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バイクを降りて失ったもの

3年ほど前に一度バイクを手放し、再びリターンライダーとして戻ることにしました。今回は3年前にバイクを手放して感じたことを中心に記録します。

今、バイクを降りようと思っている人、もう一度乗りたいと思った人、初めてバイクに乗ろうと思った人に何か伝わるといいなと思います。
お付き合いください。


一度バイクを降りた理由


マグナ50で毎日120km走行。しかも、ギヤ欠け。

学生時代、片道60kmをマグナ50で通学し、その後、YB125sp、ルネッサ、トライアンフと乗り継いでいました。塾講師のアルバイトで十分にバイクを維持できていました。

僕の歩みは常にバイクと共にあり、旅も進学も通学も就職活動も、日本中を駆け回り、進んできました。
今思えば、学校見学で片道500kmを下道で日帰りしたり、就職面接にレザージャケットで行くことには問題があったかもしれませんが、それでも前に進むことが出来ました。

その後、就職に伴い、トライアンフに乗って上京しました。
当時、留年した大学院の学費の支払いや、奨学金の返済と、アルバイトと対して変わらない初任給から毎月8万円近く出費があり、その上、都内で一人暮らしをしていたので、金銭的に過酷な状況にありました。

そんな暮らしで乗り続けられるわけもなく、最終的にトライアンフをパンに変える決断をせねばなりませんでした。


25年落ちの水冷トライアンフを手放したところでたいした額になる訳もなく、出費が減ることと引き換えに、トラックに乗せられて運ばれていきました。

バイクを降りて失ったもの

ヒンクレートライアンフ。セパハンにしてあります。

バイクを手放してからというもの、外出するモチベーションもなく、休日は家で寝ていることが増えました。

何か新しい発見が家の中から見つかる訳でもなく、仕事の上でも保守的な方向の発言が増えていきました。

もっと知りたい、もっとこうしたい、といったモチベーションが失せてしまい、言われたことを片付けることに一日を費やし、疲れ果てて眠る日々が続きました。

一日中仕事のことだけを考えて、実力が伴わないのでうまくいかない、という毎日が過ぎていきました。

何かがうまくいかなければ、サラリーマンなので当然目標を下方修正します。サラリーマンは安全な目標を設定して、安全に達成することを繰り返し、それによって得られる信頼を利用する側面がどうしても存在します。

いつしか、届くかもしれないところまで、手を伸ばすことも少なくなっていきました。

歳を重ねる、若しくは老いる、とはそういうことかもしれませんが、僕にとって明らかにトリガーとなった出来事はバイクを降りたことでした。

今思えば、バイクが僕に与えてくれていたものは前に進む力だったのだと思います。

バイクが教えてくれること


ルネッサ。

前に進む力

バイクはリスクを負う乗り物です。
快適でもなければ、ろくに荷物も乗らず、寒い日にはエンジンも掛からず、挙げ句の果てに転べば死にかねません。
そして、後ろへ戻ることもできません。

それでも、望む方向に進むことができ、目的地がなくてもまずは前に進む理由になります。

僕にとって、それは、ただ移動することに限った話ではありませんでした。リスクを負ってでも、とにかく前に進まなければならない状況は、生きていれば幾らでもあります。

そこで進む力を貸してくれていたのがバイクだったのかもしれません。

責任と課題解決


YB125sp。最後は追突されて、保険金に変わりました。今見ると逆付ハンドルが凄まじいポジション。

バイクに乗っている間は全てのトラブルに自分の力で対処せねばなりません。

僕が初めて買ったバイクは不動車でした。当時は何の知識もなく、必死に調べて、あちこち修理して、やっとエンジンがかかるようになり、車道へ出ることができました。
困難な課題を分割してクリアしていくプロセスを楽しむことができました。

自分で何とかする、そのためにできることは何でもする、それでも手がつけられなければバイク屋さんにお願いする、ということを繰り返すことで、逆に限界を体感することもできます。

場合によっては、他人に危害を与えることもあるので、専門家に任せるべき部分、そうでない部分の線引きもできるようになりました。
例えば、足回りの整備で工具が不足していて、安全に作業できない状況は、相当に危険です。

自分の力の及ぶ範囲とそうでない範囲を線引きし、課題解決を図る、というプロセスをバイクに教えてもらったのかもしれません。

一歩ずつ蹴り出す力

幸いなことに僕の中ではスパークプラグがまだ火が飛んでいるようです。

手放さなければならないリスクが薄く、一歩ずつ強く地面を蹴り出す力を貸してくれる一台が欲しいと思い、次の一台はSR400(3型)にしました。結婚、住宅購入とライフイベントを幾つか重ねた中で、まだ見ぬ景色を見るための仲間として最適解だと思っています。

次こそは、なす術なく手放してしまわないように。

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