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金属泥を鼻から吸って

1  側溝に溜まった鈍色の金属泥が夜の雨に降られて蒸気をあげる。投光機のまぶしい明かりの中おれは鼻からそれを吸い込む。おれの脳は加速する。加速する。そしておれは放水路の中をどこまでも走って行く。きっと誰にも追いつけないだろう、おれはそう信じる。それこそが力だ。 「すごいね」  背中に背負った彼女がそう言う。 「すごいだろ」  おれもそう言う。  この街でおれたちは遊び、跳び、駆ける。きっと誰にも追いつけないだろう、おれたちはそう信じる。それこそが力だ。おれたちはそう信じてい

    金属泥を鼻から吸って