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ランドリーランドリー
僕が彼女に会ったのはコインランドリーだった。
僕は東京でしがないバンドマンをしているが、アパートには洗濯機がないのでよく近所のコインランドリーに行った。夜の9時頃行くのだがあまり利用している人はいなかった。でも誰かが利用しているであろう洗濯機がいつも音を立てて動いていた。
その日も僕はいつもの洗濯機に洗濯ものを入れ、40分近くの本屋で時間を潰してからコインランドリーに戻ってきた。
洗濯ものを取り出そうとドラム式の扉をあけようとして、僕は思わず飛びのいた。中に人が見えたのだ。
え?
え?
僕は扉をおそるおそる開けてみた。中に体育座りをしている女の子がいた。
いやいやいや
「あのう?何してるんですか?」
「あ あ あ 私いつの間に?ここはどこ?今西暦何年なの?」
彼女は洗濯機の中から体を出し、僕にせまって問いただした。
「いや ここは東京で今は1990年だけど。。。」
「は?あんた何言っての?私2020年から来たんだけど?」
「え?」
「え?」
「タイムマシーンか何かってことですかね?」
「他に何があるのよ?未来人よ!」
「はあ そうですか。それより僕の洗濯もの返してくれませんかね?」
「あんた何言ってるの?洗濯物よりもびっくりしなさいよ!未来人よ!」
「はあ 未来人はいいんですけど。僕、服がないとバイト行けないんで」
「知らないわよ!大体タイムマシーンで洗濯するからいけないんでしょ!」
「はあ。でも。バイトが。」
「バイトが何よ!!あなたは今から私と一緒に未来に行くのよ!あなたの未来が大変なことになっているのよ!」
「はあ でもバイトが。。。」
「おい死ねよ。バイトバイトうるせえな!売れないバンドがよおお!さっさと来いよ!」
僕は女の子に連れられて洗濯機の中に入る。
「いやいやいや大人2人が入るわけないじゃん」って思っているうちに体が吸い込まれていく。
そして異空間を抜けて、扉を開くとそこは2020年だった。
「という話をあんたは信じる?」とサキはベッドの横でたばこをふかしながら僕に話した。
「くだらねえな。洗濯してくるわ」
僕はコインランドリーに行き、空の洗濯機の扉を開く。
「そんなわけねえし。あいつ何言ってんだ。実にくだらない。」
そう言いながら、洗濯機の中にTシャツを見つけた。
「誰だ、忘れた奴は。」
僕はTシャツを広げてみた。そこにはこう書かれていた。
I KNOW YOU IN 1990.
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