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「消費の場」そのものがデジタル化していく時代に

巷では盛んに「DX」が叫ばれているが、小売の未来を考える上で今後重要な課題は「消費自体のデジタル化」にどう対応していくかにあると私は考えている。オンラインを通して形のあるモノを買うよりも、オンライン上で完結する消費の方がメインになる日が遠からずくる。そうなったときに、店舗の価値や小売企業自体の存在意義が改めて問い直されるように思うのだ。

経済産業省が昨年発表した統計によれば、2019年時点でオンラインにおける物販の市場規模が10兆515億円、電子書籍やオンラインゲームといった「デジタル系分野」が2兆1,422億円となっている。

上記の記事ではEC市場を3つの分野に細分化し、市場規模や伸び率を比較している。

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経済産業省HPより)

パンデミック前の2019年時点でもデジタル系分野、つまり「インターネット上で購入しインターネット上で消費する」市場がすでに全体の1割を超えていることがわかる。2020年以降はさらにNetflixをはじめとするデジタルコンテンツへの課金が増え、ECのように「モノを買うためにデジタルを活用する」だけでなく「デジタル上で完結する消費」も増加しているのではないかと予想される。

また、この調査の中で特筆すべきはデジタル系分野の中でもオンラインゲームが1兆3,914億円と、全体の半分以上を占めている点である。電車に乗ると想像以上に多くの人がスマホゲームに興じている姿が散見されるのはもちろん、eスポーツの盛り上がりやYouTubeでのゲーム実況コンテンツの人気など、ゲームは今や多くの人が時間もお金も消費する対象となっている。

物販系分野の内訳を見ると「衣類・服装雑貨等」は1兆9,100億円であり、オンラインゲームの市場規模はファッションECとほぼ同じと見なすことができる。

もちろん、パンデミックによってEC市場も拡大したため、2020年の統計ではファッションのみならずあらゆる業界の規模が急拡大しているはずである。しかし長期的な視点から見ると、単に「デジタルを介してモノを買ってもらう」だけではなく、オンラインゲームや電子書籍のように「デジタル空間で完結する消費」にも対応していくことが今後あらゆる小売企業に求められるのではないかと思われる。

たとえば、すでにこんな事例もでてきている。

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余談的小売文化論

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「知性ある消費」をテーマに、現代の消費行動や理想論と現実的な問題のギャップについて考え、言語化しています。「正解」を語るのではなく、読み手…

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