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GUMができるまで

*『GUM』とは
某グ○ーンガムと同じ大きさの本を作ろう!と思い立ち、小林一茶の俳句を100句選び、季節順に1ページ1句収録した糸綴じ上製本を作りました。

いちばん奥がG○EEN GUM。ちょっとだけ大きい

本を作る過程を記録してみました。

本文をレイアウトする

印刷用のデータを作ります。今回はA3ノビサイズにページをだーっと並べてトンボをつけることに。縦書きで、ページをめくった時に見えやすいよう俳句は下揃えにすることにしました。両面印刷なので位置合わせもぬかりなく。持ち上げた下側にだけ俳句が見えるように組んだので、多少混乱しながら配置していきます。

本文紙を切りだす

印刷所から届いた本文紙をトンボ(画像上・右端のガイド線)に沿って切り離します。
ほんらい本のページは畳んで効率よく切るように面付けされていますが、この本は本文紙が幅20ミリ・長さ140ミリと細長く、1ミリずれてもやりなおし、シビアな仕上げが待っているので、1枚ずつカッターで切り離しております。

細長いところは捨てる部分

こんな感じにカットしてページ順に並べます。今回はノンブルがないので、うっかりバラバラにすると詰みます。

折る前の状態。真ん中で折って1枚が4Pになる

先頭から終わりまで、ページ順に並べ終わったもの。

折丁を作り綴じ穴をあける

丁合という

糸で綴じるための下準備をします。
2ページ一組になるよう折り重ね、27組の折丁を作ります。
今回の本文紙は厚い(アラベール200㎏)ので一枚ずつ折って重ねました。
ここでも順序を間違えないように置き方など気をつけます。

順番を取り違えないように注意

折丁の背に二箇所印をつけて切り込みを入れ、綴じ穴を開けます。
印をつける→カッターで切り込みを入れる→目打ちで内側から穴をしっかりあける
ひと折ずつこの作業を繰り返します。閉じ穴は気持ちしっかり開けておかないと、綴じの作業がやりづらいので、重要です。はしょらずここも一折ずつ作業します。

糸で綴じる

見本は目立つピンクのボタンつけ糸で

折丁を紙帯でまとめ、重しをして一晩置いた後、いよいよ糸で綴じます。
製本用の糸は市販されている物がありますが、糸が本体に対して太すぎると、背が分厚くなり、不格好です。
ここではほつれ止めに蜜蝋でしごいたタティングレース糸(細)を使用しました。

今回は綴じ穴が二つなのでケトルステッチという技法で綴じています。

ケトルステッチ

折丁を下から上に積み上げていくことになるのですが、上の折丁のなかを通った糸が背に出たところで下の折丁を綴じた糸にからげ、上にひきしめます。内側から外側へ出すので左側なら左外へ、右側の穴の場合は右外へ針を抜き、上に重ねた次の折丁の背に針を通します。この繰り返しですべての折丁を綴じていきます。

糸綴じが終わったら前後に見返しを貼り、背固めをします。紙帯を巻いてずれないように固定、でんぷんのりと製本用糊を混ぜたものを塗り、重しをします。

さらに補強のため、今回は背に薄手の楮紙を貼り、その上からクータを貼ります。

楮紙を貼った
クータを貼った

※クータ 折って貼り合わせた筒状の紙。背表紙と本文の背の間に貼り、本文の背を保護し、本の開きをよくする役割がある

本文と表紙を貼り合わせる

細長い本なので、表紙用紙もボール紙も細長い。表紙のタイトルはシルクスクリーンで1枚ずつ刷りました。

紙は「ほそおり」ジェードグリーン

表紙の芯材となるボール紙を貼り、四方をくるみます。

表紙の溝・背に製本用糊をつける→見返しに糊をつける の順番で表紙と本体を接着、重しをかけて一晩寝かせます。

函をつくる

ガムの外装にあたる函を共紙(表紙と同じ紙)で作ることにしました。あれこれ計測して紙をカット。表面にあたる部分は表紙と同じシルクスクリーン印刷しておきます。

のりしろを考えて端を残す

入り口は補強のため二重にしております。
これをこう折って…

端と底の処理をしたら完成です。

ほぼぴったし、蓋なしのスリーブケースになりました。

中を開くとこんな感じです。

そもそもなぜ小林一茶の句集なのか?
ガムは携帯するもの、持ち歩いて道端やどこかしらでふいに口にするもの、というイメージがあります(ゴミと思い出は家に持ち帰ろう)。
「ふいに口にするもの」、それは一茶じゃないか。
『雀の子そこのけそこのけお馬が通る』『やれ打つな蝿が手をすり足をする』『涼風の曲がりくねってきたりけり』や、一茶の句は折節にふと心にのぼる、堅苦しさでなく、すっと思い出されるような句風です。
ふと思われる、思い出される。それは俳句の重要な美点のひとつです。
持ち歩いてふと開けるような本が一茶の句集だったら。

本の作りとしてはガムの形となるよう、厚みを考慮しなければなりません。めくりやすさと丈夫さも欲しい。本文紙をアラベール200kgとしたのはそのためです。もうひとつ、ツルツルした紙はなんだか似つかわしくないなと思い、表面に風合いのあるアラベールを選びました。

表紙のほそおりはエンボスの模様が和風すぎず洋風すぎず、色合いもシルクスクリーンの白がよく映えるジェードグリーンを選びました。グ○ーンガムですから、緑っぽくないとね。

ケースはそんなわけで、芯のない単なる紙の箱なのでヤワですが、(ためしに貼り箱も作ってみたが全然ガムっぽくなくなってしまうので却下)オマケと思っていただければ。

『GUM』が出来るまででした。BOOTHに展示中です。時折在庫が発生しますが、材料が尽きたら(もうじき)販売終了になりそうです。 ↓


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