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女子サッカープロリーグ「WEリーグ」に対する期待と不安を整理する

来年秋からはじまる女子サッカーのプロリーグの名称が「WEリーグ」に決まりました。最初は6〜10チームから開始され、総当りによるリーグ戦で開催されるなどが発表されています。

以前から女子サッカーリーグのプロ化についての話題がありましたが、名前の決定によって愛着と期待感が一段と湧いてきました。

WEリーグに関しては基本的に期待感に満ちているのですが、一方で心配な面もあります。期待と心配を行ったり来たりしているので、この機会に胸中を整理しておこうと思います。

競技レベル向上とファン増加に期待

期待しているのは主に2つです。それは非常に単純です。「女子サッカー全体の技術レベル向上」と、「サッカーファンの増加」です。

なでしこリーグの試合は年に数回程度は毎年のように見てきました。以前はスピード感がなく退屈な印象を抱いていました。しかし近年は競技スピードが上がり、駆け引きも見応えのある内容となっています。この「以前」というのはワールドカップで優勝した2011年の頃も含みます。

昨年のなでしこリーグ1部の試合を見る限り、男子でいえば一昔前のJ2のレベルだと私は感じています。この程度であれば、本格的に興行化をするにあたって十分な「見世物」にはなっていると思います。具体的に言えば「自信を持って人を誘えます」。

現状はほぼ全員がアマチュア契約のようです。プロ化されて女子サッカーへの投資が増えれば、競技レベルは急激に伸びるのではないかと感じています。

ビジネスとして成功するかは別問題

不安はビジネスとして成功するか否かです。何でもかんでもプロ化すれば自動的に注目が集まって人も集まるというのは幻想です。

例えばサッカー協会内のフットサルの全国リーグであるFリーグです。FリーグはJリーグと似たような方針で運用されていますが、現状はプロ選手として所属しているのは一部のみであり、セミプロの領域を脱せていません。

Fリーグはプロ化されて絶対王者であった名古屋オーシャンズを軸として競技レベルは向上しているようです。一方で観客動員は厳しいものがあります。同じアリーナ競技であるバスケットボールのBリーグがチケットを完売させている様子と比較すると、大きな差があります。

また、女子サッカーにおいては世界トップクラスであるアメリカ合衆国においてもプロ化には苦慮しています。幾度かプロ化を実現させては頓挫をしているようです。

このあたりは「なでしこリーグ」自体もプロ化の難しさは実体験として肌身に染みていると思います。日本代表の活躍が観客動員に還元されていないのが一例です。

JリーグやBリーグのようにプロスポーツをビジネスとして成立させられるのは多大なる尽力の賜物です。それを思うと、両方を成功に導いた川淵三郎氏の実績には感服します。

開幕時の資金力に注目

WEリーグを成功に導けるか否かはプロモーションに投資可能なほどの「資金力」に尽きると思います。JリーグやBリーグが開幕をド派手に演出したように、最初に時代の幕開け感を出す必要があると思います。

Jリーグはバブル経済の余波がギリギリ残っていたと聞きます。Bリーグはソフトバンクの資金力があってのことでしょう。WEリーグの後ろ盾は何になるのでしょうか。消費増税不況およびコロナ不況の真っ只中においてスポーツに投資しようという大企業が現れればよいのですが。

逆境の最中における希望としては、2021年にずれ込んだ東京オリンピックの余韻が残る中でリーグを開始できることを挙げます。WEリーグは2021年秋に開幕とされています。延期になった背景においては喜べませんが、不幸中の幸いとはこのことでしょう。東京オリンピックで女子サッカーチームが良い成績を残せられれば、女子サッカーへの注目をそのままWEリーグへの注目へと導きやすくなります。

(ということで東京オリンピックが無事に開催できるのを願います。)

軌道に乗った後のクラブ経営などに関しては基礎として活かせる経験は多々あると思います。なでしこリーグ1部に所属する多くのクラブはJリーグと同じ経営母体で運営されていますし、そうでなくても参考にできるクラブは同じ「サッカー」という括りの中でいくらでもあります。そういう意味ではあまり心配はしていません。

まだまだ名前が決まった程度であり、開示されているのはほんの一部です。オリジナルとなる参加チームの顔ぶれも決まっていません。注目点は多々ありますが、成功するか否かにおいては、私は資金力に注目しています。

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