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インボイスというパフォーマンス

 常日頃、無関心ではないが政治の話は冗談でもあんまりしたくないと思っている。昔は「好きな政治家はアーノルド・シュワルツェネッガー」とボケをかましていたが、それすらマニフェストや実力ではなくキャッチーさや知名度で政治家や政党を選ぶ雑な人間だと思われかねないし。そんな感じで雑な人間による票で当選した暴露系なんちゃらは好き勝手やって捕まったし。

 そうは言ってもインボイス制度には2年近く前から反対だ。「なんでそんな必要ないことするの?」「どこにとってもデメリットだけでメリットないじゃん」としか思っていない。本当にそれ以上のことしか思わないくらい理解し得ない。それで皆公正に平等に正確に税が納められるとか言ったってその処理をするために労働リソースが割かされるんだから免税者でない大手企業や士業だって損害だし不平を言う。正確なことが必ずしも合理的ではない。30年続けてきた均衡をいきなり崩された挙句、それまで不要でやりがいのない会計上の作業をしなければならなくなるんだから。
 政治家が新しい制度作っておけば仕事しているていのパフォーマンスになるみたいなとりあえずのノリで作られたんじゃないかと疑いたくなる。

 かと言って、制度反対側にも疑念を抱いている。
 一応は54万分の1として署名はした。何もしないわけにもいかないから。しかし署名のフォームに本名以外が可能な記名とメールアドレスの欄しかない。いくらオンラインにおける署名に関する制度がないとはいえ、それは署名として機能するのか疑問だった。その後のデモで気が立っている人間が集まっている中で当事者に直接手渡しするのに拘ったのもまずい。感染症やら昨年の事件やらで向こうだって相当警戒して易々面会するわけにもいかない。手順として適切ではない。
 結果、首相秘書に手渡された54万人の名前のデータが入ったUSBメモリー1個なのにどれほどの力があるのか。手段に拘っているならあまりにもお粗末過ぎないか? 署名を雑に扱われた気がする。

 元々、何かしら政治的主張をするために数年前からTwitterデモがトレンドに載せて数に拘っているのが手段が傍から見て印象が悪い。インボイスには反対だが、個人で何かしら主張したくないのはそれまでの政治的主張をしてきた人達の積み重ねの印象にある。悪目立ちのパフォーマンスが強過ぎる。少なくとも「増税メガネ」だとか「#岸田に殺される」みたいな小学生レベルの揶揄や侮辱を含んだ言論には品性を感じない。

 だからと言って、そのインボイス反対意見に苦言を呈している人間にも嫌な感情を抱いている。
 国税庁の人間だと自称する『半沢直樹』のキャラのなりきりアカウントやライブドアの粉飾決算の不正で逮捕された奴が免税者を「着服」と間違った認識で揶揄する。その他有象無象の人間がインボイス反対の声は小ズルい貧乏人の喚きのようなものだとバカにする。
 恐らく私が思っている以上に世の中の人は会計のことを理解していない。大抵の人間は働いていても社員やアルバイトの雇用だけで生きてきて、上ではどんな金の動きをしているかなんて把握していないし、帳簿の読み書きもできない。末端としてやることだけやってお給金を貰っているだけ。大企業や公共団体だって小規模事業者やフリーランスとの相互関係で成り立っていると考えていない。そうじゃなかったら軽口を叩けない。

『水曜日のダウンタウン』が先週やっていた、たまにやるやたら社会派な内容の説「店舗数/シャッターでキングオブシャッター商店街算出できる説」「日本全国シャッター商店街ランキング」。製作者の意図は知らないが、このタイミングでやったのは凄く意義がある(ように思えた)。

(『水曜日のダウンタウン』,2023/9/20,TBSテレビ)

 第1位の岐阜県のスタープレイス柳ヶ瀬商店街はたった一回の国体のための風紀を正す浄化作戦で風俗店や水商売の店が根絶された結果、それに関わる酒屋や花屋も店を畳んで188店舗中159店舗がシャッターを閉めている。
 私は大学の一時期、地元の繁華街の中にある花屋でバイトをしていた。開店祝いや式場に花のスタンドを運んだり回収したり、お客さんのお気に入りのキャバ嬢の誕生日祝いのアレンジメントを持って行ったり(あと看板犬のポメラニアンの散歩をしたり)していた。そんな中でなんとなく「社会とか金ってこんな風にまわっているんだなあ」とぼんやり思っていたので、この回は深く刺さったのである。
 多分インボイスでシャッター街みたいなことが色んなところで発生する気がする。悪徳政治家は今後ノーパンしゃぶしゃぶや女体盛りが食えなくなるだろうな。

 政治家にも反対運動にもそれをバカにする手合にも嫌な顔をしているが、自分含め多くの人が問題意識を持っているのに動かなかった、動けなかったのも問題だと思う。
 一部の漫画家やアニメーターや声優やらが声を上げたが、なんだったらアーティストも芸人もアイドルも動画配信者もインフルエンサー足り得る人間はすべからく全会一致で声を上げるべきだった。制度によって得する人間なんていないのだから。でもそれによってファンやフォロワーが離れるの恐れているのもある。別に権威も波及力もない私ですら周りからどう思われるか恐れるから政治的発言をしない。結果、みんな口を閉ざしていると思う。政治的なパフォーマンスをしたくないのである。

 多分、地獄への道は善意ではない、自己満足とか浅慮とか他人への侮辱によって雑に舗装されて、その上で舗装した人間は雑に踊っている。
 それを指咥えて見ているしかないのか。

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