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ライブハウスで育たなかったうさぎ

1987年2月28日  雪の降る夜、愛媛県松山市に私は生まれました。
幼い頃は泣き虫で、親が心配して病院に連れていくほど喋らず、家の中で一人で遊ぶのが大好きなこどもでした。

そんな私が生まれて初めて自分でやりたいと言ったのが「ダンス」だったそうです。4歳からダンスを初め、唯一の自己表現ができる術を手に入れた私は、そこからダンス一色の日々を送ることになります。そうして、気づけば28歳までダンスを続けていました。

そんな毎日を送っていた私ですが、ダンス以外にも好きなことがありました。それは、本と音楽。

洋楽ロック好きの両親の影響か、中学生になった頃にはパンクロックにハマり、OFF SPRINGをくり返し聴きながら歴史の勉強をしていたことを思い出します。絶対集中できてなかったですね。

そしてだんだん「私もバンドしたい!楽器弾いてみたい!」という気持ちが大きくなり、誕生日に両親にエレキギターを買ってもらいました。青いキラキラしたやつ。

でも悲しいことに、友達の恐ろしく少ない私は、一緒にバンドをしてくれる人を見つけることなく中学を卒業。

高校に入り「軽音部に入るぞ!」と意気込んでいた矢先、ダンスをしていることがバレてダンス部に連れていかれ「こんな私とバンドしたい人なんかいないか」というネガティブな感情に引っ張られて、また音楽を始める機会を逃します。

大学に入り「今度こそは軽音部へ!」と強い意志を持ってはいたものの、なぜか食堂でごはんを食べていたら、天井からズンズンズンという重く鈍い音が。

「上でダンスサークルの新歓してるらしいよ!観に行こう!」

人混みをかき分けてみた先輩方のダンスは、学生とは思えない程レベルが高く、かっこよかった。即入部。愛媛から持ってきたネックの曲がったギターは、クローゼットの中で永い眠りにつきました。

ダンスが好きで、ダンスが得意な私には、今から音楽を始めるのは笑われるかもしれないし、こわい。
そんな感じでもう音楽をすることは諦めようと思った二十歳の春でした。

時は経ち2021年のある日、水都音楽祭という音楽フェスのグッズデザインの依頼をいただきました。
「ババババンドだ…」
音楽は大好きだったけど、音楽に関わったことのない私にとって、そこは未知の世界。本当に私にできるだろうか…こわかったのが最初の気持ちです。

でも、必要としてもらえるならなんでもやりたかった私は「やりたいですよろしくお願いします!」と秒で返事をしました。

そんなこんなで、いつの間にか水都音楽祭のデザインを3年させていただき、主催であるSelf-Portraitのデザインもちょうど去年の今頃からチームとして入れていただき、この一年も一緒に走らせてただいています。

あまりそういう印象を持たれない私ですが、実は基本びびっています。
私はライブハウスで育ってもいないし、楽器も弾けない。
好きなバンドのライブを見に行ったこともほぼない。
それだけじゃないだろうけど、わからないことだらけでまるで外国に来たような感覚。まったく自分が生きてきたのとは違う世界がそこにはありました。

でもだからこそ、音楽をしている人たちのことを知りたくて、応援している人たちのことを、ライブハウスってものを、もっともっといろんなことを知りたくて、物販に立たせてもらえる機会をいただきました。それが、2022年水都音楽祭後夜祭。

めちゃくちゃこわくて、当日家を出るまで「やっぱやめたいアワアワ」みたいな感じになりました。物販に立っている間も落ち着かなくて、何回も小銭の枚数を数えたり…「とにかく気配を消すんだ!」そんな気持ち。

現在私は、36歳です。ライブハウスに行ったり、バンドのライブを観るようになって一年ぐらいだと思います。

ライブハウスで育ってきていないことが、バンドを知らないことが、みんなとの関係が一年にも満たないことが、ずっとコンプレックスで悔しくて寂しくて、たまに泣きました。

中学の時に、高校の時に、大学の時に、あの時バンドを始めていたら。そう思うこともありました。
でも、あの時違う経験をしてきたから今の私があるのかもしれないとも思います。

そんな私だからこそ、そんな私じゃないと作れないデザインもあるのではないかと思い、もっとライブハウスとバンドとファンの人と関われる時間を作って、もっとみんなのことを知ってデザインをしよう!自分にできる最大限のことをしよう!そういう思いでやってきました。

なんならまだなんにもわかってないです。当たり前だけど、知らないことだらけです。いつでも心の中では「アワアワ」しています。泡だらけです。おつりも間違えます。ごめんなさい。

でも、一つだけ言えるのは、あのときびびりながらも挑戦してきた自分えらいぞ!よくやった!チャンカチャンカチャンカチャンカということです。

びびるとき、そわそわするとき、そこには成長の可能性が存分に含まれているそうです。

わたしもいつかアワアワしなくなって、おつりを間違えなくなる日がくるかな。みんなの話してることがもっとわかる日がくるかな。そんな何年後かの自分を楽しみにして、うさぎはがんばります。だいたいいつもブルブルしているので、みんな仲良くしてくださるとめちゃめちゃ嬉しいです。

こんな長い文章を読んでくださったあなたと私は、もう仲良しこよしです。みなさんいつもありがとうございます。

ほなスーパーに買い物行ってきます。みんな大好き。またね。


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