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【EDH】《エインジー・ファルケンラス》- マッドネス投入枚数の考察

概要

モダン・ホライゾン2にて新たに7枚のマッドネスを獲得し、《エインジー・ファルケンラス》の構築には多くの選択肢が与えられることになった。

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本稿ではマッドネスの投入枚数についての考察し、発生するトレードオフについて解説する。

固定スロット - マナベース

デッキの固定枠についての前提知識を共有する。

マッドネスを活用するにはジェネラル《エインジー・ファルケンラス》を着地させなければ話が始まらない。土地2枚とマナ加速または1マナサーチが見えるような手札を初手に求めていくこととなる。赤黒でマナ加速換算できる土地を3枚、1マナサーチを3枚、マナ加速を9枚取るとマリガン対応札が15枚換算になり、現実的な確率で初手で見付けることが可能となる。

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土地枚数は色々試した結果、27枚に落ちついた。マナ加速を求めてマリガンするので攻めた枚数にするとキープが厳しくなりすぎる。マナフラッドが厳しいデッキなのでなるべく土地を絞りたいという要求もあり、妥協点を探った結果として27枚となっている。

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以上、2ターン目に《エインジー》を唱えるという要求からマナ関連36枚、サーチ3枚の39枚までが固定枠となる。これ以上減らすとキープが非常に困難になる。これを前提として考察を進める。

土地を引き込む確率

最初にマッドネスカードを増やす最大のデメリットについて説明する。

マッドネスを持つカードをコストにして《エインジー》を起動すると《エインジー》がアンタップしてカードを1枚引く。すなわち、無償でマッドネスを持つカードを次の1枚に交換することができる。これを手札からマッドネスがなくなるまで繰り返すことによって、手札を全てマッドネスを持たないカードに交換することが可能である。

大量に手札を交換したとき、交換後の手札内容はデッキを反映した内容となりやすい。土地27-マナ加速9-その他16のデッキならば7枚の手札の期待値は 3.64 : 1.21 : 2.15 に、土地27-マナ加速9-その他30ならば 2.86 : 0.96 : 3.18 になる。「その他」の枠を削ってマッドネスにすることによって、手札を占めるマナソースの比率が高くなる。

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これを端的に表現すると、マッドネスを増やす=土地を引きやすくなるである。土地の枚数は既に下限いっぱいまで絞っているので、デッキを薄くすればするほど土地の比率が相対的に高まることは避けられない。

マッドネス47枚構築のマナフラッドがどれくらいのリスクか、少し数字を出しておく。手札7枚のうち5枚以上がマナソースになる確率63.3%、6枚以上の確率29.5%、7枚全てがマナソースになる確率が6.2%。参考までに33枚構築の場合は29.6%、8.6%、1.1%だ。

ターンが経過すれば《エインジー》の手札交換により手札の状況は良くなって行く。しかし、マッドネスを大量に交換して勝負をかけるターンには大量に引き込まれる土地を無視できない。最序盤に仕掛ける戦略がメインの場合は手札を整える暇がないため、この比率と正面から向き合わねばならない。

コンボへのアクセス

次にマッドネスを増やすメリット、デッキを掘る速度について考察する。

手札のマッドネスを全て交換し、さらに引いてきたマッドネスを全て交換し……と繰り返して特定の1枚を引き込む確率と、2枚コンボが揃う確率について考える。ここでは例としてターン2、ナチュラルドロー9枚から仕掛けるケースを扱う。3種仕込んだ1枚コンボにアクセスする確率と、2枚コンボ《動く死体》《Dance of the Dead》《ネクロマンシー》-《納墓》《世界喰らいのドラゴン》《穢れた血、ラザケシュ》の3枚-3枚コンボが揃う確率を提示する。実際にはマナが不足するケースもあるがここでは考慮しない。

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デッキにマッドネスが47枚のとき、チェインを考慮して掘り下げる枚数は8枚前後。ナチュラル9枚と合わせて1枚コンボ3種のいずれかにアクセスできる確率は凡そ43.5%。3枚-3枚の2枚コンボを揃える確率は凡そ18.3%。どちらかを実行できる確率は53.8%。

デッキにマッドネスが40枚のとき、掘り下げる枚数は7枚前後。1枚コンボ41.4%、2枚コンボ16.5%、累計51.1%。

デッキにマッドネスが33枚のとき、掘り下げる枚数は5枚前後。1枚コンボ37.0%、2枚コンボ13.1%、累計45.3%。

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当然ながらコンボパーツを引き込む確率には明確に差が出る。パーツを素引きして2ターンキルを狙う必要がある速度環境であればマッドネスを限界まで積む構築が肯定される。

ここで言及しておくべきは、サーチを経由しての3~4キルであればマッドネス枚数を多少絞っていても十分な確率で仕掛けられるということだ。33枚構築でも3ターン以内に仕掛けを成立させる確率を8割強は確保できる。妨害を応酬して少し遅い決着が主となる環境であれば、コンボを揃えるためにマッドネスを過剰に積む必要はないと言える。

シナジーカード

《エインジー》にはマッドネスを増やすことで明確に強化されるカードが数種類採用されることが多い。どれくらい強化されるかを検討する。

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まずは効果の激しいところから。《葬送の影》は1ターンに捨てたカードを全て回収し、莫大なリソースを得る。マッドネス47枚構築で3ターン目に仕掛けると回収できるマッドネスカードは10枚前後、40枚構築では8枚前後、33枚構築では6枚前後となる。47枚構築でマッドネスを10枚回収するとさらに19枚程度掘り進むことができ、概ねマナを確保しながら何らかのコンボに繋がる。多少不安定ではあるが、1枚コンボに昇格していると評価できる。

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続けて《骨たかりの守銭奴》について。47枚フル投入型であれば、3ターン目にクリンナップループすると期待値で81枚にアクセス可能とゲームを決定付けるドローエンジンに昇華している。実戦では仕掛ける前にマッドネスを放出して《骨たかりの守銭奴》や対妨害札を探すことになるので毎回81枚にアクセスできるわけではないが、多少目減りしたところでゲームを決めるに十分な力を持つことに変わりはない。参考までに、33枚構築では期待値で31枚ほど。チェイン開始時の手札にマッドネス・スペルが潤沢であれば完走を狙えるが、安定してゴールするためにはなんらかの補助を必要とする。

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墓地の枚数をリソースとする《死の国からの脱出》について。3ターン目に交換できる枚数は33枚構築で6枚、40枚構築で8枚、47枚構築で10枚。47枚構築であれば安定して3回脱出が可能で、サーチ1枚から強引に繋げやすくなっている。マッドネス33枚が安定して2回脱出できる下限であり、これを割り込むなら相応の理由が必要となるだろう。

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生物参照の《忌むべき者の歌》《霊廟の秘密》のパワーは33枚構築で4.0枚、40枚構築で4.5枚、47枚構築で5.3枚が目安。ここには劇的な差はない。

このセクションの結論として、《葬送の影》《骨たかりの守銭奴》はマッドネス47枚フル投入により明確に強化される。一方で《死の国からの脱出》《忌むべき者の歌》《霊廟の秘密》を十全に使うためには33枚あれば良いことが分かる。

なお、枚数計算はそれぞれ適当にモデルを作って100万回ほどシミュレートして導出した。ざっくり手計算した期待値とも大きな乖離はないので大体あってることが期待されるが、もしかしたら多少なりの誤差があるかもしれない。あしからず。

結論

想定する環境によって正解が変わるという平凡な結論になるのだが、どのようなトレードオフが発生するかは把握しておくべきだろう。

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マッドネス47枚構築はコンボスピードに特化した形となる。より多くデッキを掘り下げることでコンボパーツに辿り付き、最大化した墓地依存カードのパワーで早期決着を可能とする。代償としてマナフラッドのリスクを負う。加えてマッドネスカードでデッキスロットが圧迫されるので速攻でコンボを仕掛ける以外の選択肢が大幅に制限されることとなる。

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3ターンキルに照準を合わせ、墓地利用カードの力を損わないギリギリまでマッドネスカードを絞ると33枚という限界値が提示できる。マナフラッドのリスクを抑えて比較的安定した動きが可能となる。デッキスロットに余裕ができるので妨害やサーチの枚数を調整して最適な比率に近づけることができる。代償としてキルターンは最速構築に譲ることとなる。また、墓地依存カードのパワーも一段劣る状態での運用となる。

33枚から47枚の中間値に関しては、1枚マッドネスを増やす毎に上記のトレードオフが発生する。どこまで対応力と安定性を捨てて加速するかという話に帰結するので、結局のところ環境次第で正解が変わるという平凡な解答に戻ってきてしまう。

筆者個人の見解としては《エインジー》の良さは速度ではなく柔軟なプラン選択とインスタント・タイミングの攻防にあると思っているので速度特化構築はあまりオススメではない。しかしながら、2キルぶっぱ構築にも一定の存在意義はある。オールインでありながら生物除去を2桁積んでいてヘイト生物で詰みにくい/生物デッキに後手から捲りやすいという差別化要素はあるのでオールイン好きならば試してみるのも悪くないと思われる。

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モダンホライゾン2により《エインジー・ファルケンラス》に与えられた選択肢は莫大であり、ベストの構築に辿り着くことは容易ではなさそうだ。色々と構築を弄って遊べるまたとないチャンスなので、《エインジー》使いの皆様は是非とも色々な構築を試してみてほしい。


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