ホンダがレベル3の自動運転車を発売、運転しなくても知っておくべき「レベル3の罠」
自動車製造業のホンダが「レベル3」と呼ばれる段階の自動運転機能を搭載した乗用車を発売すると話題になっています。レベル3は運転手が手や視線を外していても走行が可能らしく、補助的だった自動運転から大きく飛躍します。
自動運転にはレベル0からレベル5の6段階が定義されています。レベル0は完全手動の状態です。レベル1の自動運転は前後または左右を監視し、アラートを上げたり自動的な制御をします。自動ブレーキや車線監視がそれに当たります。レベル2になるとレベル1の技術を組み合わせて前後左右を同時に監視して同様に制御をします。ここまでの自動運転の役割は「監視」の領域を出ておらず、人が主体的となって運転します。
レベル3からは劇的に変わります。レベル3はシステムが全ての運転タスクを実施します。ただし、緊急時など例外が発生した場合は運転手に運転を交代しなければなりません。高速道路など歩行者がおらず一定速度で淡々と走行する場合に有効のようです。レベル4は緊急時でも自動運転システムが対応します。ただし、完全自動運転は地域は限定されています。バスなど走行ルートが決まっている場合に有効そうです。最終段階であるレベル5となると運転手が不要な完全なる自動運転になります。
自動運転の普及は私にとっては待望の技術です。なぜなら私はペーパードライバーだからです。学生時代に自動車運転免許を取得したものの、都区内での生活では大半の移動が徒歩と公共交通機関で足りる上に、駐車場料金は高いし道は狭いしで自動車保有の欠点が目立ちます。何度か興味を持つものの、コスパが悪いために断念しています。自動運転レベル3の自動車であれば、殆どの運転を自動車に委ねられそうなので、私でも安心して運転できそうです。
未来感に胸を躍らせながら自動運転について調べていたところ、とんでもない単語を見つけました。それは「レベル3の罠」です。自動運転技術においてレベル3が最も危ないのだそうです。その理由は「緊急時に人の手を要する」点にあります。
レベル3では自動制御できないほどの例外的な状況にだけ運転を任されてしまいます。運転手はその際に適切に制御をしなければなりません。レベル3の自動運転中はスマホやカーナビの操作も可能なほどに運転から意識を離せる状況です。そんな油断した状態で緊急時にだけ運転を任されるとなれば、焦りから事故を誘発しかねません。スマホの操作をしていたならまだしも、油断しすぎて居眠りしてしまっていたら元も子もありません。自動運転レベル3の運転手は運転をシステムに委ねながら緊張感だけは保ち続けるという、かえって難しいマインドセットを必要とされます。
踊らせた胸はいったん沈めました。レベル3の自動運転技術は素晴らしいものがありますが、私のように運転に不慣れなペーパードライバーが手を出すにはかえって危険だと分かりました。細かな事故は防げても、重大な事故を起こしかねません。そして緊急時にだけ手動運転をするなど難しいことができる気はしません。
スウェーデンの自動車製造業者であるボルボは、この危険性を懸念してレベル3の自動運転車は発売しないと決めているそうです。社会の安全のためには支持できる判断だと思います。また、事故発生時に製造者の責任が問われる可能性も意識したかもしれません。
ここまで調べると、ホンダの自動運転レベル3の自動車の発売が意味する印象は大きく変わります。ホンダはどのような技術やUXで「レベル3の罠」を回避させるのでしょうか。日本の自動車の信頼性を左右する一石となりそうです。それと同時に、新たな社会問題の発生を予感させます。他の業者の動向と併せて注目です。