そこへ現る悪党二人。一人は腰に刀掛け、顔を覆いて眉は無し。もう一方はスラリと高く、月夜に照らされ何とも華麗。闇夜に紛れて狼藉働く、愚物の極みの男を前に、かの姫君は薄笑み浮かべて、なおもフラフラ進み行く。

男の一人が女子の肩に、片手をかけたその途端、辺りを白い羽毛に囲まれ、気づくと二人は見知らぬ土地に。来ていた身ぐるみ一つも残らず、ただ残れるは唖然顔。
かの姫君は大満足の表情浮かべて、池に踏み入り姿消す....

以上は昔々の話。ある古池に噂あり。神の住まいと人は言う、されどそれさえ彼女の仕業。人を化かして悠々自適に生きている、そこには一羽の「サギ」が居る。

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