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「貼る毛利氏」自句独語 02

「貼る毛利氏」自句独語 01つづき 。

仕込みが終わったら、調理です。
それでは『川柳EXPO 2024』P148-149 を お開きください。

1句目
フォーレ:夜想曲第1番  において、左手の伴奏が1拍を 2回同じ音で 
刻むさまから、踏切警報機を連想しました。
「踏切」と川柳は親和性があるように思います。
また、ハイドシェック盤でいうと 04:15過ぎあたりのフレーズが、浪花
のモーツァルトことキダ・タロー先生の ♪ 獲れ獲れぴちぴち ♪ に類似し 
ていることから、「カニ」の語を引き出しました。
蟹もまた、川柳と良く合うでしょう。
そして夜想曲から「夜」。
忠実に(どこが)スケッチした結果、言葉の持つイメージの組み合わせから、藤圭子の歌にも似た世界が形成された感じでしょうか。
フォーレの美メロがとかとかに繋がりそう、という期待はありました。

1句目から4句目までが、ガブリエル・フォーレの曲です。
第1番 を多く取り上げ、とかを意識しました。
「ショー へ ようこそ!」です。
(そこから生まれた順にドビュッシー、サティ、ラヴェル、プーランクと続きます)

2句目
フォーレ:舟歌第1番。 舟歌から「ゴンドラ」を導きました。
「大阪」は、東洋のヴェニスと呼ばれる水都でもあるそうですし、それ以上に1句目の「カニ」からの流れを意識しました。
「祝福」の語は、A-B-A' 形式のBの部分、水面がキラキラしているイメージからの連想です。
式場のゴンドラに想像を跳ばすのも、もちろんアリでしょう。
十五音なのは、原曲のリズムと、大阪から想起された都はるみ、舟歌から想起された八代亜紀あたりの節回しが影響しているかもしれません。
さすがに2句目から変化球は早すぎるかとも思い、十七音ヴァージョンも いくつか書いてみましたが、「心からは祝福していない感じ」が、より弱くなると感じました。

3句目
フォーレ:ヴァルス=カプリス 第1番  から。
カプリスに由来する「気まぐれ」を持ってきて、フォーレから「惚れ」。
下五はヴァルス(ワルツ)連想で、何か三に関わる言葉を。
最初は、2句目と関連させて三角洲とかどうか、とも思いました。
しかし、良からぬことを想像する輩がいないとも限りませんので、却下。
まあ、いいんだけどさ。
で、三角お揚げから「あぶら揚げ」としました。
ある程度の飛躍も出たと思います。
ただ、あぶら揚げには三角でないものもあります。
そこで、説明にならない程度にヴァルス要素を強めるため、「踵」を補充しました。

この連作では、ヴァルス、パヴァーヌ、パスピエ、ケークウォークが、ダンス・ミュージックというか舞曲系でしょうか。
クラシック音楽を小難しいと感じる人は当時もいたでしょうから、ダンサブルな曲は、取っ付きにくさを緩和する一つの方法だったのかもしれません。

4句目
フォーレ:パヴァーヌ  から。
後ろの方でラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」を取り上げていることにも対応しています。
パヴァーヌは、ラテン語のpavo(孔雀)に由来するとも言われるそうです。
また、この句で用いられる「よな」は、曲のメロディが松任谷由実「真夏の夜の夢」に類似している気がしたので、転用してみました。
ような、と言っているのに、ちっとも喩えていない例が佐藤信夫さんの本にもあったような気がしますが、面倒くさいので調べません。
五・七・五ではありませんが十七音です。
そういえば昔、近所に孔雀飼っている人がいたなあ。


5句目
ドビュッシー:夢想  から。
誰しもが考えがちな「私とは何か」問題を今更取り上げました。
アラン・プラネスが奏でる、くぐもったようなピアノの音を聴いているうちに、だんだんと自他の境が曖昧になっていくような感覚があったからです。
界隈で最近まで「私」問題が燻っていたことにも関わるかもしれません。
「コ」は、映像がビビビッと一瞬乱れるようなイメージです。
ちなみに、「桃の花」がセクシーな意味を持つようになったのは昭和初期の言論統制が原因で、本能によるものではない、という説があるようです。
こちらも五・七・五ではありませんが十七音です。

5句目から8句目までは、謂わばセコ(2nd) です。よろしくメカドック。
段階的に加速していきたいところ。
ドビュッシーの最も有名であろう曲「月の光」や、後期の抽象化された曲ははずしました。
前者については、超有名曲を取り扱うのは、名句や名言を取り込むのと同様に、なかなか手強いのではないかと思います。
後者については、句が小難しくなりそうなので、避けました。

6句目
ドビュッシー:パスピエ  から。
2024/05/11 の私のポストへのコメントで、パスピエを聴いた ある方が「ガリレオみ」とおっしゃっています。
私も『ガリレオ』の熱心なファンではありませんので、作句する前に一応サントラを確認しましたが、それらしい曲はみつかりませんでした。
でも、確かにあるんですよ「ガリレオみ」。
逆に言えば、私たちは意外と まだ近代に縛られているのかもしれません。
そんなこんなで、下五は「フクビクウ」が適していると判断しました。
試しに大山英雄氏の声で、「フクビクウ」と言ってみてください。

7句目
ドビュッシー:ロマンティックなワルツ  から。
現代で「ロマンティック」といえば、ふんわりとしていて夢見がちなイメージですが、このロマンティックには、もう少し幅の広い感情、負の感情のようなものさえ感じました。
パブロ・ピカソのいわゆる 青の時代 のような光景が脳裏に浮かんで、それもあって、ここで陰のイメージの顕れとして「」を使いました。
破調ながら「円舞曲」を「ワルツ」と読むことで、十七音になります。
椎名桜子さんがやっていたのは、輪舞曲と書いてロンドと読ませるやつです。

8句目
ドビュッシー:ゴリウォーグのケークウォーク  から。
信長の家臣、弥助を連想したので、ケークウォークを和訳してみました。
ゴリとあることから、最初、上五を 勝家と にしようとしましたが、あまりりも そのまんまなのでやめました。
直臣ではないようですが、織田家家臣の中にも「蔵人」と呼ばれていた人はいるようです。
フランス人でクロードといえば、大概モネかドビュッシーの二択で、稀にチアリでしょうから、「蔵人」を採用しました。
ケークウォークを西洋音楽にいち早く取り入れたのは、ドビュッシーではなくサティだという説があります。
五・七・七 の十九音なのですが、見た目は長く感じないと思います。


※「貼る毛利氏」自句独語 03 まで、しばらく お待ちください。



 








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