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JR東日本運賃改定

2024年12月6日、東日本旅客鉄道は2026年3月を目標に運賃改定を行うことがプレスリリースで発表された。内容は運賃の値上げがメインで特急料金などの変更はない。その内容についてみていきたいと思う。

運賃改定の申請について

主な内容

ざっくりまとめると以下の通りになる。
・山手線内、電車特定区間内運賃の撤廃、幹線運賃への統合
・幹線、地方交通線の賃率アップ(約4.7%)
・バリアフリー料金廃止(山手線内、電車特定区間内)
・通勤定期券の割引率変更(6か月)
・オフピーク定期券のエリア拡大、運賃改定
・JR他社とまたがる場合の加算運賃の設定
・東京~熱海間の新幹線と在来線別扱い
この中で特に影響の大きそうなのは一番上の山手線内、電車特定区間内運賃撤廃であろう。ここを詳細にみていきたい。

運賃の値上げ額

まずは幹線運賃の値上げ額を見ていく。
全体平均では4.7%とのことであったが、おおむね200km程度まではその程度の数値になる。601km以上は運賃上昇が変化しないので、601km以上はいくら乗っても一定の値上げ額になる。それをまとめると以下の通りになる。
また、ここからはすべてICカード運賃を基準とさせていただく。切符の場合はすべて10円単位に切り上げとなる。

比較的わかりやすく、距離によって値上げ額がきっちり決まっている。521km以上はどこまで行っても440円の値上げになる。これは幹線なので、山手線内、電車特定区間内は大きく様相が変化する。こちらは区間ごとで大きく変化があるのでグラフで示させていただく。

幹線に比べてものすごい勾配で上がっていることがわかる。わかりにくいので短距離部分を拡大すると以下のようになる。

これでもなかなかわかりにくいので、値上がり率でみると次のグラフになる。

これにするとわかりやすくなるが、11km以上の部分では幹線が概ね5%より少し下、電車特定区間が10%前後、山手線内が20~25%ということになる。山手線内の運賃上昇率はすさまじいが、これは元の賃率13.2円/kmが16.96円/kmになった影響で、単純計算で28%アップとなる。ただバリアフリー料金10円が廃止になった分で3%ほど低下し、結果的に25%程度の上昇となっていることになる。

山手線内の運賃比較

山手線内主要駅(東京、品川、渋谷、新宿、池袋、上野)相互間の運賃を確認すると以下のようになる。

やはり長距離を乗ると相当な値上げ感になる。
並行する路線の運賃を考えると、
東京~池袋:メトロ209円(16分)、JR253円(25分)
池袋~新宿(三丁目):メトロ178円(11分)、JR200円(8分)
新宿~秋葉原(岩本町):都営220円(13分)、JR210円(19分)
渋谷~東京(大手町):メトロ209円(16分)、JR253円(23分)
池袋~渋谷:メトロ209円(16分)、JR210円(12分)
他にもいろいろあるが、実際そこまでの差があるわけでもなく今まで安かったJRが高くなって地下鉄並みになったともいえる。そこで、運賃を直接比較してみることにする。

値上げ後でも15kmまではメトロとほぼ同水準の傾きになった。都区内、特に山手線の内側の移動に関しては地下鉄にせよJRにせよ使いやすいほうを使うのがよいのではというのが結論になる。
ただ15kmを超えると途端に運賃が急上昇し始めるので、西船橋や本八幡といった遠距離は地下鉄への転移が進む可能性もありそうだ。

JR(国鉄)&地下鉄の運賃改定

そもそも、現在の運賃はいつからかということだが、JRになってからの運賃改定は以下の通りになる。
1986年9月1日改定(国鉄最後の改定)
1989年4月1日改定(消費税3%課税:改定率約3.0%)
1997年4月1日改定(消費税3→5%:改定率約1.94%)
2014年4月1日改定(消費税5→8%:改定率約2.86%)
2019年10月1日改定(消費税8→10%:改定率約1.85%)
消費税の転嫁分を除いては38年間も運賃の変更がないのである。
消費者物価指数は1988年が85.00、2024年が107.95なので、1.27倍になっている。この指数には消費税が含まれることから、JR東日本の運賃としては1.1倍なので、15%程度の乖離がある。
一方東京メトロと都営地下鉄だが、東京メトロは1987年以来7回、都営地下鉄は5回の運賃改定を行っている。初乗りと最高額の変化を見ると以下のようになる。
東京メトロ(営団地下鉄) 120~260円→178~324円(24~48%の値上げ)
都営地下鉄 140~290円→178~377円(27~30%の値上げ)
(430円区間は1987年時点では無し)
同じ基準でJR/国鉄(山手線)を計算すると以下の通りになる。
120~440円→160~616円(33~42%の値上げ)
これだけ見ると、20~25%と一気に上がったように見えているだけで水準は東京メトロや都営地下鉄とそこまで変わらないということがわかってきたといえる。 

まとめ

今回のJR東日本の値上げは、近距離で最大30%近くなっておりインパクトは非常に大きかった。一方で山手線内の運賃は地下鉄各線と水準が揃っただけであり、大きな客の逸走はないのではないかと考える。50km程度の中距離でみると10%程度の値上がりとなるが、これも消費税転嫁分を除けば今まで値上げがなかったことを考えれば大きくはないと思われる。
その中距離でみても、二社乗り継ぎとなれば運賃が割高になることから一社で運びきれるJRは強いのではなかろうか。参考までに東京(周辺)~千葉の運賃を比較してみる。
東京(JR)~千葉(JR):659円→715円
大手町(メトロ)~西船橋~千葉(JR):611円→634円
日本橋(都営)~押上~京成千葉:775円
小川町(都営)~本八幡~千葉(JR):731円→765円
小川町は東京駅からはかなり遠いが、あくまでも参考程度ということでみていただければと思うが、千葉を起点に都心方向に乗ってもずば抜けて高いものがあるわけでもなく、あえて言えばメトロ経由が有利だということ程度かと思う。
よって、今回の値上げに関しては比較的妥当ではないかと結論付け、締めさせていただこうと思う。

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