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My favorite 100 #28 バスルーム

はじめまして、こんにちは、なぁこと申します。
2021年は「継続していく」ことを目標に掲げ、毎週ただただすきなものを紹介していくという連載を年始からはじめました。もはや毎週でもなく、書き方すら変わってきているけど気にしない。すきなもの多すぎて毎度テーマとっ散らかってんな~と思いつつ、つづけるのが大事!というスタンスでやってます。
ランキングではなく、リストから気分でピックアップしてテーマを決めております。
このnoteを偶然見つけ、読んでくださった方のなかに、おなじものがすき!って方がいたらうれしいな〜!という気持ちで更新中です。

My favorite 100 #28 バスルーム

秋が仕事を放棄した昨今、いかがお過ごしでしょうか。
先々週くらいまで半袖を着ていた記憶があるのだが、今週はもうヒートテックまで装備する勢いで冬を感じる。夏と冬がぶつかっちゃうなんて聞いてない。わたしは夏がゆるゆると失われて、いつのまにか忍び寄っていつのまにか移ろっていく秋のあいまいさがだいすきなのだけれど、体感としてのそのあいまいさを長く楽しむことは最近ではむずかしいみたい。
だけどたしかに秋はあった。夜のにおいだとか風の手触りだとか。あまりにも早く通り過ぎちゃうから、その感覚を見失わずに掴まえつづけたいものです。
だけどこんな季節にはお風呂がとても染みる。
わたしはバスルームが世界でいちばんすきな場所だと思う。身体的にも精神的にもあれほどむきだしのじぶんを解放できる空間はほかにない。
バスタブに浸かっているとき、いろいろなことをかんがえる。
今日あったこと、これからあってほしいこと、あのときのわたしの感情、誰かの気持ち、いつかの遠いむかしのこと。くだらないこと、ちょっと小難しいこと、いま脳内を占めていること。推しのこと、気になっているマンガのつづき、書いている小説のタイトル。なにか気がついたりわからなかったり、迷ったり惑ったりするけど閃いたりもして「わたし天才!」って言う。
バスタブに浸かっているとき、いろいろなことをする。
脱衣所の灯りのみにして電気をつけないのでキャンドルを焚いてみる、気になっているところをマッサージしてみる、ウエストのお肉がちょっと減ったかもとか増えたかもとか一喜一憂する。じぶんにインタビューする、それに答えようとして思考が整理される。ふわっと浮かんだ歌を小声で歌う、リバーブがかかる。妄想。泣く。水のむこうでゆらゆらと揺れるからだの線をずっと眺めている。頭までざぶりとお湯に沈んでみる。肌と水の境界が存在しているのかしていないのかわからなくなる。わたしは自由かもしれないと思いながら、だけどなにとも溶け合えないとも思う。
スマホは持ち込まない。とてもしずか。しずかなほうがいい。あと危ない。落とさないように気をつけようって思うとなぜか落とす。わたしはたぶんそういうひと。本も持ち込んだことがない。おなじ理由。だけど、もしかしたら自分以外の感覚が、バスルームのなかではいらないのかもしれない。

でも、お風呂じたいがすきだから、温泉や銭湯に行くのもすき。そういうときは誰かと入るとたのしい。大きな湯舟でなにも考えずに文字どおりきっとのびのびしている。ここ2年くらいは行っていないけれど、毎年どこか温泉には旅行していた。露天風呂いいよね。寒さの深い季節でも風がすごく気持ちいい。夜はもちろん朝もぜったい入っちゃう。わたしは永遠に寝ていたいくらい二度寝や寝坊がすきだけれど、このときばかりは早起きをしてしまう。
また、まだ陽の残る夕方に入るお風呂は、ちいさな罪悪感と優越感が混ざり合ってからだをめぐるそのかんじがくらくらしてたまらない。そんなわたしを誰も知らないのもいい。誰も知らないけれど、そのずるさとここちよさを隠すようにわたしはこぼりと水に沈む。耳に届く、めまぐるしく動いている世界の音が輪郭を失って、どこか遠くに感じられるのもとても、いい。

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