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東京ヴェルディの新ユニフォームに「世界と戦う覚悟」を感じた

Jリーグの東京ヴェルディが新しいユニフォームを公開しました。これがかなり格好いい出来になっています。とりあえず動画と特設サイトを見てください。

ユニフォームの図案については、特設サイトでこのように書かれています。

ABSTRACT PATTERN
東京の街・人の多様性、スタジアムのサポーターそれぞれを柄の要素とし、2020年の東京でひとつになり、結集した姿を抽象絵画にインスパイアされて表現したアブストラクトパターン。

東京の街の都市部は一昔前では考えられないくらいに多様になっています。

最も分かりやすいのが人種の多さです。主に観光客かとは思いますが、明らかに東洋人ではない人種の方々が当然の様に行き交っていますし、東洋人かと思えば日本語でも英語でもない言語での会話を楽しんでいる団体とよくすれ違います。

日本人に限っても、日本の各地から集ってきており、それだけでも多様な文化が形成されます。新しいユニフォームはそれを上手く表した意匠と感じました。

東京ヴェルディがデザインに投資をした理由を考える

東京ヴェルディはユニフォームだけでなく、昨年からエンブレムを刷新しています。サッカーチームは登録上の都合で2020年のシーズンからの利用となります。

新しいエンブレムはイギリスのデザイナーであるNeville Brody(ネヴィル・ブロディ)氏が手掛けたそうです。デザインの界隈は私は詳しくありませんが、ロゴ・タイポグラフィの巨匠だそうです。

ここで疑問に思っていただきたいことがあります。東京ヴェルディがなぜエンブレムやユニフォームにそれほどのコストをかけているのか。サッカーの勝敗にエンブレムやユニフォームがどうというのは直接的に関係ありません。それよりも良い監督やストライカーを獲得した方が正しい選択のように感じます。

なぜ意匠に投資をするのかは、エンブレムを変更した際のリリースに答えがあります。

求められる人物・能力・労働環境・教育方法・価値観などが多様化している今、『東京』を本拠地とする東京ヴェルディは、サッカー業界の垣根を越えて様々なチャネルへタッチポイントを設け収益モデルを拡張するスポーツエンタテイメントビジネスを創出し、色々な競技・年代が関わりあう人材育成を担う世界へ誇る総合クラブとして変貌を遂げていきます。

記事内の画像を見ていただきたいのですが、文章で表現します。東京ヴェルディは『エンターテインメントと人材育成を担う総合型クラブ』を目指すとしています。そこにはサッカーのサ字もありません。「フットボールクラブ」であった団体は、「総合型スポーツクラブ」への変化をしようとしているのです。そしてその次にあるのはスポーツの枠も飛び越えた「総合型クラブ」です。

東京で勝負をするというのは世界と戦うということ

サッカーに限らなずスポーツにも限らない、エンターテインメントとしての「総合型クラブ」を目指すに当たって、ブランドデザインの統一化は一つの課題だったかと思います。新しい意匠はサッカーのユニフォームだけに留まらず、あらゆるプロダクトやコンテンツで通用するものとなっていると思います。

さらに重要となるのは東京で「総合型クラブ」を展開していかなければならないことです。企業がビジネス展開をする上での義務というのは無いのですが、クラブはその道を選びました。東京という土地にこだわった歴史のあるクラブという背景もあり、そこに疑問は感じません。

東京は御存知の通り、世界でも有数の都市です。経済的には落ち気味と言われながらも未だ有数の都市という表現に当てはまる経済規模があります。文化においても海外の多くの人が魅力を感じて集まるのが世界有数と表現できる一つの理由です。

多くのものが東京で始まり、世界を舞台にビジネスを展開しています。東京ヴェルディはこの世界を相手にしている舞台でビジネスを展開しようとしています。その際にサッカーという枠は超えています。

戦いの舞台は渋谷か

冒頭に紹介した動画を見ると、舞台は渋谷センター街です。ユニフォームを紹介する動画の舞台に渋谷を選んだことに、私はこのクラブの一つの覚悟を感じました。

渋谷は東京の文化の最先端が集まる街です。私の実感でも、渋谷は文化の発信においては群を抜いてます。東京ヴェルディはその渋谷を動画のイメージに使いました。つまりユニフォームを展開するターゲットは渋谷だという意思表示と捉えられます。そして渋谷で相対するのは世界の名だたるファッションブランドです。

東京ヴェルディは昨年からいかにも渋谷の若者をターゲットとしたと思われる情報発信を度々行ってきました。それが若者に刺さっていたのかはサッカー大好きおじさんには分かりません。微妙だなとは感じました。意匠の刷新が完了した今年からはよりコストをかけて渋谷に仕掛けていくのだと予想します。

これは完全に予想ですが、もしかしたらサッカーとか全く関係ない「VERDY」の意匠を用いたファッションブランドの展開も視野に入れているかもしれません。予想というか、私としてはそこまですべきだと考えています。

渋谷で一定の影響力を得た時に、いよいよ東京ヴェルディは「総合型クラブ」としての転換をしていくのだと思います。それが完了した時に、東京ヴェルディは三浦カズやラモス瑠偉といったJリーグバブルの象徴としてのブランド価値から、リブランディングが成功したと言えるようになります。

リーダーとしての男子サッカーチームへの期待

なんかスケールが大きすぎてついていけませんね。もはやサッカーの試合結果とかどうでも良くなります。それは冗談ですが、このビジョンを理解すると、クラブがサッカーチームにだけ投資を集中しない理由をよく理解できます。

しかし将来がそうなるからと言っても、今の東京ヴェルディのブランドのアイコンは間違いなくサッカーの男子トップチームです。東京五輪が開催される2020年に、この男子トップチームがサッカーを通じてどのようなブランド価値を創造するのか楽しみです。

ブランドは意匠を作って終わりではありません。育てていくものです。男子トップチームを筆頭として、東京ヴェルディがどのような価値を東京で展開していくのか、視野を大きく広げて見守り応援していきたいと思います。

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