インターネットが使えなくなる日

少し前に、太陽フレアのニュースが話題に上がっていた。
聞き流しただけで終わってしまったので詳しいことはわからないが、なんでも、太陽の表面で爆発が起こるとその勢いだか発せられる電磁波の影響か何かで地球上の電子機器がことごとく機能しなくなってしまうのだとか。

その話を聞いて想像される世界に少しばかりワクワクさせられてしまったのは、何も私だけではないだろう。
地球の表面から宇宙を煌々と照らす外灯やビルの煌めきは全て消え、夜は完全な闇に包まれる。
スマホ中毒の私たちはもはや娯楽を失い、仕方なしに空を仰ぐ。人類は、エジソンの発明によって奪われた星の輝きをやっと取り返すのだ。

さて、数日かけて星空を堪能した私たちは、どうやって会いたい人と再び落ち合えばいいのだろう。

会いたい人の全てが徒歩圏内に住んでいるなんて幸運な人たちは、おめでとう。毒気のない、清らかな毎日を楽しめるはず。
私のように生まれ育った地を離れ、親元を離れ、友達の一人もいない地でぽつねんとインターネットに見守られている人々はどうか。交通機関の乱れやらなんやらにより、移動手段はないとする。
映画「サバイバルファミリー」を想像してもらえれば話は早い。

会いたい人は、会いたい。あの素晴らしい大好きな人たちと、輝かしい10代の時間をたっぷりと消費して築いた関係性を荒んだ20代の心で赤の他人と再演するのは私には不可能である。
来るべき美しきXデーやその後の濃い暗黒世界のため、会いたいと思える人々と、再開のための日付や場所を教えあいたい。
いつかの何月何日に、○○駅で、と。
もしも何かの用事でどちらかが来られなくても、来年のこの日には会えるかもしれない、と思える。たとえそれが数年、数十年続いたとしても。

もう会えることがないとしたら、その事実は知りたくないと私は思う。
一年に一度、その場所に赴けばいつかまた会える、と信じていたいのだ。

落ち合うための日時は、二人にとって特別な日かもしれないし、単に覚えやすい数字の並びかもしれない。
落ち合うための場所は、二人の出会った場所や多くの時間を過ごした場所かもしれないし、単なる中間地点かもしれない。
なんにせよ、その二人の関係性が色濃く反映されるだろう。

再会して、近況報告、数分でじゃあまた、と解散するのも素敵だ。
すぐに別れるのは、また会えるという確信があるから。

実際には徒歩で日本列島を縦断する羽目になる私は、そんな日が来たら絶望の淵に追い込まれるのだろうが、今はただ、そんな未来が待ち遠しく思われて仕方がない。

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