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【考えてみた3】アニガサキ2期も名作すぎた件(7〜9話まとめ)

第7話「三船さんの中のときめき、見せてあげて」

【"適性主義"からの脱却】

三船栞子の回。姉の薫子がラブライブに出場し優勝を果たせなかったという回想シーンから始まり、薫子が教育実習で虹ヶ咲に着任。栞子がスクールアイドルフェスティバルに携わってることを知るシーンから始まります。
私の「適性」はみんなを応援し、サポートすること。その理由がよくわかる7話です。正しいかどうかはさておき、薫子がラブライブ予選敗退したことは意味のない努力であり、悔しい思いをするくらいであればやらない方がマシ、適性がある人間だけがラブライブに出られる、という思考があるのは過去の経験によるものでした。
そこに対してニジガクのメンバーは「できることを大切にするだけでなく、好きな気持ちには嘘をつかないこと」を伝えます。そして薫子の「後悔してないよ」という言葉。
応援してくれる人あってこそ、ステージの上で輝けるし、見てくれる人はたくさんの幸せを受け取れる。そこに気づいた栞子はステージでパフォーマンスすることを決意します。

ここに、栞子の成長が垣間見えます。言うなれば、他者理解の心でしょうか。価値観というのは自分のものさしだけで計れるものではない。栞子は今までも頑なに自分の尺度でスクールアイドルというもの向き合ってきました。薫子が予選敗退をして以来、パフォーマンスを見ているときも、実行委員長を引き受けたときも、QU4RTZのライブを初めて見たときも。
でも、今回メンバーの思いを聞き、薫子の本音を聞いたことをきっかけとして、もしかしたら「適性」主義の栞子はニジガクのみんなが言う「好き」を貫くことの大切さを理解したのでしょう。

ロリ栞子

【栞子のパフォーマンスに見られる成長】

パフォーマンスも最初は無表情というかクールに歌い上げる感じでしたがサビで笑顔になったのも、栞子の過去や気持ちの変化が読み取れます。歌詞もそこを意識しているのでしょう。「踏み出せない、はっきりしない気持ちでいれば、大好きな気持ちに嘘つくから。」というサビ前のセリフは特に顕著ですね。
時計が登場するサビ前は、栞子の正確で几帳面な性格が現れていると言えますね。表情もダンスも淡々としている感じで、まさに適性主義の栞子を現しているかのようです。幼い頃の記憶を辿るかのように図書館でいろいろな衣装や髪型をした栞子が次々と現れては消え、地球儀を前にした過去の自分(?)を発見し、それを客観視するもう一人の栞子。地球儀を回すと次は別の場所に移り変わります。左手で地球の自転の向きと同じ方向に回しているので、時が現在に進んでいくことを示しているようにも見えます。
そして彷徨う栞子が本の中に光る羽と鍵をみつけます。ここの彷徨うシーンは、今までの適性主義だった栞子がニジガクのメンバーと出会ったことで、葛藤し前に進もうとする様子が見受けられます。
時計を鍵で回すとサビに入り、ステージに光が差し込みます。表情も増え、明るさを感じます。最後は、図書館で目が覚めた栞子はやりたいことを見つけ走り出す。そして曲は終了するという流れになります。

笑顔で歌うしおってぃー


ラブライブシリーズでは、成長してから歌のパートが始まるというのが多い印象でしたが、成長しながら曲が進んでいくというのは今回初めてなのではないでしょうか。そういう新しさを感じたのは栞子ならではなのかもしれません。

ニジガクの良さは、キャラクターの成長もですが、「好き」という感情を否定せずに本気で向き合えるところや、自分の中の「ときめき」という気持ちを信じ表現することに重きを置いているところにあると思います。それゆえに大会に出ることが全てなのではなく、色々な出自を持った個性的な登場人物を様々な方法で成長させ、それを全力で表現できる強いパフォーマーを育てる環境が整っているのが強みと言えます。それは、どの登場人物が欠けても達成できないことなのです。

第8話 「これが同好会の中で私のやりたいこと。スクールアイドルのみんなと一緒に叶えたい夢。」

【侑と9人のスクールアイドル】

高咲侑そして9人の成長の回。「9人のニジガク」としては一旦クライマックスと言えるでしょう。第二回スクールアイドルフェスティバルの開催ができるにあたり、侑は特別な曲を作りたいという気持ちが強くなっていきます。みんなの素敵なところをどう表現し、どう喜んでもらえるかひたすら悩みに悩み抜く侑。でも、侑が作った曲なら9人で歌って踊れるだけで^_^嬉しいし自信が持てると言う9人。こんな関係性、素敵すぎませんか?
そして侑に自信を与えるミアちゃん。その会話の中で侑は、パフォーマンスや音楽だけでなくメンバー全員が自分を表現しているその姿にときめいていたのだということに気づき、その中で今ここにいる自分を伝えることこそが自分のトキメキなのだということを理解します。

侑のやりたいことや叶えたい夢を決して否定しない歩夢ちゃん、そしてニジガクメンバーの関係性も素敵ですね。
裏方に徹する主人公なのではなく、自分の手でスクールアイドルのみんなを輝かせたい。ミアとの出会いはもちろん、音楽科に転科したからこそ、練習や勉強を重ねた成果としてピアノを演奏することで、スクールアイドルたちを最高の9人にさせる。高咲侑こそ最高のプレイヤーなのでもあると思います。私たちの大切な仲間が作ってくれた曲、それがTOKIMEKI Runners。まさにときめきの中を走っている9人のスクールアイドルたちというわけです。

「どこ行きたい?」「愛ちゃんのクラスの出し物!」

【トキメキの言語化】

階段で座る侑を発見し、声をかけるミアちゃんというシーンでは、的確に事実とアドバイスを伝え、言語化するまで待つミアちゃん。
そしてメンバーの名前を、今を起点に回想するかのように、A・ZU・NA→Diver Diva→QU4RTZ の順番に一人一人の名前を丁寧に呼ぶ侑。A・ZU・NAが先週の放送で披露したInfinity! Our Wings!!が聞こえたのをきっかけとして、侑はトキメキを言語化することができます。
私は"スクールアイドルの"パフォーマンスや音楽にときめいていたのではなく、"メンバー一人一人が自分を目一杯表現するみんなの"パフォーマンスにときめいたのだということに気づかされます。なんでもないシーンではなく、みんなのパフォーマンスによって気づくというのが、人間味ある侑らしさなのかもしれません。「今ここにいる私を伝えたい」という言葉からもそれは伝わってくるでしょう。目に光を宿し、曲が完成させることで、「あなた」から1人の「高咲侑」という存在へ昇華させていくということです。
主人公キャラって視聴者自身を映し出すための鏡っていう印象ですが、それに加えて主人公を通してスクールアイドルに魂を吹き込むところにニジガクのよさを感じます。

トキメキはどこー?

1期13話は雨天中止かと思ったら、奇跡的に最後の一曲をパフォーマンスできることになり、侑へのサプライズのような演出でメンバー一人一人が侑への感謝の思いを伝えるという形でしたね。一方、今回は2期に入って出会ったみんなに対して感謝を述べていますし、同好会として一歩(あるいはもっと)成長した9人がより高い次元でのレベルで感謝をしていることも特筆に値するでしょう。一人一人が順番にコメントしてくシーンが一番泣ける…笑
2期での9人曲は、3rdライブで矢野妃菜喜がTOKIMEKI Runnersでピアノを弾くシーンがそのまま再現されていたことに気づいた視聴者も多いのではないでしょうか。
さらにステージに立つ9人と対峙するかのように、バックステージにはピアノを弾く侑という構図の再現。そして客席のサイリウムで虹を作る演出(ちょっとAqoursっぽいけど)。
何から何までラブライブの細かな演出を再現していて、あの光景を思い出してしまいました。キャラクターというのは声優が魂を吹き込むものが常識とされていましたが、今回は高咲侑に矢野妃菜喜が憑依している新しい感覚でした。
高咲侑が人間味を帯びた感覚がするのも、そのためでもあるでしょう。主人公のやりたい夢をスクールアイドルのみんなと一緒に叶える存在として、主人公がみんなを動かしていく。

第9話「なあ、その腑抜けた目で周りをよく見てみろよ。」

ミア・テイラーの回。R3BIRTH誕生秘話です。
ミアと嵐珠が成長するだけでなく他者理解を深め、自分の本当にやりたいことに向き合うお話です。

【嵐珠からの自立】

「これは私の曲じゃない。」
ミアは今まで嵐珠のために最高の曲を作ることを生きがいとしていました。テイラー家の娘であるミア・テイラーとして、曲を作ることが自分の存在価値であり居場所であると信じていたミアにとって、「最高のプレイヤー」である嵐珠とは楽曲を提供するだけのビジネスパートナーでした。そんなミアは嵐珠に最高の曲を書き上げ、帰国を阻止しようと考えますが、あっさりと断られてしまいます。

そこで手を差し伸べようとしたのが璃奈。説得しようと試みて、一度手を叩かれてしまいますが、そこで屈せずにまたミアの手を取る璃奈は本当にかっこよくて心を動かされましたね。
ミアちゃんがりなりーのことを「璃奈」と呼んでいるところを見ると信頼関係ができていることを暗示しています。自分に自信を持てなかったりなりーが、スクールアイドルと出会ったことでこんなにも変われたし、ミアちゃんに手を差し伸べられるようになったことはとても大きな変化です。
苦しそうなミアを心配する璃奈。ミアが幼少期に経験した歌うということは、家柄や周囲からの期待、そんな重たくマイナスな感情でした。でも、同好会ではそんなものは不要で、好きという気持ちさえあれば夢を追いかけることができるのです。

「これは君の曲じゃない。」
テイラー家の娘であるミア・テイラーとしてではなく、ひとりのミアちゃんとして、歌ってほしい。そうすることで、「今ここ」に居場所を作れる。スクールアイドルとして夢を追いかける自分を失わないでほしい。そんな願いが、璃奈の差し伸べた手や表情に込められているようでした。
こうして、ミアちゃんは本当にやりたいことを見つけ、夢を諦めるのはもう終わりにします。歌を歌うことが好きだったけど、自信を失い、目を逸らしてきたミアが、同好会と出会ったことで、手を伸ばし夢を掴むことができるのではないかと思うことができたわけです。「僕は夢を掴むよ」。

夢を掴んだからこそのミアちゃんの右目?

一方、歌もパフォーマンスもプライドも努力も、完璧な嵐珠が本当の夢をあきらめていいのか?嵐珠はミアちゃんの言葉により、考え直します。ミアは嵐珠に曲を作ってくれるビジネスパートナーという関係だったからこそ、このセリフには驚いたことでしょう。「いやお前かーい」って笑
でも、こうしてミアちゃんは嵐珠に依存することはなく、自分のやりたいことに向かって突き進むことを知り、嵐珠もミアちゃんのように好きな気持ちをあきらめずに前に進むことを決意することになります。

【仲間の大切さにふれる嵐珠】

手を伸ばしても届かないと思っていた本当にやりたいことを、手を伸ばして夢を叶えるということ。タイトル回収です。
やりたい気持ちさえあれば、それを受け入れてくれるのが同好会。メンバーのみんなは嵐珠にそのことを教えてくれました。

意味深にも、中央には嵐珠のアクスタが。

嵐珠が求めるスクールアイドル像は、ファンのみんなに「与えるだけ」の存在であること。そこに馴れ合いや支えは要らない。そう考えていた嵐珠は、ソロを追求して新しいスクールアイドルの形を模索する虹ヶ咲の同好会に興味を抱き、来日します。ところが、ニジガクのみんなは嵐珠が考えていたソロアイドルとは違うソロの形を作り上げていたのです。仲間同士で信頼し合い、ユニットや全員でも最高のパフォーマンスを届ける。そんな中に、いつも一人ぼっちだった嵐珠が溶け込めるのか不安になってしまうわけです。「同好会とは違った路線」を進むことを決めた嵐珠の気持ちがここで明らかになるわけです。8話のラストで悲しそうな表情をしていたのもそれが原因でしょう。嵐珠は分かってしまったわけです。

嵐珠はずっと、人の気持ちが分からないのであれば一人ぼっちでいるしかない、という呪いをかけていました。過去に囚われ、夢に手を伸ばせずにいたのです。でも、ニジガクのメンバーと出会って、「嵐珠のおかげで」変われたり前に進めた人もいました。そのことを言葉にして感謝されることで、ニジガクメンバーとの絆を初めて認識できたのだと思います。そんな素敵な関係が目の前にあるとは知らず。嵐珠の帰国を阻止するために、ニジガクのメンバーはここに集まりました。それを絆と言わず何と呼ぶのでしょうか。1人なんかではなく、嵐珠にはもう立派な仲間ができていたのでした。

各曲で登場する栞子とミアの鍵、嵐珠の鳥籠にもちゃんと意味が。

そして、ビジネスパートナーではなく、ライバルであり友達でもある関係を作ることができたのです。ひよっとしたらミアだけでなく栞子も同じなのでしょう。過去に囚われて今の夢を追いかけられなかったけど、諦めることをやめた3人だからこそ、ここから始めることができる。まさにRebirthということなんですね。

ここまでご覧いただきありがとうございました。
何回見ても泣けるニジガク2期。続きが気になります!
12人と1人のニジガクメンバーが揃いましたね。10話以降はどうなるのでしょうか?

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