これは……原野商法なのか?北海道の土地が0円で売りに出ている件

君は、ゼロ円住宅サイトを知っているか!?


いきなりですが、ゼロ円住宅ってご存知ですか?

「土地を持ってても、全然売れないし、こうなったらもうゼロ円でもいいから持っていって欲しい!」という人と、「ゼロ円なら欲しい!」という人をつなげるマッチングサイトで、これが見ていると結構面白いんです。

北海道の不動産屋が始めたサービスだからか、地元の物件が多く、私としてはかなり勉強になっているのですが、それはそうと、このサイト意外と取引が成立するらしく、「ゼロ円なら貰って、自分で直して民泊とか始めたい」みたいな人が結構多いのかなと思っています。

ということで、過疎に悩む自治体が多い北海道の悩みを解決してくれる社会的意義の大きいサービスなんですが、このサイトに先日こんな物件が出たんですよ。

なんと、北海道真狩(まっかり)村の山林がゼロ円だと言うのです。見出しを見た瞬間、「お!」と思いました。理由は後述しますが、真狩村は私が個人的に注目していた自治体です。スキーに行くときに何度か通ったんですが、かなり地の利が良い。

これは……!と思ったんですが、区画図を見てびっくり。これって……まさか俗に言う原野商法で買わされてしまった土地では?

真狩(まっかり)村のポテンシャル

なぜ真狩村に注目していたのかというとサイトの紹介文にもあるように、ルスツとニセコの丁度中間にあるんです。

Googleマップの画像に書き込んだのが以下の画像なのですが、中央に羊蹄山、その西側にニセコ東急 グラン・ヒラフというスキー場が見えています。これが俗に言うニセコエリアです。(実際は黄色の丸で示した部分も含め、4つのスキー場が並んでいますが、テレビなどで取り上げられるのは、グラン・ヒラフがあるひらふ坂が多いようです)

グーグルマップより

意外と間違いがちですが、グラン・ヒラフは住所の上では倶知安町。ニセコ町ではないので注意が必要です。ニセコエリアはニセコ町部分にもまたがっていますし、ニセコ町もスキーが盛んなので間違いではないですが。

右下、留寿都村というのが見えるでしょうか、その近くの黄色い丸がルスツリゾートのあたりです。

そして、画像の中央にあるのが真狩村なんです。丁度中間ですよね。なお、グーグルマップで測ってみると、真狩村の中心部の交差点から、グラン・ヒラフまでは19.9km、自動車で22分。ルスツリゾートまでは、10km、自動車で12分となっています。ルスツまではほとんど通勤圏内と言っても良いのではないでしょうか?

丁度中間にあると何が良いかって、天候に合わせて好きな方に行けるということです。スノーボーダーなんかは、新雪を求めるので、その日の天気予報で行くスキー場を変えたりするんですよね。

今日はニセコが吹雪いているからルスツにしよう。とか、昨日はニセコに新雪が降ったからあさイチでニセコに行こうとか。そういうことができるわけですね。さらに温泉も湧いている。

真狩の中心部から見る羊蹄山。数年前に撮影したもの

それから町の中心部から羊蹄山がそれは綺麗に見えるんですよ。通るたびにいいなぁと思っていました。で、そんなこんなで「真狩に家を借りれたら、冬は楽しいだろうなぁ」って思っていたわけですから、今回のサイトへの掲載には、かなり心を動かされました。

ただ、区画図を見る限り、どうみても森に「これから街を作りますよ」という感じに土地を割っているわけで、よくある原野商法に思えます。別に騙す気はなくても、どでかい開発計画を立てていたのが、バブル崩壊で頓挫した……なんてケースもありますしね。

山林でも切り拓いて野営地みたいなものを作れれば、色々と楽しそうです。そうなると気になるのが建築許可。建物の建築が可能なのか、都市計画区域を知りたくて真狩村に「都市計画の地図ってありませんか?」と聞いたんですが、なんと真狩村ではそのようなものは作っていないとの回答でした。

都市計画を作らない自治体なんてあったんだ!?とシンプルに驚きましたが、どうも自治体がすべて「都市計画区域外」の様子。実はこの「都市計画区域外」の土地って、DIYする人には結構狙い目なんです。このエリアだと、一定の大きさ以下の建築物でしたら建築許可なしに建ててもOKなので、よく家を自作する人が探していたりします。ただし、そういう場所は電気も水道もなかったりするので、注意が必要ですが。

なお、今回対象の土地はどう見ても接道義務を満たしていませんが、接道義務は都市計画区域内での話なので、今回は関係ないかと思います。ただし条例によって変わるので、本格的に建築物を建てたい場合はしっかりと自治体に確認する必要があります。今回の場合は後述する理由により、断念したのでそれ以上調べていません。

とにかく自由度は高そうです。詳しく調べないと断定はできませんが、小さな小屋を建てる土地が手に入るだけでも楽しそうです。ということで、百聞は一見にしかず!早速遠路はるばる原付きを飛ばして現地を調査してきました。

ゼロ円なのには理由がある

現地のすぐ近くの様子。羊蹄山が綺麗に見える。

調査した日はきれいに晴れてとても気持ちが良い日でした。地図を頼りに近くまで行ってみると、ブロッコリー?なのかわかりませんが、とにかく畑が近くまで広がっています。

対象となる周囲がすべて別の人の土地に囲まれているので立ち入ることはできませんので、なんとか行ける範囲から確認を試みました。

なお、一応ですが、「他人の土地に入ってはいけない」というのは基本ルールとしてあるんですが、田畑などの明示しなくても分かる場所を除き、立入禁止の看板や通達を出していないかぎり、不法侵入に問うことは難しいようです。大体土地の境界がどこかもわからないのに、「俺の土地に入るな」というのは無理があるので。なので、立ち入っても訴えられる可能性は低い……のですが、下草が多いのでそもそもあんまり入る気がしません。

なお、土地の持ち主の場合は、他人の土地であっても通行する権利がありますので、今回の土地を引き取った場合は移動できます。

んで、見てみたんですが……。大体以下のような状況のよう。

  • 完全に森。樹種は遠目ではわからないが、白樺林(伐採されたあとに一番先に生える樹なんです)ではないので、相当時間が経っているよう。

  • 草刈りもしていない?

  • 土地はかなり傾斜しているように思える。国土地理院の地形図を見ても斜面地であり、ある程度の大きさの建築物を建てるなら土木工事と法面処理が必要そう

  • 対象とする土地を直接確認したわけではないが、周囲の土地に境界杭が見当たらない。杭が無くなってしまったのかもしれないが、そもそも測量もしていないのでは

  • 周囲の道は全く見当たらない。区画図で道っぽく書かれている細い区画も草木に覆われており、資材を運び込むのにも車などは使えない

という感じでした。区画の外側の土地なら、まだ木を伐採して車で運び薪にするとかもできそうですけど、中心部だと車が入れないのが厳しいです。

また、測量をしていないように思えるのが厳しいところです。以前不動産屋に聞いたのですが、分筆などの手続きには測量が必要なのですが、北海道の奥地になると、そもそも測量するだけでとんでもないお金がかかるのだとだとか。特に周囲に道もなにもない土地だったりすると、ちょっとした探検隊みたいなものになるそうで「測量していない土地は、私も扱いたくないですね」とのこと。プロでそうなのですから、かなり厳しいものがありますね……。今回はそこまで奥地ではないとはいえ、かなりの額が飛んでいくと思われます。

資材を全部手で運んでDIYして小屋でも建てたら良いじゃん。という考えもあるんですが、小屋を立てると(役所の判断にもよりますが)宅地扱いになる可能性があり、そうなると固定資産税がぐんと上がってしまいます。500坪の土地を小屋50坪、山林450坪に分ければそれなりに安くできると思うんですが、そのためには測量が必要になり……。

ということで、現時点の情報でも、まあ、ゼロ円なのには理由があるな……というのがよく分かりました。

これを買う人はいるのだろうか?

今回このゼロ円住宅に土地を出した方というのは、どうも祖父が買ってしまった土地を持て余して出品したようですが、残念ですが、やはり私がゼロ円でもらっても持て余してしまいそうで、厳しいものがあります。

評価額的には固定資産税は免除される……ようにも思えますが、これは実際に聞いていないのでわかりません。ただ、維持費がゼロだと言っても使いもしない土地を持つのはリスクを増やすだけの行為なんですよね。

今回、興味を持って色々と原野商法について調べてみたのですが、北海道は結構そういう土地が多いんですね。原野商法で売られた土地は区画が細分化されており、所有者が代替わりで不明になっている場合も多いので、例えばまとめて林業に利用しようと思っても利用が難しいのだとか。

せめて、山一個単位で持っているとかであれば、まとめて木を切ったりもできるのですが……。

んで、最近だと「外国人に日本の土地が!」見たいな話をする人もいるのですが、こういうのを見ていると、外国人が次のターゲットになっているだけでは?なんて思ってしまうんですよね。

むしろ、買ってくれるだけ良いかもしれません。ほぼババ抜き合戦となっている土地の場合、例えば今回サイトに上がっている土地なんかを50万、100万で買ってくれる外国人がいたら、死ぬほどありがたいわけですから。(その場合、知識のない人に損を押し付けているわけで、こんなこといつまでも続かないぜ!という気にはなりますが)

まあ、それはともかく、今回ご紹介したように、真狩村はかなり地理的にはポテンシャルのある土地だと思っています。今回は厳しいですが、例えば平地にたつ家が売りに出ていたら、買って改装して貸家にするのも良いかも知れないな……と考えて街を後にしました。

以上、原野商法とか土地取引について色々と考えた一日でした。

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