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天使にパズル No.2

春、僕には桜の花びらが
淡い綺麗なピンク色になんか見えなかった。
それは、
白だったり
灰色だったり
はらはらと落ちてくる花びらが、

僕の体にまとわりついて離れないような。

首や腕にきつく絡み縛りついているような。

とにかくとても重苦しく
鬱陶しいものにしか思えなかった。

「お前にはこの綺麗さを感じる資格などない」

「我らをみて戒めるがいい」

あちらこちらに咲いている
満開の桜の木を見る度に、
そう言われているようだった。

今年の春は、きらいだ。

新学期が始まってから1週間が経ったけど、
未だ僕は教室に1歩も入っていない。
学校には何度か行った。
先生に言われて、授業中の教室を
後ろの入口の窓から少し覗いてみたりもした。
先生は、きゃはっと笑いながら
授業を受けている生徒を眺めて、

「どうだ、楽しそうだろ。
おまえも混ざってみたいだろ。」

と僕に言ってきた。

先生の裏表の無い、
目尻にシワが沢山よった笑い顔は苦手だ。
僕には、その笑顔が先生の言ったことは絶対だという表情にしか思えないから。

多分、本人もそう思っているだろうけど。

あの教室の雰囲気は、
僕がいた頃にはなかった雰囲気だ。
だから余計に、

「この教室にお前はいらない」

と言われているような気持ちになる。
教室の端にぽつんと取り残された
誰も使っていない椅子と机なんて
まるで初めからないかのように
笑っている彼らを見て、
もうこの教室に入ることはないのだと感じた。
そう思うと、
心だけでなく体も重くなってきたのか、
下腹部が痛くなってくる。
その日は、学校で配布されたプリントやテキストだけを貰って家に帰った。

つづく

#小説 #シリーズ #天使にパズル

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