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性なる酒場の挽歌

「終電無くなったな」

「んあ、そして酒もない」

「酒は頼めば出てくるだろ」

「キャバクラ行くか?」

「行かねえよ」

「斎藤がアフターでクラミジアもらってきた話、まだ信じてんのか?」

「ちげーよ、カノジョいるだろが」

「あー、あのキス魔の」

「言うな」

「いつだったか、間違えてキュウリとキスして、『ねえ、よだれ白いよ、病院行きな』ってカマした女だろ」

「あのときは俺が病院に行きたかったよ」

「あーあ、俺はご無沙汰だからなあ」

「だからあのとき絶対離すな、って言ったじゃねえか」

「どのときよ」

「高校のとき」

「あー……」

「ほら、初めてのお泊りデートで腕枕までは持ってきたもののどうしたらいいかわからないでガマン汁で脱水になりかけたって」

「言うな」

「あれは傑作だったなあ」

「いま思えば若かったんだよ」

「そういえばあの子はどうなんだ?ほら、職場の後輩の」

「あー、『ミラバスのシャワーヘッドをアソコにぶち込んでみた』ってYou Tubeにアップして即BANされたバカだろ?」

「やっぱ違うのかな」

「何が」

「感じ方が」

「知るかよ。『先輩、私、You Tubeやってるんでチャンネル登録してください』って、どの口が言うんだよ」

「下の口だよ」

「ふざけんな」

「じゃあ、あの、最近インスタでやり取りしてる子はよ?」

「ああ、中学の先輩な。ありゃー、Twitterで貢ぎ豚3匹飼ってるよ」

「マジかよ」

「言っても、ハーゲン食べたいときに谷間晒してPayPayでギフトでチャージするとか、それくらいらしいけど」

「昔だったらそれで生活できただろうになあ」

「森高千里の『私がオバさんになっても』のYou TubeのURL送ったらブロックされたよ」

「それはフォローできないな」

「あーあ、なんか出会いほしいなあ」

「そういや、前飲んだときに付き合ってた子は?」

「キスしたときに錠剤をベロで押し込まれて殺されかけて別れたよ」

「ずいぶん積極的だな」

「いい言い方するじゃねえかよ。酒に混ぜると色が変わるんだよ」

「世の中うまくできてるな」

「本当に」

「……じゃあ、酔っぱらいの俺たちに」

「乾杯」

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