『良き社会のための経済学』(1章〜5章)ジャン・ティロール

1、2章は社会と経済学の関係性について、3〜5章は経済学者は何を考えるのかについて書かれている。

新たな知見 → ・政府のやりたいこととできることを区別しなければならない。資源配分に必要なのは情報であり、市場によってそれが明らかになる。例えば通信会社に周波数を割り当てる場合、政府が勝手に無料で与えるのではなく、オークション形式でやれば事業者の持つ情報(ある周波数に対してどの事業者が一番多く払う気があるのか)がわかる。政府は基本的には適切な情報をもっていない。これが社会主義が失敗する理由である。また市場の規制にしばしば失敗する理由でもある。だから「国なんかあてにしちゃだめ」。しかもその政府に投票した有権者も必ずしも賢明ではない。

・理論は必ずしも正しくない仮定をしている。うまい理論は、最終結果が仮定にあまり左右されないようなものである(だから多少ありそうにない仮定があっても大丈夫か?)。決定的な仮定とは結論の細部まで左右してしまうものである。だからそのような仮定は十分現実を反映したものでなければならない。

・情報の経済学から得られた契約を確実なものにするコツ:
 ①技術的要素、計測可能なデータ、確認可能な行動のみを対象にする。雇用対策、気候変動対策にはこれが有効。
 ②信賞必罰とすること。インセンティブメカニズムがないと身勝手な行動が起きやすくなってしまう。また、契約見直し、契約終了の条件を事前に決める必要がある。

・インセンティブについて。強力な(外的)インセンティブを設けてしまうと内なる動機が損なわれてしまう。例えばチームにおける個人の貢献度が計れない場合、たまたまいいメンバーがいてサボっていても問題なかったり、仲間に足を引っ張られた人が不当な罰を受けるなど、そのチームに大きく左右されてしまう。
 また、勉強を頑張った小学生にお金をあげるのも良くないインセンティブである。中学生になりお金がもらえなくなったら勉強しなくなったり、お金がもらえるのは勉強が本来は面白くないからだと思ってしまったりするからだ。
 インセンティブはあくまで1つの手段だと肝に銘じよう。

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