SS-2020-05-05

らびびの場合:素足で芝生を走りながらホースで水をかけ合って、愛しそうにおでこを寄せ合いました。

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「あついねー」

彼女はクーラーの効いた部屋で言う。実際まだ5月頃だと言うのに、うだるような暑さに俺らはぐったりとしていた。所謂夏バテだろう、流石に温度差がひどかったと振り返る。

「あついな」
「何もする気が無くなるー」

ぐでーっと溶けたスライムのように机に突っ伏す彼女。それを見て少し笑ってしまった。

「もー、なんで笑ってるの?」
「いや、なんかスライムみたいで可愛いなって思って」
「むう・・・あ」
「ん」
「ビニールのプール、なかったっけ」
「あー」

そう言えば押入れにあった気がする。彼女と暮らし始めた時に調子乗って買ったんだっけ。でもその年はあんまり暑くなくて、結局使われずにしまっていたはずだ。

「あれ使わない?どうせだしさ」
「いいよ?あーでも取り出すのめんどくさいなあ、暑いし」
「そこは頑張ってよぉ」
「じゃあ後で・・・あ」
「ん?」
「どうせだしさ、涼しい感じの服着て水かけあいでもするか」
「プールのついで?」
「うん」
「いいかも」

彼女も乗り気になったのか、一緒に押し入れからプールを引っ張り出してきて膨らませた。ただ、プールを膨らましきった時には二人共汗をかいていた。

「もういっか、このまんま遊ぼ?」
「そうだな、ってことでほら!」

俺はバケツにためておいた水を彼女にかける。そこまで量は多くないから、軽く濡れた程度だ。対して彼女は、

「ちょ、ホースはずるいって待て」
「やーだー!お返しだー!」
「ちょ、わぷ、あっこら!」
「あはは!びしょ濡れで髪がぺちゃんこだー!」
「この、やったな待てこら!」
「待たないもん!」

少しだけ広い庭を俺と彼女は走り回る。彼女はホースを持って、俺はバケツを持って。きゃーとか、わははとか色んな笑い声が響く。いい年した大人のはずの俺らは子供のようにはしゃぎまわった。

そうして一通りはしゃぎまわった後、ビニールプールに二人して沈んだ。さっきまでの暑さはとうにどこかへ行って、笑いながら思い出を語り合い始めた。

「ねえ、あの時さ」
「ん」
「ほら、屋上で一緒にご飯食べてた時あったじゃん」
「ああ、いつの話だよそれ」
「相当前だよ?」
「だよな」
「うん。で、あの時君は言ったじゃん」
「なんて?」
「いつか砂浜できゃっきゃうふふみたいな、追いかけっこみたいな事したいなって」
「マジで?そんな事言ってたっけ俺」
「言ってたよぉ」
「全然記憶にねえや」
「もう!・・・でも」
「ん」
「こうやって遊ぶのも、楽しいよね」
「ああ」
「ありがと」
「・・・何に対してかはわからんが、どういたしまして」
「こうやって君と居られることに感謝してるんだよ、私は」
「っは、それは俺もだわ」
「おそろいだね」
「おそろいだな」
「これからもお揃いの時を過ごしたいね」
「過ごすさ。俺から離れることはないよ」
「私だってそうだよ」

そう言いながら互いにおでこを寄せ合って、笑いあった。