クレメンス・J・ゼッツ著『インディゴ』【考察・解説】

 クレメンス・J・ゼッツの『インディゴ』を読みました。
 非常に面白かったです。
 作品はおおむね『ロリータ』(信頼できない語り手による犯罪小説)と『青白い炎』(解決編のない推理小説)と『ベンドシニスター』(フィクションについてのフィクション)を足して3で割ったようなものでした。
 こうした知的でスリリングな本の最初期の読者となれることを、嬉しく思います。
 残念なことといえば、みずから調査研究する労をとらなければ、作品の仕掛けが分からないことくらいです。
 仕方ないので、『ロリータ』の時系列の整合や、『青白い炎』の事実関係の整理、『ベンドシニスター』の象徴・記号の照合のようなことを、自分でやりました。

 なお、先行研究としてこちらのブログ記事(https://matsukiyota.hatenablog.com/entry/2021/06/12/021532)を参考にさせていただきました。この場を借りてお礼申しあげます。

○時系列

・1982年11月5日:クレメンス・J・ゼッツ誕生。
・?:ゼッツが「白い外階段」の幻覚。
・1988:マグダ・T誕生。
・1992年:ロベルト・テッツェル誕生。
・1993年:トミー・グレンジャー誕生。
・?:マグダ・Tがリロケーション。
・2003年:インディゴ症候群が社会問題化。
・2004年:『距離の本質』刊行。
・2005年:トンネル・プロジェクト中止。
・同年:ゼッツが学位取得。
・2006年:ロベルト14歳。
・同年:マックスがリロケーション。
・同年:ゼッツがヘリアナウ学園に半年間勤務。
・同年:ゼッツが頬に丸印の運転手と会う。
・同年?:マックスのリロケーションがきっかけで、ゴルヒがロベルトを殴る。
:ゼッツがゴルヒとロベルトを仲裁。
:ルドルフがロベルトを「電話ボックス」に行かせる。ゼッツを帯同させる。
:ゼッツがルドルフとフェレンツが電話で話しているところを立ち聞き。気絶を装う。
:ゼッツが保健室で手当てを受けるふりをする。
:ルドルフがゼッツを解雇。
・同年:(退職後1-2ヶ月)ゼッツがホイズラー=ツィンブレットに取材。
・同年:ゼッツがラーバでテッツェル家を取材。
・同年10月16日:グラーツ医科大学でゼッツ診察。
・同年11月1日:マリアンネがゼッツに手紙。
・?:ゼッツがギリンゲンでシュテニッツァー母子を取材。
・2007年:ゼッツ25歳。
・同年:『ナショナルジオグラフィック』2月号にゼッツの記事掲載。
・同年:ゼッツがブリュッセルでバウマンに取材。
・同年:ゼッツがウィーンでフェレンツに取材。
・?:クリストフ・シュテニッツァー死亡。ゼッツ弔問。
・?:ゼッツが「取引」。緑のファイルを受けとる。
・?:ゼッツが数年間、エヴァーゼー中等学校勤務。
・2008年:ゼッツ、インディゴ症候群の後遺症発症。
・2018年:ロベルトとコルドゥラが同棲開始。
・2021年:ロベルト29歳。
・同年:ゼッツ39歳。
・同年:ゼッツ釈放。
・同年:フェレンツがロベルトに接触。
・同年秋:ロベルトがグラーツでゼッツを訪ねる。

○本編で解決された疑問

Q. リロケーションとは?
A. 弱体化させるべき社会への転移。

Q. フィレンツとは?
A. リロケーションの実行者。フィレンツは役職名のようなもの。

○本編で解決されなかった疑問

Q. ロベルトの父親はなぜ軟禁されていたのか?
A. 「ホレリース療法」を受けさせられていた。発汗療法があまり重要でないのと同じく、やはり重要でない。

○いったい本編で何が起こっていたのか

Q. ゼッツとロベルトの視点の輻輳、また、緑のファイルとゼッツの視点の輻輳はどういう関係になっているのか。
A. ゼッツの「取引」が現実世界で作家になること、すなわち、現実世界にリロケーションすること、それ以降のゼッツが偽物であることは確実だろう。
 ここで、可能世界論における固有名詞が、可能世界の別を問わないことを想起してもいいだろう。
 そして、リロケーションは弱体化すべき社会を目標とするものだ。つまり、フィレンツの目的のひとつは現実世界を弱体化することだった。
 ただし、それ以前のゼッツも緑のファイルの影響を受けている。以下の包含関係(S,S'∋G,G'∋S,S’)を参照せよ。また、ロベルトとゼッツも相互影響的だ。ゼッツと緑のファイルのパラドキシカルな構造が、現実世界と相互侵食的なものであるために、単純なメタ=フィクションに留まらない恐怖感を演出している。

・1982年11月5日:クレメンス・J・ゼッツ誕生。
{S|?:ゼッツが「白い外階段」の幻覚。}G∋S
・1988:マグダ・T誕生。
・1992年:ロベルト・テッツェル誕生。
・1993年:トミー・グレンジャー誕生。
{G|?:マグダ・Tがリロケーション。}
・2003年:インディゴ症候群が社会問題化。
・2004年:『距離の本質』刊行。
・2005年:トンネル・プロジェクト中止。
・同年:ゼッツが学位取得。
・2006年:ロベルト14歳。
・同年:マックスがリロケーション。
・同年:ゼッツがヘリアナウ学園に半年間勤務。
{S|同年:ゼッツが頬に丸印の運転手と会う。}G∋S
・同年?:マックスのリロケーションがきっかけで、ゴルヒがロベルトを殴る。
:ゼッツがゴルヒとロベルトを仲裁。
:ルドルフがロベルトを「電話ボックス」に行かせる。ゼッツを帯同させる。
:ゼッツがルドルフとフェレンツが電話で話しているところを立ち聞き。気絶を装う。
:ゼッツが保健室で手当てを受けるふりをする。
:ルドルフがゼッツを解雇。
・同年:(退職後1-2ヶ月)ゼッツがホイズラー=ツィンブレットに取材。
・同年:ゼッツがラーバでテッツェル家を取材。
・同年10月16日:グラーツ医科大学でゼッツ診察。
・同年11月1日:マリアンネがゼッツに手紙。
・?:ゼッツがギリンゲンでシュテニッツァー母子を取材。
・2007年:ゼッツ25歳。
・同年:『ナショナルジオグラフィック』2月号にゼッツの記事掲載。
{G’|同年:ゼッツがブリュッセルでバウマンに取材。}
{G’|同年:ゼッツがウィーンでフェレンツに取材。}
・?:クリストフ・シュテニッツァー死亡。ゼッツ弔問。
{S’|?:ゼッツが「取引」。緑のファイルを受けとる。}S’∋G,G’
・?:ゼッツが数年間、エヴァーゼー中等学校勤務。
・2008年:ゼッツ、インディゴ症候群の後遺症発症。
・2018年:ロベルトとコルドゥラが同棲開始。
・2021年:ロベルト29歳。
・同年:ゼッツ39歳。
・同年:ゼッツ釈放。
・2021年:フェレンツがロベルトに接触。
・同年秋:ロベルトがグラーツでゼッツを訪ねる。

○本編のメモ

・日本語版序文
・2020年9月、ウィーン記。
・バカンティ・マウスの墓の夢を見たときに着想。
・・動物虐待について取材。
・・オーストリア、ニーダーエスターライヒ州の類人猿の「老人ホーム」の逸話。
・『インディゴ』を読み、実話だと思った母親の逸話。

・作品紹介
・作者紹介:クレメンス・J・ゼッツ。1982年、オーストリア、グラーツ市生まれ。ヘリアナウ近接度意識学習センター(プロクシミティ・アウェアネス&ラーニング・センター)勤務。2008年からインディゴ症候群の後遺症。現在、グラーツ近郊で隠棲。

・巻頭文
"その土地は平らで、ぐるりと地平線まで見えるほどだった。そして地平線はちょうどひざの高さで、ときには腰の高さにまで迫ってきた。"(マグダ・T)
"いつか人は、どんなものにも抗いながら慣れるものだ。"(オットー・ルドルフ博士)
"むいてもむいても出てこない、犯罪のアーティチョークの核心へとようやく近づいてきたようだぞ。"(バットマン役のアダム・ウェスト)

・ゼッツ宛て、マリアンネ・テッツェルの手紙。2006年11月1日、グラーツ近郊ラーバ。
・ゼッツが気絶した件についての詫び。(1)
・ロベルトは来年は学園には戻らないだろう。
・マリアンネの父はインディゴ症候群を信じていない。(2)
・マリアンネはインディゴ症候群による転倒で左目を失明。

・グラーツ医科大学州立附属病院外傷外科、事故報告書
・クレメンス・ヨハン・ゼッツ。1982年11月15日生まれ。
・2006年10月16日作成。
・医学博士ウールハイム。(1')

○第一部

・巻頭文
"野原の中で 僕のぶんだけ 野原が欠けている。"(マーク・ストランド)

1 距離の本質
・挿話:スカパ・フローの自沈艦。
・モニカ・ホイズラー=ツィンブレット『距離の本質』、2004年刊。
・2006年。ヘリアナウ学園での半年間の実習中退後。
・ゼッツは1、2ヶ月前から知覚過敏。
・女性の心理学者・教育学者は複合姓をよく使う。
・リロケーションについて質問するために訪問。(後出)
・前日、自転車が解体され、五点形(クインカンクス)に配置。(3)
・ホイズラー=ツィンブレットによれば、ルドルフは沐浴。(4)
・・椅子取りゲーム(エルサレムへのたび)。
・・フェアエンド。
・メモがブロック体。論理記号。
・動物虐待への不安神経症。

・『トミー』
・トミー・ベリンジャー、1993年2月28日、ミネソタ州ロチェスター生まれ。
・父ジュリアン・ストーク、母ロベルタ・ベリンジャー。
・1999年、一家はカナダへ移住。2002年離婚。ジュリアンはロチェスターに戻る。ロベルタは3人の子供とカナダに永住。トミーは消息不明。
・リサレクション・オヴ・ローラ・パーマーがトミーにインスパイアされ、セカンド・アルバム『ベンジャミン・ツリー』を制作。

2 ロベルト・テッツェル(29)、燃え尽きずみ(バーンアウト)
・ボブ・ロスの絵画教室。
・アダム・ウェスト。
・「昨日のパレード」。(5)
・・小さなラッパを数百人が鳴らす。参加者の表情(?)。(5)
・ロベルトは強迫神経症。
・iSocket。
・バカンティマウス。
・"生きものに名前をつけるのはいつだって大切なんだ。彼らはぼくたちの友人だからね"。(後出)
・マーメット。
・ラーブル母子の逸話。
・インディゴ遅滞(ディレイ)。

3 メスマー研究
・2003年初頭、インディゴ症候群が社会問題化。
・トンネルプロジェクト=リーゲルスドルフの学校プロジェクト。2005年末、不審な計画中止。(後出)
・マックス・シャウフラーがリロケーション。煙突掃除夫の仮装。(6)
・グズルーン・シュテニッツァー、息子・クリストフ。8910、ギリンゲン市グロッケンホフ道1番地。ホイズラー=ツィンブレットが治療。
・フェレンツ(Ferenc)。(後出)
・・ゲーム。椅子取りゲーム(エルサレムへのたび)のような。

・『二つの真理』
・赤いチェックのファイル。(8)
・挿話(『距離の本質』):「南到達不能極」のレーニン像。
・2、3週間前、ヘリアナウ学園の校長室の開いたドアの前で倒れる。保健室で手当て。(9)

4 あの頃、ロビンは
・iBall。
・コルドゥラがパニック症候群。
・・『鉄男』。
・グラーツ大学病院精神科診療病棟。
・"ただ服を取りにいくだけだよ"。(10)
・"路面電車がメランガッセ駅に停車したとき、視線が偶然、洋菓子店の看板にとまった。路面電車がまた動き始めたとき、心配もそこに引っかかって、ロベルトから離れ、引きちぎれていったことに気づいた。"(11)
・ヘリアナウのリヒテンベルクハウス。(12)
・マックスは2006年に煙突掃除夫の仮装でリロケーション。(6)
・挿話:数字を飼うロベルトの叔父ヨハン。(7)
・挿話:デイヴィッド・パールマンの家を呑む木の写真。
・ヘリアナウの中庭の発汗浴。(4)

・2021年、晩夏。

・[赤いチェックのファイル]ボンドルフの仕立婦
・ヘーベル『ドイツ炉辺ばなし集』。

5 イン・ザ・ゾーンーエピソード1

・『ギリンゲンのペンション・タハラー』
・イェリネク『死者の子供たち』。
・ダルマ自転車。
・ペンション・タハラーの隣の料理屋・エルンストル。
・バイエルン放送「スペース・ナイト」。
・・「N24ドキュメンタリー」。
・ディック『ユービック』。
・『マトリックス』。
・ズヴィルッパール。(13)
・APUIPのバウムヘル。(14)
・挿話:ウィーンで5歳の少女が餓死。
・シカゴのディミートリアス・ローガン。
・シュテニッツァーは「フェアエンド」希望。
・"ちょっとタバコを買ってくる"。(10)
・トンネル都市のリーゲルスドルフのキリン学校計画。
・挿話:トゥーレット症候群の夫婦。
・挿話:ザプルーダー・フィルム。

6 タバコを買いに
・ロベルトとコルドゥラは3年前(2018年(?))から同棲。
・ゾルピデム、レキソタン、ザノール。
・ロベルト、ギリンゲンへ旅行希望。
・"ちょっとタバコを買ってくる"。(10)

・[赤いチェックのファイル]隣人の憂鬱症
・バートン『憂鬱症の解剖1』。

7 イン・ザ・ゾーンーエピソード2
・『ナショナルジオグラフィック』(ドイツ語版)2007年2月号。

・『頭』
・モアイ像の仮面。
・「燃え尽きた(バーンアウト)」。ケン・S、20歳。
・ヘリアナウ所在地はオーストリア、ゼメリング峠。
・ミロスラフ・ホルブ。
・ジェイムズ・メリル。
・挿話:ド・グランプレ氏とル・ピック氏の決闘。
・挿話:登山家デイヴィッド・シャープの死。

・『若者たちへのインタビュー』
・iPod。
・セロニアス・モンク「モンクス・ムード」。
・MP3プレイヤー。
・挿話:タラント病。

・[赤いチェックのファイル]四 ヨーロッパに於ける災厄の転移
・フレイザー『金枝篇』。

8 ホロデッキ
・ヴィリーの彼女・エルケ。
・『新スタートレック』「ホロデッキ・イン・ザ・ウェスト」。
・『新スタートレック』のデータ。
・・悪いデータ(兄)が良いデータに感情チップを挿入すると、2人は入れ替わってしまう。
・ウリポール、トリムコ、ズヴィッパール。(13)
・ルーマニア出身の男性の暴行死で逮捕されていたゼッツが釈放。
・・2007年からルポタージュ執筆。
・・2006年の秋にロベルトのラーバの家を訪問。(15)
・・ラーバの家で、剣呑み芸人の挿話。
・・ベルカのポスター。
・・ホワイトハウス『グレート・ホワイト・デス』。

○第二部

・巻頭文
"はじめに反復ありき。"(ジャック・デリダ)
"牝牛から仔牛がとりあげられてしまうと、母は子をなくして大変さみしそうだった。代わりに、仔牛の皮に干し草を詰め込んで小屋に入れてやった。牝牛は落ち着いて、贋作の仔牛をなめ始め、とてもねんごろに扱ったために、詰め物の仔牛の皮は破れて、干し草がこぼれ落ちた。そこで牝牛は泰然として干し草を食み、やがて「仔牛」すべてを食べつくしてしまった。"(フランク・レーン『アニマル・ワンダー・ワールド』)

1 卒業論文
・2005年晩秋に学位論文提出。数学と国語の教職課程修了。
・父子関係のモンティ・ホール問題。
・"「自分で反復してみるといいかもしれませんね」"。

2 不気味の谷
・ベルカとストレルカ。スナップ写真。
・不気味の谷現象。
・『論理哲学論考』。

・[赤いチェックのファイル]
・挿話(『距離の本質』):テネレの木の逸話。

3 ヘリアナウ学園
・安部公房『カンガルー・ノート』。
・デヴィッド・ハッセルホフ「ルッキング・フォー・フリーダム」。

・バイエルバッハ・ライヒェナウ駅。
・"口ひげを生やし、片頬にフェルトペンで丸が描いてある男"。(16)
・フォルクスワーゲン・バス。本、オモチャ、洗濯物が詰まったビニール袋。
・ゼッツは巨大な建物が苦手。
・・"庭からは不気味な、白い外階段が上方のドアへと伸びていて"。(16)

・守衛室。
・・少年エーリス人形の写真カレンダー。

・ルドルフはクラーゲンフルト大学教育学名誉教授。慈善団体「新ベンヤメンタ」後援者。

・学費2万ユーロ。
・教室は3つ。A講堂。

4 授賞式
・州奨励賞。
・・ネコの額にM。
・・アメリカ某大学のドキュメンタリー。ネコは1:35:21。

・肩がない男。
・・アルヴォ・ペルト『アリーナのために』。
・・・静寂。ネコの絵と同じ。
・・会社名「インターエフ」。
・・inter_f@apuip.eu。
・・数年前、ゼッツが男を取材。(17)
・・・ロベルトがゼッツを誘導したと告発。
・・・マックス・シャウフラーにも同様のことをした。(18)

5 五点形(クイカンクス)

・マックス。(18)
・・父親は紙工場オーナー。
・ゼッツはウンガーの代講。
・"「マウリッツさんに、今晩はカギを十八時ごろに……」"。

・ロベルト。13、14歳ほどの少年。
・Iワードは禁句。
・挿話(ルドルフ):ゾウのトプシーの処刑。
・クイカンクス(図版)。(3)

6 マックス
・「国葬」。
・アルノ・ゴルヒー、フーベルト・シュテーガーは汗だく。

・ロベルトは寮室で映画を見る。
・・ジャッキー・チェン。
・・『バットマン』(1966)。

・マックスがTシャツを脱いだ。
・ロベルトはまだ服を着ていた。

・生物学教室。
・『ナショナルジオグラフィック』:ミミズの記事。

・しばらくしてマックスはリロケーション。

7 学園のロミオとジュリエット
・去年のフェリックスとマックスの事件。
・・フェリックスはリロケーション。
・・フェリックスは近接度意識の普及活動。
・フェアエンド=Fairends(フェレンツ)。"いつだって信頼がおけます"。

・『ゾーンゲーム』
・"集団(クラスター)":インディゴ・チルドレンの集合方法。

・『リヒテンベルクハウス』(12)
・挿話(『クローネン』新聞):バイエルン州の全物質にアレルギがある女性。
・ゼッツは(2006年から)数年前、ヘビメタのバンドの長髪のkey。

8 生きもの
・ミミズは同一構造の脳を持つ。つまり、ひとつのミミズしか存在しない。

・挿話(ウルリヒ):首なし鶏マイク。ソヴィエトの双頭犬。頭だけのサル。老化しないナマコ(後出)。オオバンのミイラの卵。処女懐胎(アリマキ)。アンコウのつがい。シーラカンス。

・ロベルトはbukkakeのポルノを見る。

・[赤いチェックのファイル]ホセ・ミゲル・モレイラ著『はじめの三つ』(21)
・娘マリア。
・核数出版、2004年。

9 F組
・フェリチタス・ベルマン(14)
・アルノ・ゴルヒ(16)
・マクシミリアン・シャウフラー(16)
・ザラ・シティック(16)
・フーベルト・シュテーガー(17)
・エスター・ライヒ(14)
・ロベルト・テッツェル(14)
・ダニエル・ヴァルトミュラー(15)
・ヘートヴィヒ・ヴォーブルッフ(17)
・ユリウス・ツァールブルックナー(14)

・"R・Tへ"。
・学術論文。ミツバチの解剖。
・"「十二年後には人類はもう存在していないよ」「それなら十年ね」"。

10 オンドリ
・秋。
・ロベルトの自宅はグロッケントゥルム通り20-21番地。
・ゴルヒはPETROPAの企画トップに。
・秩序だった群衆から生徒を引きずり出す最初の人間をFerenz(フェレンツ)と呼んでいた。
・・マックスは語源を電波障害(インターフェレンツ)と主張。(後出)

・ゴルヒがロベルトを襲撃。(19)

・新聞はホログラム。(前出)
・ゼッツは39歳に。
・・気怠げな目、細縁のメガネ、突き出た喉仏、曲がった前歯、後退したこめかみ、太鼓腹。
・被害者:Frantz(フランツ)・F。45歳。ルーマニア、クラウゼンベルク生まれ。

・近所の地下室で飼われていたオンドリ。(20)
・・ある日、オンドリは消失。雪に足跡。脱走して、動物に捕まる。
・・ロベルトがオンドリをコンラートに引き渡す。名前を付ける。"少なくとも現在までは、だれもその名を知るのにふさわしくなかった"。(20)

14 二次曲線の意味とその秘密
・ゼッツはマックスのリロケーションを目撃。

・赤いチェックのファイルは父からの15歳の誕生日プレゼント。(8)

・挿話:シャム双生児。

・ゴルヒがロベルトをいじめていたところを仲裁。(19)
・ルドルフはロベルトに玄関の電話ボックスで両親に報告するように指示。

・直後、校長室の開いた扉の前で、ルドルフがフェレンツに電話しているのを立ち聞き。
・ゼッツは気絶を装ってごまかす。(9)

○第三部

・巻頭文
・"(一九八五年に偶然発見された、テート・ブリテンの壁の中にあったタイムカプセルの手紙)"。

・マリアンネ・テッツェルの父、ヘルベルト・ラウバーの談話。(15)
・ヘルベルトの精神障害者の兄、ヨハン・ラウバー。(7)

・ロベルトを電話ボックスに連れていった日に解雇。
・中庭でルドルフと喧嘩。
・挿話(ルドルフ):アブハジア、スフミ近郊のソヴィエトのサル研究所。

・ロベルトは15歳。
・ロベルトの部屋に宇宙カプセル内のイヌのポスター。

・マリアンネは鬱病の既往歴。
・フェレンツについて否認。
・テッツェル(父)はピックアップトラックで脱出を頼む。リモコン式のキー。
・・"この療法をもう一日でも続けることはできません……。早くここから出なくちゃ、インターフェレ……。"。(2)
・・パーティー帽を手にしたロベルトと同じ横顔。
・・マリアンネは陰謀の側。

・ゼッツは急に気絶。(1)
・・担当医はウールハイム。(1')

・マックス・エルンスト『かまどの天使』。
・エーヴァーゼー公園近所のビル外壁のグラフィティー。
・挿話:エレベーターの昇降機のグラフィティー。

・挿話:ノーマン・コーン『千年王国の追求』。儀礼上不可視=リーデルン、リートーサー。

・スコット・ロス演奏、スカルラッティの555曲のソナタ。

○第四部

・巻頭文
・"もし僕が完璧だったら、聞くものすべてを信じるのだが。(ウィリアム・T・ヴォルマン『レインボー・ストーリーズ』)"。
・"コミュニケーションというものは、常に受け手に有利になる傾向があるようだ。蛾が炎のまわりに集まるように、コミュニケーションは受け手のまわりに集まってくる。(チャールズ・A・フェレンツ=ホレリース)"。

1 モアイ像[緑のファイル](後出)
・2007年初めの数週間。無言電話が多発。
・シュテニッツァーから電話。
・・若者たちがクリストフを連れ出す。

・2007年初めは神経症。

・『考慮に入れなければならない諸要因』
・シュテニッツァー母子は引越し。ゼッツが訪問したときには準備していたと主張。
・APUIPのバウムヘルが世話。(14)
・・バウムヘルはウィーン出身。
・・平等推進団体。
・・バウムヘルは数回、リロケーションの世話をしたことがある。

2 木材をリスペクトしなくちゃ、ロビン
・リザレクション・オヴ・ローラ・パーマーのニューアルバムをiPodで聴く。
・挿話:『核家族セラピー』。
・パレード。(5)

・ヴィリーの新しい彼女・マグダ。
・・90年代の大ぶりのメガネ。

・マグダを「パレード参列者」と言って「侮辱」。(5)

・[赤いチェックのファイル]無題
・フェリックス・アダムスキ=シュレーバー。
・ジョン・コンウェイのライフゲーム。
・ローレン・アイズリー。シーラカンス。
・・アダムスキー=シュレーバーによれば、I現象はシーラカンスと同じで文化の進歩を否定。

3 電球頭の男[緑のファイル]
・チャールズ・アリステア・アダム・フェレンツ=ホレリース・ジュニア。1946-2003。ボストン生まれ。
・母・ルイザ・フェレンツィ。スイス出身。アメリカ移住の際に姓のIが取れる。
・父・アダム・ホレリース。
・ウォルター・フリーマンに関して博士論文。
・・評価:ゾーン(Zone:1994)、ヘルマン(Helman:2003)。

・『地下鉄の風』
・ウィーンへ。
・挿話:抜け毛の建築。

・『APUIP』
・インディゴポテンシャル平和利用協会(APUIP)。しばしばインディゴチルドレン平和利用協会(APUIC)と誤記。
・オリヴァー・バウムヘル。
・・ホイズラー=ティンブレットを敵視。
・ウィーン、ヴァルフィッシュガッセ12番地。
・ホレリース療法=発汗療法。
・・バウムヘルは神話と否定。
・挿話(バウムヘル):花を描くゾウ。
・リロケーションは弱体化させるべき社会への移住。安全。
・・インディゴポテンシャル。フェレンツ=ホレリースはヒューマンポテンシャルと呼称。
・・ホレリース療法はリロケーションでも発汗療法でもない。(前出)
・バウムヘルがファイルキャビネットから緑のファイルを出す。(前出)
・・新聞記事『マグダ・Tのリロケーション』。(前出)

・『ドクター・ハウス』、『クローザー』、『名探偵モンク』。
・『アメリカン・ビューティー』のオープニング。

4 楽しいアクシデントなんですよ、ミディ=クロリアン。

・ロベルトは19歳に初体験。娼婦・アリーツィア。ゴルヒを名乗る。

・エリザベス・キューブラ=ロス『死ぬ瞬間』。
・サミュエル・ディレイニー『ダールグレン』。
・バート・ウォード『ボーイ・ワンダー』。

・[赤いチェックのファイル]
・挿話(『距離の本質』):モハーヴェの電話ボックス。

5 マグダ・Tのリロケーション[緑のファイル]
・挿話:番号付きの羊。

・マグダ・Tのリロケーション。
・記事は2001年5月5日。
・13歳。矯正器。
・父・テオドール・T。
・ドイツ-オーストリアの国境の刑務所に移住。
・刑務所の子供部屋。
・執筆者の頬にフェルトペンで丸を描くところを想像。(16)
・マグダの記憶。
・(1)倉庫群、白い道路。
・(2)すりガラスの丸窓がついた部屋。
・(3)遊園地。ある時点からメガネを紛失。家、とくに家の裏にあるソリ滑りの道と、ウサギ小屋の記憶。
・(4)洗面台のある部屋。レモン臭。オンドリのような男の叫び。
・紙片。巻頭文。裏に鉛筆で「樹木園」。

・O・バウムヘル、C・ティール、P・クヴァント。

・2003年のマグダのポロライド写真。バウムと2人の男。

・クリスティアン、パウル。
・フェレンツがマグダの後始末。
・・フェレンツは称号。老ホレリースは全体の後援者。

・『ソフトウェア』
・1927年12月、オーバーエスターライヒ州クレムスミュンスターで失踪した7歳の男児。

・挿話:もし7歳の男児の代わりに、トルストイが7歳で失踪していたら。

・ハルドール・ラクスネス『極北の秘境』。
・朗読劇『小さな魔女ビビ・ブロックスベルク』。
・・"フェレンツ ブリュッセル市 ロワ通り三十三番地"。
・・「携帯」。長い電話番号。
・レジデンツ出版がコンタクト。

6 息子らと惑星たち
・挿話(コルドゥラ):タツノオトシゴはオスが出産。
・カート・コヴァーンの日記。鳥はトゥーレット症候群の老人の生まれ変わり。

・ラーブルが肩のない男を目撃。
・ゼッツは数年間、エヴァーゼー中等学校勤務。
・ARカンファレンス。

・[赤いチェックのファイル]
・挿話(『距離の本質』):タッツェンヴルム。

7 ロワ通り[緑のファイル]
・ブリュッセルへ。
・ナサニエル・ウェスト『孤独な娘』。
・宇宙飛行士の精神障害。リサ・ノワク。

・飛行機が無事着陸すると、蘇りの快感を覚える。

・2人組がマグダ・Tを帰宅させるべく誘拐。精神病院で下ろす。
・"白い外階段を通って大きな建物の中へ"。(16)

・フェイトレスをiPodで聴く。

・フェレンツ。肩のない男。(17)
・何にでも闇市場はある。名前にも。
・図版。

・挿話(フェレンツ):赤ちゃんポストの行列。

8 皮膚
・アポロ440『ストップ・ザ・ロック』。
・ファットボーイ・スリム『ロッカフェラー・スカンク』。
・尾行。

・ブロック体の「SETZ」の表札。

・ゼッツはロベルトのフェレンツについての質問に「戻ってきたのでは?」と質問。
・"路面電車に乗っているときに、視線が洋菓子店の看板に引っかかったときのよう"。(11)

・名前が変わらないのに、名前を冠する男が変わる。
・緑のファイルと赤いチェックのファイル。
・"緑はゴー。赤はノー・ゴー"。
・挿話:コインの印。パリのヴァージン・メガストア。

・テレホンカードを道行く人に持たせようとする。

[赤いチェックのファイル]
・挿話:モレイラ『はじめの三つ』。ハリー・ハーロウ博士のアカゲザルの実験。(21)

9 証人(ゲダイゲ)X・1、ミニーム通り[緑のファイル]

・物理的欠陥(デフォ・デュ・マテリエル)。進化論、暴力性。
・デューラー『メレンコリア』。

・VHS。リロケーションのその後。
・このときゼッツは25歳。

・下半身だけで上半身は棒の30歳ほどの男。シルクハットの男が連れて行く。
・挿話(フェレンツ):子供を守るためにDV夫に渡す母親。

・発汗療法。

・『ガリヴァー旅行記』の巨人の国。
・トマス・ブラウンのホムンクルス。
・「リンゴの小男(アプフェルメンヒェン)」=ブノワ・マンデルブロ集合。
・図版。

10 独特な仕掛け
・ロベルトが緑のファイルを読了。

・いちばんマトリックスらしく見えるコート。

・パレード。(5)

・拡張現実機(オーグメンター)。

・ルドルフと面会。
・プラスチックのノロジカのフィギュアを咥える。
・ゼッツは「文字を読むことだけは難しい」。
・"歳を重ねてさらに電球らしくなった人間の頭"。(前出)

11 散歩[緑のファイル]
・初夏。

・作為体験(セノパティック)。
・ネズミ。群体。多層構造。不老不死のベニクラゲ、老化しないナマコより素晴らしい。
・イヌ=ラブマシーン。

12 この世でもっとも耐えがたいもの
・挿話(ゼッツ):電球の絶滅。リバモア消防署。
・テレホンカードに電話ボックスのシステム(ロベルト)。
・"「ご覧のとおり対価も払いました。でももちろんすぐに、また次が出てきます。名前はいつも同じですが、名を冠するものは別ですから。同じなのはただこの電球のような頭と細い身体つきです」"。
・少年エーリスの人形。
・オンドリにマックスと名付けたことを告白。(20)

・[赤いチェックのファイル]
・挿話(『距離の本質』):「ムーン・ミュージアム」。

13 手紙[緑のファイル]
・『重力の虹』のドードー鳥の挿話。
・エヴァーゼー中等学校に復職の予定。
・クリストフの訃報。

○第五部

・巻頭文
・"ストゥルラ・サイヴァッツォンが友人に語ったところによると、彼は夢のなかで、両手にソーセージを一本持ってまっすぐに伸ばし、手で二つに折って、半分をその友人にあげたところだったという。さらには、彼には夢がちょうど今この瞬間に起こっていることがわかっていた。手にソーセージを持って、友人にその夢のことを話しているところだった。(エリオット・ワインバーガー)"。

1 メモ書き 赤いチェックのファイル。

・証人(ゲダイゲ)X・1にて。FとW。エレベーターでの監禁。

・子供のころから、ひし形が夢で象徴的役割を果たす。(3)
・遠隔作用。世界でたった1人の人間だという気分、中等学校を辞めて作家という世界でもっとも重要な人間になりたいという願望をもたらす。
・コッホ雪片。

・最終生成物。年齢不詳の男。
・子供時代、隣の農家にオンドリがいた。オンドリがいなくなると高熱を発症。(20)
・Fはゼッツをザアイスと呼ぶ。

・プラスチックのクリスマスツリー。

・インディゴ症候群の詐病による児童虐待。

・代書人バートルビー。
・看守の自死。

・『明確化(緑のファイルの書体)』
・ロープウェイ。鼻メガネの男。
・交換取引。フォンターネとはいかないが。
・1番目は短く真に迫る。2番目はウィーンの狂人2人が書き下ろした。

2 ギリンゲンの墓地

・首にiPodをかける。

・グロッケンホフ道1番地の家。
・図版。

・クリストフの墓標は「C・S」。
・・到着(アリヴェ)。

・シュテニッツァーが奇妙な微笑とともに、ゼッツをロープウェイに誘導。

3 勝者
・洋菓子店は美容室に。(11)

・無題(ブロック体)
・2007年7月2日。フェレンツ携帯、電話済み。「この番号は使われておりません」。


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