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diversity

「Kちゃん、私最近勉強したの!そして気づいたの!!ひきこもりが悪いわけじゃないって!!だってそうでしょ!今の時代いろんな価値観が認められてるわ!多様性って言うらしいの!英語ではdiversityと言うそうよ!ごめんなさいね。Kちゃんを部屋から出すことばかりを無理強いしてしまって。私反省したの。だってKちゃんが私がカウンセラーになって初めての患者だったから。私だって大学で心理学を勉強してカウンセラーの資格を取ったばっかりだったからあまりわからなかったの。ひきこもりの支援も初めてだったしね。でもこうやって部屋に入れてくれて感激しているわ。だって1年も通ったんですもの。ありがとう!それでね、最近Kちゃんのことどうしたらいいか悩んでいろいろと調べたり、セミナーに行っていたの。そしたらね、セミナーの尊師に、ひきこもりの子は彼らなりの価値観を持っているから多様性を認めてあげなさいと言われて、ハッとしたの。私、Kちゃんを部屋から出してあげることばかり考えていたの。ごめんね。Kちゃんにも自分の世界があるんだよね。私自分のことばっかりで、ごめんなさい。尊師が言ってたの、これからは多様性の時代で、みんなが認めあう時代になるって。だから私Kちゃんのことも認めていこうと思うの。だから何でも話してね。今日は家にはお母さんもいないし、この部屋に2人だけだから何でも話してね」

Kはゆっくりと笑みを浮かべた気がしたが、はっきりとはわからなかった。

次の瞬間、私の腹部から血が滲みでていた。私は何が起こったのかわからなかった。私の腹部にナイフが刺さって血が流れてていた。私はナイフが刺さった部分を両手でおさえてうずくまった。

後頭部のずっと上の方からKちゃんが私に叫んでいた。

「おいおい、くたばるんじゃねえよ。私はあんたのことなんてこれっぽっちも信用してねえんだよ。私、人が悶絶する姿が好きなの。ねえ、わかってよ。これも多様性ってやつだろ。ありがたいねえ。多様性」

次の瞬間、後頭部にナイフが刺さるのを感じ、私は消えた。


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