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読書振り返り・9月編(最も危険な月)

9月……9月もすでに振り返り済だぞ!よし、いける!

9月

のっけから失礼します/三浦しをん
池井戸潤各種
十戒/夕木春央
隣人を疑うなかれ/識守きょうや
↓をご覧下さい。🧚‍♂️の話もこっち。

……残った中に『刺青・少年・秘密』『全裸刑事チャーリー』がいる。ただの変態じゃないか……。

■刺青・少年・秘密/谷崎潤一郎
→谷崎潤一郎といえば、細雪か春琴抄か……まあなんというか『フェチがやばい』というイメージはおありでしょう。
こちらの短編集、SMという枠を超えたなんかもうなんか、なあれこれが楽しめます。

引用しようと思ったけど『少年』に至ってたはヤバすぎて困る……。

 この若い刺青師の心には、人知らぬ快楽と宿願とが潜んでいた。彼が人々の肌を針で突き刺す時、真紅に血を含んで脹れ上がる肉の疼きに堪えかねて、大抵の男は苦しき呻き声を発したが、その呻きごえが激しければ激しいほど、彼は不思議に言い難き愉快を感じるのであった。
(中略)
 彼の年来の宿願は、光輝ある美女の肌を得て、それへ己れの魂を刺り込こむとであった。

『刺青』より

「あたしが狼になるから、二人旅人にならないか。そうしてしまいに二人共狼に喰い殺されるんだよ」
 信一が又こんな事を言い出したので、私は薄気味悪かったが、仙吉が「やりましょう」と言うから承知しない訳にも行かなかった。
(中略)
 今に私もあんな態をさせられるのだ。こう思って密かに胸を轟かせたが、まさか仙吉同様の非道い目にも合わすまいくらいに考えていると、やがて信一は私の胸の上へ跨がって、まず鼻の頭から喰い始めた。私の耳には甲斐絹の羽織の裏のさやさやとこすれて鳴るのが聞こえ、私の鼻は着物から放つ樟脳の香を嗅ぎ、私の頰は羽二重の裂地にふうわりと撫でられ、胸と腹とは信一の生暖かい体の重味を感じている。

『少年』より。

この2作はSMちっくかな?少年に至ってはちょっとこのあとどんどんエスカレートするので潔癖な人は無理かもしれない。女の子まで混ざって性も知らぬからこその少年少女の残酷な戯れが続く……いや、うん、子供って、あるけどさ……。これが書ける谷崎っていったい……。

 あの古着屋の店にだらりと生々しく下がっている小紋縮緬の袷──あのしっとりした、重い冷たい布が粘つくように肉体を包む時の心好さを思うと、私は思わず戦慄した。あの着物を着て、女の姿で往来を歩いて見たい。……こう思って、私は一も二もなくそれを買う気になり、ついでに友禅の長襦袢や、黒縮緬の羽織までも取りそろえた。

『秘密』より

女装してオペラ鑑賞をしていたら、すっごく素晴らしい女性を見かけた。あ、昔関係のあった女じゃないか!超美人!女装じゃ勝てない!悔しい!女装じゃ勝てないから男として勝ってやる!
というわかるようでわからない感情から始まり、『彼女の家』に招待されるが、「ぜったいにどこにあるかを探ってはいけない」。彼女の家までの道を、俥は迷路を通るように進んでいく……。
この作品、タイトルどおり複数の『秘密』が絡んでいて短編ながら美しいです。秘密は秘密だからこそ美しい、だなんて言いますが、果たして?

■成瀬は天下を取りにいく/宮島未奈
→世界でいちばん~、近畿地方~と並んで、今年読まれた方は多いのではないでしょうか!
とにかく爽快!これ滋賀県民が読んだらさらに「わかる!!!!」なんでしょうか?あとM-1グランプリに出てみたくなる。出ないけど。
成瀬みたいな友達がいたらいいなって、読みながら誰もが思ったことでしょう。
強い。かっこいい。でも、ラストのお話では年相応な一面も。

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」

『成瀬は天下を取りにいく』より

この出だしだけでワクワクしますね。

次……が……問題作すぎる……。

■全裸刑事チャーリー/七尾与史
→これ書かなきゃいけません??少なくとも、『超絶下ネタ(男子中学生の香りを添えて)』がいけないと読めないと思うんで、感想を書いたところで誰かに刺さるとも考えられないんですが……。

 ヌーディスト法が施行されて一年が経つ。人々の価値観が多様化してついに日本は全裸生活を認めることとなった。

『全裸刑事チャーリー』より

まあ、もうこれです。主人公くんは法に反対してきっちり服を着ていますが、上司のチャーリーは「全裸こそ素晴らしい!」な全裸過激派。主人公くんはなんだかんだでよく脱がされます。可哀想に。
つねに主人公くんの視界に入ってくる、チャーリーのご立派なアレに笑える下ネタ耐性が高い人にはオススメです。
それで、一応刑事ものなのでミステリーなんですけど……全部のトリックとかに……うん……アレが関係してくるという……超絶下ネタです。嘘やろ!絶対無理やろ!なことも平気で起こります。
はい。とにかく下ネタいける人だけお願いします。

ラストの近畿地方はカクヨム版を7月分で振り返ってるので割愛しますが、書籍限定の袋とじ(私は電子で見たんですが)が怖いので、Webで読んだ方も買う価値ありです。

まあ、9月は🧚‍♂️で死んでいたので、成瀬で青春度を高めたり陸王で号泣したりチャーリーで『うわあ』ってなったり、読書でなんとか感情だけでもコントロールしようとした結果、こんなことになったんですね、仕方ない。地獄の月だった。

次は、10月。

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