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佐藤新は存在していた
「東西ジャニーズJr. Spring paradise」、通称「スプパラ」に参戦してきた。
約半年前に私が電撃的に沼落ちした、IMPACTorsの佐藤新くんにようやく会うことができた。
彼は確かに存在していた。今まで存在しているとは思っていたが、ふわふわでどこか放って置けない浮遊感を漂わせ、透明度の高い彼をこの目で見るまでは、「この世に佐藤新が自分と同じ世界に存在している」ということを認めていなかった。退所報道が出てからは彼がどのようなことを考えているのか、きっかけもわからず、年が明けた感覚もなく、モヤモヤとゆっくりと、今日までの日数が削ぎ落とされていったように思う。
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3月の大阪は北海道でいう初夏の気温に近かった。歩くとマスクは苦しく、汗ばむ陽気が鬱陶しかった。雪の降っている私の住んでいる町と同じ日本なのか疑ってしまうレベルだった。
約束していた友達と会う。既にライブに参戦していた友達の話を聞く。この時から既に緊張が止まらなかった。心臓がうるさい。言うことを聞かない。あらたくんの見た方がいいポイント、円陣の声はよく聞こえる、大河ちゃんのフープピアスは絶対見て欲しい、椿くんのヘアカラーもかっこいい、、など嬉しい情報で頭がいっぱいになった。朝からほとんど何も食べていなかったのにお腹が空かない。可愛いカフェで食べた、大好きなモンブランも味が全くしない。カフェオレも苦いのか甘いのかわからなかった。
あと1時間後に推しに会う。バンドも好きな私は好きなアーティストに会うことは慣れている方だと思っていたのに、時間の感覚も頭がしっかりと動いている感覚もなかった。
スプパラの曲や衣装など気づいたら1時間はあっという間に過ぎていて、松竹座まで歩き出した。緊張で手が震えた。友達にも伝わっていたらしい。1人だったらどれだけ心細かっただろう。最強の運を持つみなち担の友達に、運と念を注入してもらった。
会場前には友達の友達など、推しを媒体にたくさんの友達ができた。インスタやTwitterでよく見る構図で写真を撮った。終始落ち着かない気持ちが紛れて救われた。持つべきものはオタク友達だと心から思った。
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こういうことですぐに幸せになれる。オタクって本当にアホで最高だ。
席に着く。1列目の1番後ろだった。それでも十分すぎるくらいに近い。近すぎる。肉眼で全然見える。飲んできたブルーベリーは多分効いていない。隣の基担の方と少しお話をして気持ちを落ち着かせる。口から心臓が飛び出しそうっていうのはこのことかと痛感した。
「正門くん来てますね」と基担のお姉さんが私に教えてくれた。斜め後ろに白Tシャツのイケメンお兄さんがいた。正門くんだった。Aぇgroupのメンバーを、初めて見た。気になるじゃんかと心で呟き、前髪を直したり、ペンライトの準備をしたり、双眼鏡を調整したりした。
開演まであと5分。鼓動は通常の五倍のスピードで重圧感を増し、私にこのままだとあらたくんにやられてしまうと警告してくれているようだった。2.3分前に円陣の声が聞こえる。図太い成人男性の声だった。幕の向こう側にいる。震えた。あともうすこし。深呼吸をする。うまく酸素が吸えていない気しかしなかった。
会場が暗転し彼らのシルエットが浮かび上がる。数えると7つあった。向こう側にいる、いるんだと思うと余計に緊張した。幕が上がり、そこにはわたしのだいすきな金髪姿の佐藤新が堂々とセンターに立っていた。
佐藤新は存在していた。
泣きそうになる。我慢する。双眼鏡越しに彼を見る。いつもテレビやスマホで見るあの顔だった。息の仕方を忘れた。見惚れた。
目線の配り方、彼の歌割りではない時の節目、MCの時にはニコニコと、話している人を眺める優しい表情、すらっと長い指や足。
全ての行動が愛おしく、全ての行動は、彼が私に「ここに確かに存在している」と教えてくれていた。
声が裏返ってしまってごめんと手を合わせる姿、生ものだなと嬉しくなった。耳元にはみなとくんと最近開けたと噂の穴に、しっかりとピアスが光っていた。
「PINKy、あいたかったよー!」と、優しく彼らしくこちらを煽ってくれる。もう行動全てが愛おしい。声出しが解禁されたので1番後ろだろうと気にせず声を出す。まだお互いにどこか慣れない、つかめないところも感じるけれど、確かにどこかでは繋がっていたような気がした。
踊らない楽曲では、ハートを片手で作ったり、ファンに撃たれたり、指さしをしたり、全体に手を振ったり、私も振ってもらったという都合のいい勘違いをした。同担には羨ましさと嫉妬と、でも結局可愛い彼が見れるのでオールオッケーと思ってしまうよくわからない色んな感情が一気に押し寄せる。
ファンサ曲以外では「tequila」が楽しみだった。振りがとても可愛い。彼は絶対にテキーラなんか飲まない。カシオレとか、そういう甘ったるい大学生が好んで飲むようなカクテルを好んでいて欲しい。そんな妄想を頭の片隅に、だいすきな黒ナポレオン衣装の彼を目に焼き付けた。
そして友達から絶対に目を離すなと言われた「PINKY」。各々来ていたジャケットを女の人に見立て腰を振ったり押し倒したり、かなり地上波では流せないような様子の彼らを見ることができた。エロすぎた。新くんはジャケットを自分に抱き寄せて立ったまま腰をゆっくり動かしていた。妖艶で、見るには少し恥ずかしかった。今まで何人の女とこういうことを過ごしてきたんだろうと妄想する。気持ち悪いオタクなので。早く映像で見たい。お願いだから円盤化して欲しい。
後半戦はオリジナルの曲が畳み掛けるように始まった。この人たち本当にずっと踊っている。体力お化け。恐ろしい。ジャニーズってすごい。
「Top Of The World」も「COOL DON'T LIE」もこんなにだいすきで、彼らにとっても大切なのにもしかしたら聞けなくなるのかもしれないと思うと,泣きそうな気持ちになった。
彼らがジャニーズに居続けることと決めていたその気持ちに、難しいと言う現実が立ちはだかり、私は何もすることができず、しかしファンを心配させないようにいつも通り全力でパフォーマンスする彼らは、間違いなく強かった。
忘れ物の多いふわふわな佐藤新も、胸の中では譲れないプライドや、アイドルとしての決意があるのだろうと思うと、どんな形であろうと純粋に応援したいと心から思った。
最後の曲は、7人で肩を組み、顔を合わせて歌っていた。楽しそうだった。ニコニコしている彼らを見るとこちらにも温度が伝わって嬉しくなる。目頭が熱くなった。
アンコール終わり全員がはけたあと「また遊ぼうね」と出てきた佐藤新は、完全に遠い過去に面倒を見たことがあると思わせる幼稚園児のようだった。可愛かった。
終演後、しばらく動くことができなかった。夢のような時間は体感でいうと20分だった。約2時間も一緒にいたなんて絶対に嘘に決まっている。佐藤新を双眼鏡越しに何度も何度も見て、確かにいることを実感した2時間がもう遠く感じる。すっぽりその記憶だけどこかへ飛んで行ったしまったみたいだった。
今日の日のために仕事も頑張って、少しでも可愛い姿で会おうと服を新調し、美容室へ行き、まつげにカールをかけた。これらの自己投資も佐藤新がいないと私はきっと怠けるだろう。
推しがいるということは、人生100年と言われているこの時代に少しの希望が持て、目標を立て、飽きずに暇つぶしができているのかもしれないと思った。
次はいつ会えるだろう。どこで会えるのだろう。佐藤新くんが生きていることを実感できてよかった。
早いうちに佐藤新に会いたい。夢でいいからすぐに会わせて欲しい。横並びと言わずに、7人でどんどんやりたいことを挑戦して色んな景色を見させて欲しい。そして微力ながらも応援させて欲しい。あなたの幸せが私の幸せなことに、間違いないから。
素敵な春の始まりをくれてありがとう。千秋楽もおめでとう。
あなたの言ってくれた通り「また遊びたい」気持ちでいっぱいです。
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