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アプリ開発費73億円への揚げ足とりを見て、3000円のパンケーキを思い出した話

京都新聞の記事が話題になっていました。『五輪アプリ開発費73億円「知らなかった」 まるで人ごとの菅首相、開催へ思考停止していないか』という表題の記事です。表題を読んだだけでマスコミ特有の揚げ足取りの記事だと認識しました。菅総理が予算の細部まで事細かに把握しているとは私は思っていなかったからです。そして京都新聞がこの記事を紹介しているツイートについている幾つものコメントに呆れを感じました。

総理大臣の立場は国家の方向性を見据えて方針を決断する役割だと思います。100兆円を超える国家予算をどのような配分でどう割り当てるかを決断します。そのやり取りの中で約73億円という数字は登場したかもしれませんが、細部まで記憶はしないと思います。

100兆だとか何億という数字だから想像しにくいので、規模をそのまま縮小してみます。例えば予算規模1億円の会社であれば、7300円であり、予算規模300万円の家庭であれば219円です。京都新聞の価値観であれば例えば会社のある部署が配布物を7300円で作るのに社長が全てそれを正確に把握しているという話であり、例えばとある家庭で子供が219円の文房具を買うのに親がそれを常に正確に把握しているという話です。この程度であれば一般的にはある程度与えた予算の中で執行者に裁量が与えられる範囲の規模だと思います。完全に揚げ足どりだと感じました。

もうひとつの観点としてコメントに呆れを感じたと書きましたが、それは「約73億円」という数字に対して高いという指摘が出ている点についてです。このアプリは観客の健康管理を目的として外国からの来訪者向けに訪日前から出国後まで持たせるものだそうです。実際に具体的にどんな機能を持たせるかは記載されていません。それなのに価値の判断をどうできるのか疑問です。

約73億円で作られるアプリは「多くの外国人向け」に「健康管理目的」で作られます。外国人にくまなく提供するには多言語展開は必要であり、相当量の携帯端末をカバーしなければなりません。中国人観光客も考慮に入れるとファーウェイが独自展開するOSなどにも対応が必要かと思います。開発はもとい、デバッグや動作確認にも相当な人員を必要とするはずです。そして健康管理が目的とあれば精度を上げる必要も生じます。

アプリの規模も結構なものとなります。東京オリンピックがどの様な形式で行われるのか定かではありませんが、2019年の訪日外国人が3千万人以上だとすると、少なく見積もっても1千万人は訪れるのではないかと予想します。規模感だと国内に於けるティックトック以上、フェイスブック未満という感じだそうです。各アプリから提供されるデータを裁くサーバの規模を考えるだけでも何億円という規模になりそうなものです。

ちなみにエンジニア1人にかかる単価は一般的に100万円程度で計算されます。単価100万円のエンジニアやデザイナー等を100人雇っただけで1ヶ月で1億円です。更に政府が直接これらの専門家を直接的に募集して雇うとは考えにくいので、仲介業者を通す必要もあるでしょう。そう考えると約73億円は割と妥当な数字のような気もします。ただし、先に申したとおり、具体的に何を作っているのか分からない以上は安いとも高いとも判断できません。

かつて菅総理が官房長官だった頃、3000円のパンケーキを食べたと言って話題になっていました。パンケーキは庶民的な食べ物なので値段を想像しやすいと思います。お店で食べたら安くても500円程度でしょうか。少しお洒落なお店に入っても1000円くらいだと思います。それと比較したら3000円は高く感じます。しかし実際はそれ相応の店でそれ相応の料理人が作ったものであり、3000円の価値を払うに値するものだったという話で落ち着きました。これと同じ話が繰り返されている気がします。


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