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君の隣⑧影を追って

まず彰人は水樹を自分のベッドに運び、社長に連絡をした。
社長はすぐに警察と警備に連絡し、メンバーもすぐに駆けつけた。
「どういう事だ?」
「俺も訳がわからないです。」
「水樹は大丈夫なの?」
「今、僕の部屋で休ませています。」

社長やメンバーと話している中現場検証が行われ、部屋のあちこちからカメラや盗聴器が見つかった。

「何故水樹がここにいる事がバレたんだ。」
「水樹の場所を知っているのは限られた人だけです。」
「これも霧島がやったんだろうか。そもそも霧島が犯人なのか?」
「霧島は昨日の晩に捕まっているのでこの犯行は不可能です。」
みんながそれぞれ考えている中、警備の主任からある報告があった。
それでこんな事になっていたのか。
彰人は怒りが込み上げたが、まずは水樹を安心させないとと思い我慢した。

「明後日決着をつけます。」
「わかった、私たちも駆けつけるよ。」

その夜彰人は水樹を抱きしめて眠りについた。

次の日の朝、水樹の顔を覗き込んでみる。息はしてるが全く目覚める気配がない。
お昼近くなり、心配になった俺はサイド社長を呼び、水樹を念のため入院させる事にした。

検査はいくつかしたものの、問題はないらしい。
何故目覚めないのか。
先生には精神的ショックによるものとしか言えないと
言われた。
全く、俺の可愛い弟に何してくれるんだ。絶対許さない。
怒りで掴みかかってしまいそうになるのをなんとか抑え込み、夜、約束の場所に出かけた。

「こんばんは。」
「あ、こんばんは、水樹さんはどうされたんですか。」
「水樹は体調を崩して家で休んでいます。」
「え?」
やっぱりびっくりしてる。そうだよな、GPSはここにあるのにいないんだから。
「ちょっとお話したいことがあるんですが、よろしいですか?」
「あ、ええ、もちろん。」
レストランの個室に案内し、奥の席に誘導した。
彼が座った途端一斉にメンバーと社長達が雪崩れ込んだ。
「な、何ですかいったい。」
この異常な状況に彼は身構えた。
「ちょっとお話させてくだい。」
「こんな人数でいったい僕に何の用ですか。」
「貴方、水樹につきまとっていますね。」
弁護士である千陽が話し始めた。
「え、何の事ですか。意味がわかりません。」
「私たちも何の証拠もなく貴方にこんな事を言っているわけではありません。」
「しょ、証拠。」
「水樹の家から彰人の家に移った時その場所を知るのはごく限られた者のみでした。でも、犯人はそこも嗅ぎつけまた家に侵入した。何故そこまでバレていたのか。貴方が送ったマスコットからGPSと盗聴器が見つかりました。もう言い逃れできませんよ。越田さん。」
「…」 
越田は観念したのか黙って項垂れた。
「1つ聞かせてください。貴方銀行の頭取の娘さんと婚約中ですよね。それなのに何で水樹に付き纏ったのですか。」
「婚約なんて金の為だ。僕は純粋に水樹さんを愛している。」
「愛してる奴があんな酷いことするか。」
流風がいきなり叫んだ。
「僕は許せなかった、こんな奴とあんなドラマに出るのが。僕の方が彼に相応しい。」
「お前っ」
流風が近づく前に俺が殴っていた。
「そこまでよ、後は警察に任せましょう。」
永太さんが話すと社長が扉を開け、入ってきた警察官が越田を連行した。

「これで解決だな。」
「じゃあ、いったい霧島は何だったんですか。」
「霧島は高校の時のストーカーだったみたいだ。越田ほどの凶暴性はないらしい。手紙を書き、後をつけるくらいだよ。でも、今回も再会した事でまたストーキングするつもりだったらしい。良かったよ、早めに対処できて。水樹はどうも熱狂的なファンができやすい。早めに相手を見つけて交際宣言させないとな。」

「そうですね…」
チクリと胸が痛くなった。
なんでだろう。意味がわからないまま俺は病院へ急いだ。

………………………………………………………………………………

病院へ着いて急いで病室に向かう。
入り口にはちゃんと警備の人がついてくれていた。
挨拶をして中に入る。

中では看護師さんが2人楽しそうに話していた。
「綺麗なお顔。お姫様みたいね。」
「肌もツルツル。でもまだ目覚めないって。可哀想ね。」
「王子様が口づけをしたら目覚めるのかしら。」
「それ素敵ね。」

「あの…こんばんは。」
「あ、」「あら。」
「こんばんは。私たちの仕事は一通り終わりましたので帰りますね。」
「ごゆっくり。」

2人は笑顔で病室を後にした。

改めて水樹の顔を見てみる。
こんなに近くでじっくり見るなんて初めてかもしれない。
確かに綺麗だ。
高校の時から可愛い奴だった。
でも最近大人になって綺麗になった気がする。
しばらく考え事をしながら水樹の顔を見ていた。
「綺麗だ…」
俺は吸い寄せられるように顔を近づけ水樹に口づけた。

その瞬間水樹が目を開けた。
まさか、俺が水樹を目覚めさせた?
びっくりして何も言えずにいると、
「おはよう。」
「あ、おはよう。って言っても夜だけどな。大丈夫か?」
「うん、大丈夫。」
「事件は解決したぞ。」
「え、ほんと?」
「ああ。犯人は越田だった。」
「え。海都さんが…」
「もうあいつの名前は呼ぶな。」
「あ、うん。」
「安心してゆっくり休め。1週間後撮影再開だ。」
「わかった、ありがとう彰人くん。」
「ああ、じゃあな、また明日。」
照れ臭くて慌てて病室を後にした。
俺が水樹に口づけしたから目覚めた?
俺は戸惑いながら家に帰った。

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