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【EDH】《エインジー・ファルケンラス》戦略ガイド

概要

統率者《エインジー・ファルケンラス》の性質を解説し、どのようなプランニングでcEDHと向きあうべきであるかを提示する。

デッキリスト

現在のリストはこちら (2021/06/29更新)

《エインジー・ファルケンラス》


カードを捨ててカードを引く。あまりにも簡単に手札を増やす統率者が巷に溢れているなかで、聊か謙虚すぎる能力かもしれない。赤黒2色という色の少なさによる制約も大きく、デッキ選択時点で諦める選択肢も多い。

それでもこの統率者を選択する理由があり、魅力がある。本稿ではそれを可能な限り解説したい。

制約 - 固有色に青を含まない


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最初にウィークポイントを説明する。見ての通り、青くない。これは"c"であろうとする上では致命的な欠陥だ。青くないことで最強のコンボと汎用の打ち消し呪文を失う。攻防に大きな負担となる。

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コンボを通す力と即死を防ぐ力で青絡みの統率者に大きく劣っている状態がスタート地点だ。まずはこの制約を認めなければ話が始まらない。

ここで明確にしておきたいのだが、青なし統率者が目指すべきは「最速」ではない。同じ土俵で競えば軽量カウンターを多数擁し、コンボが優秀な青に軍配が上がるのは明白。下位互換に甘んじる姿勢は"c"ではない。

勝ちのチャンスを逃さないために一定の速度は必要だが、青なしの速度特化には限界がある。速度特化したデッキに最序盤の攻防で一段劣ることは認めた上で、速度以外の何の要素で"c"に挑むのかを明確にする必要がある。

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↑速度に寄せるなら素直にこちらを使うべき

《エインジー》の特性

厳しい現実を直視したところで、《エインジー》の特性を解説する。

1. リソースを減らさない除去。
2. リソースを減らさない生物展開。
3. マッドネスカードから通常カードへの変換。
4. ハンドクオリティの向上。
5. 墓地リソースの供給。
6. ライブラリトップへのアクセスによるチューターの強化。
7. 釣り先を墓地に送ることによるリアニメイトの補佐。

以上が《エインジー》に与えられた武器である。各項目を解説する。

《エインジー》にできることA - 生物除去

まずは無駄に豊富なマッドネス除去。限界以下の「腐っても除去」の集団ではあるが《エインジー》経由で使用すれば手札が減らない。手札が減らないなら何であれ有能だ。

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アドバンテージを失わず、後続もあるので気軽に除去を放てる。軽い統率者やマナクリなどを除去してテンポを奪う戦術を無理なく採用できる。

もちろんゲームの焦点となる《船殼破り》《敵対工作員》マウントの取り合いにも大きく貢献する。特に《船殼破り》が定着すると《エインジー》が機能停止するので、マッドネス枠で対応する除去を9枚も確保できるのは非常に心強い。

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逆に《エインジー》と相対する側は安易にこれらの生物でマウントを取りに行くべきではない。3マナと手札1枚を消費してアドバンテージ損失なしに捌かれるのは割に合わないためである。

《エインジー》にできることB - 雑魚の召喚

こちらは一見して弱そうである。実際のところ、2マナ3/1や3マナ3/3のほぼバニラ生物が出てくるだけで、直ちにゲームに影響しない。直ちに影響しないが故に咎められることもない。

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↑まさに有象無象

この雑魚の群れは短期的には無害だが、妨害を構え合う長いゲームになったときには無視できない存在となる。適当に3体並べば10点クロックだ。一度は通せても二度目は通し難く、三度目のアタックは死が見える。なんらかのアクションを強制的に起こさせることが可能となる。


攻撃のみならず防御においてもこの権利は有効だ。瞬速ブロッカーが出てきそうに見えるのでエインジーは殴りにくい。このためライフを温存しやすく、フィニッシュ手段にライフを大量に使用するギミックを採用する後押しとなっている。

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↑地上3/3や飛行2/1を一方的に撃ち取るお身体大きめの方々


雑魚の群れは最終的には《Burnt Offering》と《ラザケシュ》のエサになる。展開した雑魚をマナや妨害札に変換してコンボを仕掛けることが可能だ。

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手札枚数を減らさずにボードを構築し、ライフにプレッシャーをかける。同時にコンボの下準備を自然に遂行する。当然の権利としてライフを高水準で維持する。これがエインジーに与えられた権利「雑魚の召喚」である。

《エインジー》にできることC - ルーティング

《エインジー》はマッドネスカードなら何度でも、その他のカードは1ターンに1度墓地に送り同数のカードをドローする権利を持つ。これにより可能となることは以下。


マッドネスカードを非マッドネスカードに変換する。この能力により、弱いマッドネスカードをデッキに大量投入することが肯定される。

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手札の質の向上。不要牌を切って新鮮なカードを引く。地味ながらマナフラッドを回避するために重要。マナソースは39だが、マッドネス関連を除いてカウントすると39/65で6割となる。マッドネスを通常札に変換していくと必然マナフラッドすることになるので、手札交換能力はただそれだけで偉い。


《忌むべき者の歌》《霊廟の秘密》で参照する生物カウントの確保。普通のデッキで《霊廟の秘密》は完全に腐るリスクがあるが、《エインジー》なら生物を1枚墓地に置くことは容易なので《吸血の教示者》or《納墓》に繋いで最低限の仕事が保証される。少しゲームが進めば《ネクロマンシー》や《ネクロポーテンス》に直接アクセスするのも難しくない。

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2ターン目《エインジー》着地から土地を1枚交換し、3ターン目に手札にあるマッドネスを交換していくと4~5枚マッドネスが墓地が貯まることが期待できる。最後に土地を交換して計6~7枚。フェッチランドが絡むとさらに墓地は潤沢になる。

このように、工夫せずとも《死の国からの脱出》で2回脱出するのは難しくない。統率者が安定して脱出コストを供給するため《死の国からの脱出》のパワーが保証される。

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マッドネスカードを抱えておくことで《吸血の教示者》等でライブラリトップに積み込んだカードに即座にアクセスすることが可能となる。《死の国からの脱出》から《吸血の教示者》等を連打する仕掛けが成立しやすくなる。


大事な仕事が、リアニメイト用の生物を墓地に送ること。統率者が「釣り先の生物を素引きしてしまう問題」を解決するので、リアニメイトに依存した戦略を取ることがある程度肯定される。これについては次項でもう少し掘り下げて解説する。

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リアニメイト戦略

「釣りたい生物を引いてしまう問題」はリアニメイトデッキ共通の懸念事項である。これを統率者で解決できるのは稀有な特徴であり、ハードルが高いリアニメイト戦略を採用する後押しとなる。

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巨大生物の蘇生は2枚コンボだが、釣り先と釣竿それぞれに枚数があり揃えやすい。枚数を取ると重複が問題になるが、釣り先は統率者が処理するので手札で嵩張り続けることはない。釣竿は重複していくが、カウンターへの耐性を考慮するならむしろ複数抱える状況は好ましい。


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《ネクロマンシー》は昨今では貴重品となったインスタントキルを提供する。《世界喰らいのドラゴン》《ラザケシュ》《タッサの神託者》がメインターゲットだが、タイミング良く《船殼破り》《概念泥棒》《敵対工作員》などを釣り上げてもイージーウィンとなることがある。


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《船殼破り》《敵対工作員》《エイヴンの思考検閲者》等の妨害生物を雑に永続蘇生してゲーム展開を遅くするという選択肢がある。妨害が減ったタイミングで決まると居座る展開となりやすく、貴重なリアニメイト呪文を投資するだけの成果が期待できる。バウンスされるとマウントを取り返されて大損なのでそこだけは注意が必要。


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リアニメイト呪文で大物を釣らなければならないという決まりはない。《波止場の恐喝者》でマナの確保、《刻み角》でアーティファクト破壊、《呪文探求者》でスペルサーチ、など必要に応じて便利呪文として使える。リアニメイト呪文は一芸特化と最低限の対応力を両立する。

ゲームプラン

2ターン目の《エインジー》着地を求めてマリガンする。能力起動の機会が増えることは重要だし、《ドラニスの判事》やカウンターをかわすためにも早期に着地したい。枯渇ランドまで含めて16枚が対応している。

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《エインジー》が着地したらマッドネスカードで盤面を取りながら手札を整える。機会があればインスタント・キルを仕掛ける。

妨害が減ったタイミングで行けると判断したらメインフェイズで仕掛ける。《ラザケシュ》《ネクロポーテンス》《死の国からの脱出》から真の勝ち手段に繋ぐルートが止まりにくくて良い。

これらのフィニッシュ手段の特徴について少し解説する。

《穢れた血、ラザケシュ》

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一度《ラザケシュ》が着地すると、それまで展開していた生物の数に応じて妨害を避ける札を探せる。リアニメイト呪文へのカウンターを対策すれば妨害を貫通しやすい仕掛けになる。最も単純な対策は釣竿を複数持つことだ。

これ自体でループすることも不可能ではないが《世界喰らいのドラゴン》に繋ぐのが基本。メインフェイズで《死の国からの脱出》を経由すると対妨害に多くのリソースを残しやすい。

インスタントタイミングで《ラザケシュ》を釣り上げた場合もマナと生贄が足りていれば即死を仕掛けることが可能。条件はかなり厳しくなるので通常狙うべきではないが、インスタントキルの選択肢は常に考慮していきたい。

《ネクロポーテンス》

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メインの勝ち手段。《むかつき》の類と同様に、解決すれば大量の手札を獲得して妨害札にアクセスしつつフィニッシュできる。カウンター以外の対処が難しい1枚コンボとして評価できる。

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終了ステップ中に《骨たかりの守銭奴》を用意できるかが焦点となる。統率者不在のとき成功率が下がる原因はここにある。事前に仕込みが済んでいれば統率者に拘らなくて良いが、このあたりの機微は回して慣れるしかない。

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《出現領域》と合わせると統率者に依存せず成功率の高い仕掛けとすることが可能となる。ルーリングの問題が大量にあるので事前確認は必須だ。


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エンチャントなので《狼狽の嵐》《ナーセットの逆転》に耐性がある。加えて《むかつき》に効く《払拭》や《深淵への覗き込み》に効く《偏向はたき》も効かない。妨害への耐性が高いのは評価ポイント。


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クリンナップ・ループするため《沈黙》《天使の嗜み》へのナチュラルな耐性がある。覚えておいて損はない。


《死の国からの脱出》

このデッキの《死の国からの脱出》は《ライオンの瞳のダイアモンド》《思考停止》という隠し減点要素のない真のパワーカードとして成立している。

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《吸血の教示者》等のあらうるサーチが《死の国からの脱出》下では勝ちに直結する。《死の国からの脱出》をサーチするカードは一枚コンボとして評価できる。

《死の国からの脱出》は墓地と余剰のマナに応じて妨害への耐性を持つ点が優れている。《死の国からの脱出》へのカウンター以外で止めにくい。エンチャントなので、《ネクロポーテンス》と同様に若干カウンターされにくいのも利点。


《死の国からの脱出》から他のコンボに繋げる、あるいは事前に失敗したコンボをもう一度仕掛けるのがメインの使い方となる。

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その他のコンボに繋ぐのが本線ではあるが、限界ループコンボのパーツにもなりうる。《Demonic Consultation》を採用している以上コンボルートが多すぎて困るということはない。

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まとめ

冒頭の問いに答えたい。

「最速」以外の何をもって"c"に挑むのか。

《エインジー》の武器は盤面干渉の強さとインスタント・キル。防御貫通の仕掛けはどのデッキでもやることだが、湧き出る雑魚を《ラザケシュ》に食わせて防御貫通の仕掛けとするのは《エインジー》ならではと評価して良いだろう。この3つを"c"に挑む武器として提示したい。

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統率者レジェンズ以降の環境変化により《エインジー》の立ち位置は大きく変わった。生物除去が重要度を増し、釣り上げて嬉しい生物が墓地に溢れる環境となった。リアニメイトの妨害としての役割が強化され《エインジー》に不足していた防御力がそこそこ補完された。

生物除去と湧き出る雑魚でボードを取りながら墓地利用の即死を狙うのが《エインジー》の基本戦略だ。生物除去とリアニメイト呪文の価値が増した現環境はこの基本戦略を後押ししてくれる。今後の環境がどのように変化していくか不明だが、色を問わずクレイジーな生物が出る度に《エインジー》は強化されていくことだろう。


最後に《エインジー》の魅力について少し語ろう。

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圧倒的な選択肢の多さが最大の魅力だ。

マッドネスを唱える唱えない、手札に抱える抱えない、状況次第でどれもがも正解になりうる。手札の有象無象が常に考慮対象となる。

リアニメイト呪文を温存する、些細な生物を釣って少しのアドバンテージを得る、妨害生物を釣ってスローダウンさせる、あるいはすぐにコンボを仕掛ける。このどれもが正解でありうるし、不正解でありうる。

豊富なサーチがさらに選択肢を増やす。いつでも仕掛けられるが故に、いつ仕掛けるかの選択を常に迫られる。インスタントで仕掛けるのか、重ねた仕掛けでメインフェイズに勝負するのか、あるいは力を溜めるのか。

複雑怪奇な道筋を、適切に辿れば"c"の景色が見えてくる。


長文を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

追記

2021/06/29 モダンホライゾン2にリスト対応しました


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