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今まで生きてきた中で、いちばん美味しかったものを作った。

motoharareico

10月29日(木曜日) 15:00〜18:00
学生22人が自宅のキッチンで「今まで生きてきた中でいちばん美味しかったもの」を作る材料を用意して、zoomで参加。

自分で作ってみたら何かわかるかもしれないと、昨年から学生さんたちと調理を始めた。いつも家族が使う台所には、塩、醤油、酒、味噌といった基本的な調味料があり、冷蔵庫にはジャガイモやタマネギ、にんじんと常備食材も揃っている。学食の隅にある簡易キッチンへ食材を持ち込んだ去年とは、大違い。去年は、3〜4人1組で作って食べたから、調理も味も一緒に体験した。今年はコロナ禍で同じ場では作れない。

zoom画面に、学生が集まってきた。それぞれの調理時間は、20分〜2時間弱と差がある。17時頃にみんなで「いただきます。」をしたくて、時間がかかる学生から順番に「何を作るか?」インタビューした。

「弓岡さん、何作るの?」
「リコッタチーズケーキ です。」
「2時間くらいかかるんだよね?」
「バターも自分で作るんで。」
「バターも?!そりゃ、早く始めてください。」

「坂野さんは?」
「幼稚園の時、お弁当に入ってたスィートポテト。今日は入ってるかな?ってドキドキしながらフタを開けたんです。」

22人が並ぶzoomの画面を見ている私は、ボチボチと声をかける。
「美桜さん、何してるの?」
「や、もうできちゃったんで、犬のご飯作ってます。」
数分後、画面ではりんちゃん(チワワ)がご飯を食べている。

「今日は、八木さんと、新間くんが回鍋肉だね。」
「八木さん、回鍋肉の素、使うの?」
「新間くんは何で味付けすんだっけ?」
「甜麺醤と、豆板醤。」
前回の授業で、おいしいものを食べるとかに価値が見出せないから完全食でいい!と言っていた新間くん。調理終了後は、もう○○醬は使わない、、と。

山下さん。
「北海道で食べたサーモンといくらの親子丼だよね?」
「スーパーで買いました。」
「サーモンはどこの?」
「チリ産です。」
「いくらは?」
「国内産です。」
「親子じゃない!?」

山下さん

村上さん。
「できちゃったんで、他に何か作っていいですか?」
「何、作るの?」
「鶏肉あるから炒める。あと、なんか汁もの。」
「作るの、慣れてんだね。」
「一人だと、自分で作るから。」

サツマイモのスィートを作る坂野さんの様子がおかしい。
「坂野さん、何してるの?」
「さつまいも、裏ごししてて。」
「もう、疲れた!」
実食の時、
「こんな作るの大変なのに、今まで私、一口でパク!っと食べてたんですよぉ。」

もう一人、お疲れの様子の学生がいる。
「めいちゃん、どうしたの?オムレツだよね?」
「もう、3回目なんです。焦げちゃったけど、これでいい!疲れた。」
「お砂糖、たくさんだから焦げやすいのかもね。」
「1回目は、スクランブルエッグになっちゃった。」

孕石くん。
「さわやかのハンバーグ作るんだよね?」
「オレ、何にも作ったことないんで。」
「なんで3つ?」
「や、ミッキーみたいにしようと思って。」
あー、だから大きいの1つと耳用に2つね。

「松浦さん、おわりそう??」
「はい、なんとか。さっき、餃子の具を炒めちゃったんです。」
「え?なんで?」
「自然にそうしちゃった!やり直し中です。」

17時頃、みんなで「いただきます。」
と声かけた瞬間に、画面でみんなの作ったものが見えなくて、
「あー、みんな写メ撮っといて〜」と叫ぶ、私。

ぶじに、終了。
食べて分け合うことはできなかったけど、なんだかとても良い時間だった。

ここからどうなるか?と言うと、「わたしの口に刺身が届くまで」「食べるって何?」「今まで食べた中でいちばん美味しかったものを調理」を経て、それぞれ気付いたこと、気になったことを深掘りして、2週間後に発表します。

*思ったこと、いろいろ。

初めてキッチンに立った孕石くんが作ったハンバーグの盛り付けがかわいくて、一回り年下の友人宅へ呼ばれた時のことを思い出した。

孕石小


彼女んちの食卓は、テーブルにはガスコンロが埋め込まれていて、70歳を過ぎたお父さんが、お好み焼きを焼いてくれた。美味しい、楽しい。満腹で具材も終わりかけた頃、40歳を過ぎた私の友達は「お父さん、亀やって!」と言った。
「???」
残った水溶き小麦粉に砂糖を入れて、お父さんがスプーンで鉄板に亀の絵を描く。少し焦げ目がついた頃、残りの溶き粉をクレープのように亀の絵にのせると、こんがり茶色の亀の絵がついたクレープが焼き上がった。彼女は小さい頃、夕飯がお好み焼きだと何が嬉しかったか?というと、最後にお父さんの描く亀がついたクレープ。

ただ、食べるだけなら必要ない。けど、嬉しい。
そういうことってある。
なくてもいいけど、あったら嬉しい。人は自分がしてもらったことがないことは、なかなかできない。孕石くんは家族にうんと嬉しいこと、いっぱいしてもらったんだろうな。

それから、スコーンを作り終わった植松さんが、「間食って生きるためじゃなくて、本当はなくても大丈夫。」と言った。昔は激しい労働をしていた農民が食時間の空腹を満たすために八つ時(今でいう午後3時)に食べていた間食が『おやつ』の語源だそう。今、そんなにお腹が空いていなくても私たちは、おやつを食べる別腹(べつばら)を持っている。

いつだったか登呂遺跡で、農家の増田さん(78歳・歴史研究家でもある)と作業をした時、「いのしし最中」を食べて、休憩した。

「おれ、最中って名前は知ってたけど、どういうもんか知らんかったよ。お菓子なんてなくて、芋食ってたから。」
「ケーキ、食べたのは21歳んときだ。」(58年前だね)
「おいしかった?」
「うまかったよ。」

あと、私は人んちの台所が好きだと思った。同じ場所にいなくても、時を一緒に作ったら、一人じゃめんどくさいことも楽しくできそうだ。


*写真は、ゴミ。自宅にあった調味料や、冷蔵庫にあった食材を使ったので去年よりは少ない感じがします。

ゴミ 2


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motoharareico
陶芸家/美術家。1963年富士市生まれ。Royal College of Art MA Ceramics修了(ロンドン)。「うっちーの英語食堂」(2016~17)に出演。2018年「登呂で、わたしは考えた。」出版。https://www.motoharareico.net