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帰り道

仕事帰り、映画を見て帰った。

夜の10時半、空気がとても澄んでいた。

最寄りのバスを降り、キノコ帝国のクロノスタシスを聞きながら空を見上げると

月が綺麗で、歩みを止めた。

空の7割を雲が覆っていたが、月はその隙間から見えたり、隠れたりしていた。

息を呑む、月を見て。

前日友人とカラオケに行き、クロノスタシスを歌ったから気分良く口ずさむ。

口ずさむというか、もう声に出てた。

その間も目線はずっと上を向き、月から目が離せなかった。

ふと、最近できたマンションを見ると
男の人がベランダで煙草を吸っていた。

歌ってるのバレたかと一瞬ヒヤッとしたが
夜だし関係ないやとノリノリで歩く。

角を曲がり、まだ月を見る。

雲に隠れたり、出てきたり。

ああ、綺麗だな。

涙が出そうになった。
月を見て感傷的になるなんて、本当に自分の感性が大好きだ。

この綺麗さを誰かに伝えたいと思ったが、
伝えたくないとも思った。

伝えて、言葉にした瞬間
これは言葉で言い表せる程度のものだと思ったから。

何事も言葉にして伝えられることが、美しく、素敵なことだと思っていたが、最近はそうでもないかなと考えが進化した。

言葉で言い表せない、言い表さない。

それがまた美しいということなのかな、と。

そういう自分の感性とか、大切にしたい。

二つ目の角を曲がる、家はもうすぐそこ。

歩みが更に遅くなる、家に帰りたいけど帰りたくない。

まだ、今日の月を見ていたい。

秋の始まり、空気が、夏より軽く澄んでいる。

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