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「ニューノーマル」はみずから創り出すもの #noteフェス

あらゆるメディアで「ニューノーマル」という言葉が踊るようになったのは、いつ頃だっただろうか。パンデミックは私たちの生活を変化させ、1年前には予想もしていなかった道──オプションBの世界──を生きなければならないと誰もが思い込むようになった。

noteフェス3日目のセッションに「体験価値のニューノーマル」というタイトルがつけられたのも、そんな世相を反映してのことだ。ホテル業界、飲食業界それぞれのフロントランナーが見ている「新しい世界」について聞きだす。
私もそのつもりでモデレーターとして質問を組み立てていた。

しかし予想に反して、二人の結論は「パンデミックが変えたことは何もない」だった。

新たにはじめたことはあっても、このために特別に変えたのではなく以前からやろうと思っていたことを早めに展開しただけ。やるべきことの大筋は変化しておらず、顧客が求めているものを考えて提供していくのみ。

はたから見ると、二人は今年を境に大きく変化してしまった市場環境に適応するために新しいことをどんどんやっているように見える。しかし実際はこの変化がなかったとしても遅かれ早かれ着手していたこと。だからこそこのスピード感で次々と新しい施策を打つことができたのだ。

この姿勢を象徴していたのが鳥羽さんの「スタイルではなくスタンス」というフレーズだ。セッションが終わった後にその真意について詳しく伺ってみると「スタイルはあくまで他人の視線を気にしている状態。他人に惑わされず自分の考えを貫く"スタンス"こそが、ブレないために必要だと思うんですよね」とのことだった。

龍崎さんも鳥羽さんも、今をときめくトレンドメーカーでもある。だからこそ、その「スタイル」ばかりが注目され、表面だけを真似しようとする人たちもいる。

しかし顧客の心を掴んで離さないのは表面的な今っぽさではなく、二人の言動から滲み出る「スタンス」である。スタンスに嘘はつけない。だからこそ人はそこに惹きつけられる。

一般的に、こうしたイベントや取材で「目新しいことは何もしていない」と言い切るのは勇気がいることだ。聞き手はわかりやすくセンセーショナルな「答え」を求めているものだし、サービス精神のある人ほどその期待に応えるために無理やりにでも目新しい「何か」を語ろうとしてしまう。インスタ映えと同じように、経営者が語る言葉にも「メディア映え」が潜んでいることがある。

聞き手は目から鱗が落ちるような魔法の言葉を待ち構えているものだが、淡々と語られる当たり前の中にこそ真理はある。そういう意味で、今回のセッションはまさに「真実」が語られた回だったように思う。

もうひとつ印象的だったのは、龍崎さんが語っていた「SNSに投稿しづらくなったけれど、本当に気に入ってくれた人はLINEや直接会って口コミしてくれる」という話。

龍崎さんといえば「バズるホテルプロデューサー」と呼ばれていたこともあるほど、自身の投稿もよくSNSで拡散されているし、手がけるホテルも若者の心を掴む演出がうまくSNS映えするものが多い。そんな彼女の目に、今の「ホテルツイートブーム」がどう映っているのかは私も気になっていることだった。

以前からいいホテルのツイートはバズりやすいコンテンツのひとつだったが、パンデミックによってホテルを応援する流れもあってか似たような構成のツイートが乱発されるようになった。私もだんだん似たようなツイートに飽きはじめ、こんなツイートもしていた。

SNSについて龍崎さんは「本来のホテルのあり方に戻ってきたように思う」と発言されていた。これは私も最近考えているテーマのひとつである。

SNS映えの時代が一周して、見せるためではなく自分自身の「イマココ」の満足を得るためのプリミティブな欲求に回帰しているのではないか。強いて言えば、これこそが「体験価値のニューノーマル」なのだと思う。

お二人のトークでは、すぐに真似できるウルトラCが語られているわけではない。何かを得よう、もらおうとするのではなく、自分の立ち位置とスタンスを見つめ直すための鏡として聞いてもらいたいセッションである。

▼下記のYouTubeから全編視聴できます



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