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注文住宅とSOLID原則。

注文住宅を建てることにしたのですが、その際に、僕なりに考えたことを記録しておきます。半世紀以上自分が住むであろう家を作るにあたって、考えるべきことはたくさんあります。

SOLID原則って家にも当てはまるのでは、と思った話と、実践したことについて書きます。お付き合いください。


SOLID原則

SOLID原則はソフトウェア開発の考え方です。
SOLID原則については解説している人がたくさんいるので、noteではなくQiitaで確認して欲しいのですが、ソフトウェアを保守しやすくするために守るべき基本ルール的な位置付けのものです。

単一責任の原則、開放閉鎖の原則、リスコフの置換原則、インターフェース分離の原則、依存性逆転の原則の5つを総称したもので、それぞれの頭文字をとってSOLID原則といいます。

ソフトウェア開発の言葉ではなく、より抽象度の高い一般的な言葉で僕の解釈を説明すると、

  • 十徳ナイフはだめ!ナイフはナイフ。機能は分離しよう。(単一責任の原則)

  • 新しい機能を追加できるようにしよう、その時、今あるものは変えずに、そのまま追加できるようにしよう(開放閉鎖の原則)

  • 似たような目的を持つバリエーションには、同じ形式を持たせよう。(リスコフの置換原則)

  • 必要なものだけ使えるようにしよう。(インターフェース分離の法則)

  • 一まとまりの機能は、より詳細な機能に依存しないようにしよう。(依存性逆転の原則)

ということになります。

各所、ツッコミどころはあるかもしれないですが、プログラミング原則を理解することで上質なコードを書くことを目指しているのではなく、プログラミングを通して得た人生訓、ということなので大目に見てください。

ここまで壮大に風呂敷を広げましたが、具体の事柄に分解すると、大したことない内容になってしまいました。
ただ、これらは確かに家を維持する上で重要なことだと思います。


単一責任の法則から学んだこと

ひとつの機能が壊れた時に、まるまる交換しなければならないものを選ばない。

昨今、スマホで施錠できる玄関ドアがあります。

こちらはハウスメーカーの住宅展示場などで誇らしげに説明される機会があったのですが、単一責任の法則に反すると僕は思ったので、採用しませんでした。

仮に壊れた場合、ドアごと交換する必要が出てくる可能性もあります。
また、ハードウェアよりも先にソフトウェアの寿命がくる可能性もあります。住宅の寿命に対して、ソフトウェアの寿命は非常に短いと言わざるを得ません。スマホで施錠したいならQrioなどの後付けハードウェアを利用する方が強固なシステムと言えるでしょう。

他にもソケット一体型のLEDダウンライトなどもこれに該当する気がします。


開放閉鎖の原則から学んだこと

目的を限定する余計な壁を作らない。

開放閉鎖の原則から得られる教訓は、必要以上に空間を区切らない、ということです。

後から別の用途のために家具などの配置で分割できるようにして、リフォームを伴うような用途変更を避けることにしました。

ここでいう、取り壊しを伴う空間とは、例えばリモートワーク専用の造作スタディスペース、琉球畳の小上がりなどです。スタディスペースは机と椅子を置くことで代替可能ですし、小上がりは後置きの畳でも実現可能です。
これらを専用空間として設計してしまうと、他に応用の効かない空間になってしまいます。

半世紀住むと考えた場合、子育てや介護、色々なことが必要になるタイミングがやってくるでしょう。
その時に、必要なものをインストールできる余地を残しておきたいと思います。

造作ではなく家具で機能を実現することを住宅メーカーや工務店は、おすすめはしてくれないかもしれませんが、保守していく立場である施主として、判断が必要な部分だと考えています。


リスコフの置換原則

水回りは階毎に同じ場所に揃える。

水回りは配管を伴い、必要以上に引き回すと後々清掃や保持、修理が面倒になります。

給水、温水、排水を1ユニットとして、必要以上に引き回さず、同じ場所に揃えることにはメリットがありそうです。

これは自分の家で、実現できなかった部分でもあります。


床のタイルや棚板など、家中の複数箇所で使うものは同じサイズで統一し使い回す。

これはちょっとリスコフの置換原則というにはギリギリである気もしますが、規格サイズを規定するということです。

同じものを同じサイズで使いまわせば、当然中間コストも減りますし、調達も一つで済みます。後々、自分で修理や追加することを考えれば1種類にしておくことで、効率も良くなりますし、難易度も下がります。


インターフェース分離の法則

部屋に必要なものかどうか考える

窓は全室に必要でしょうか。ドアは?換気扇は?エアコンは?水道は?コンセントは?照明は?

これらは配管が必要であったり、外壁に面している必要があったりと、独立して存在できないので、間取りに制約を与えます。

必要なものは残すべきですが、使わないのであれば、メンテナンスコストを考えても省いてしまって構わないのではないでしょうか。

僕は自分の家を作るにあたって、意識的に常識を疑い、削れる部分を常に考えていました。


依存性逆転の法則から学んだこと

これは建築の世界でもほぼ同等の考え方があります。スケルトン・インフィルの分離です。

住宅メーカーや工務店の営業でこの言葉を聞く時は、「子供部屋が将来二つに仕切れますよ!」くらいの説明しかなされないですが、
本来の意味としては建物の構造部分と、機能を提供することに必要な内装を分離して、空間を目的に応じて任意に変更しながら利用できる概念として提唱されたものだったはずです。

用途に依存する構造(間取り)を作らない

これはどのレベルまで実現するべきかは難しいところですが、
究極系では、配管・配線をひとまとめにして、必要な時に引き回して家中どこでも取り出せるようにしたパイプスペース、それらを任意に通すことができる二重底の床、ということになります。
そのレベルまで実現できたら、もはやテナントビルになってしまいます。

日本の普通の住宅で、特に内装に依存してしまう箇所は、配管が集中するキッチン、防水が必要な在来風呂、トイレなどがありますが、風呂の位置を変更することはほぼあり得ないので、そこまではできませんでした。

むしろ小さい住宅なので、特定の用途にしか使わず汎用性がないような部屋は作ることができなかったというのが実際のところです。
例えば、ボルダリング用の補強された壁の部屋、ピアノを置くための補強が入った床と防音室、みたいなものです。


設計論に共通するもの。しないもの。

システムであっても建物であってもアーキテクチャと呼ぶように、設計論には重なる部分があると思います。

これらの実践を通して、住むための機械ではなく、保守しやすいシステムを構築できればいいな、と思っています。

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