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「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」

昨晩、2019年シーズンが正式に終了した。
日本一になったのは、ソフトバンクホークス。
蓋を開けてみれば、CS1stステージから10連勝という破竹の勢いで日本一にまで登りつめた。

故障者を複数抱えながらも、若手の躍進によってなんとか首位を保ってきたペナントレース。
それでも最後の最後に西武の強力打線を前にリーグ優勝は叶わなかった。

正直、今年は最後の直接対決でも西武に惨敗していたので、日本シリーズまで駒を進められるとは思っていなかった。

今年はまだ、試合がある。

試合に勝てた喜びと同じくらい、今シーズンが伸びた喜びに胸躍らせたこの二週間だった。

『CSから10連勝』『負けなしで日本一』というとまるで余裕で勝ったかのように見えるけれど、ほぼ全試合リアルタイムで見ていた身からすると、どれも最後まで胃が痛い試合ばかりだった。
優勝コメントで工藤監督も言っていたけれど、ホークスが勝てたのは本当に紙一重の差でしかなくて、ちょっとでも歯車が狂っていたらどこで負けてもおかしくなかった。

それでもホークスが結果的に日本一になれたのは、彼らが『負けなかった』からだ。

野村監督の座右の銘として有名な『勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし』という言葉が私も好きなのだけど、ホークスは『負けないための戦い方』が徹底されている。

CSでも日本シリーズでも、ホークス側に目立ったミスはほとんどなかった。

ひとつひとつのアウトを丁寧に決める。
バントや犠牲フライなど、『最低限の仕事』をそれぞれがまっとうする。
どんなときでもベースカバーを怠らない。
ファウルもギリギリまで追ってアウトにする。
走塁はコーチと綿密に連携する。

つまり『アウトにすべきところでアウトにすること』、そして『無駄なアウトを作らないこと』をとにかく徹底していたのが印象的だった。

結果的に西武からも巨人からもたくさん点はとられたけれど、そのどれもが『相手がうまかった』と思える、力と力の勝負で単にこちらが負けただけ、という内容が多かったように思う。

ホークスの選手たちは、なんども『ここまできたら楽しんだもの勝ちですから』と言っていた。

全力でやって、それでも相手の方が上手で負けてしまうのであれば仕方ない。自分たちは、ただ自分たちの野球をするだけ。

なんども大舞台に立っているからこそのあっけらかんとした『覚悟』は、プレーのひとつひとつに表れていた。

ホークスの選手たちの言う『大舞台を楽しむ』とは、無邪気に気楽にプレーすることではなく、『全力で楽しむためにやるべきことを完璧にやる』ということなのだ、とやっと気づいたのは、最終戦で躍動する彼らの姿を見ていたときだった。

昨日の最終戦は最後まで勝負の行方がわからない白熱した試合だったけれど、もしあそこで負けていたとしても、きっとホークスのチームの雰囲気は明日も変わらなかっただろうと思う。

負けないための準備は完璧にやった。
あとはそれぞれがやるべきことをやるだけ。

そう覚悟した人たちは、とてつもなく、強い。

10連勝したうち、いくつかはなぜ勝てたのかわからない『不思議の勝ち』もあった。
でも大半は、負ける要素を丁寧に潰し、一瞬の隙をついて突破口を開き、怒涛の攻撃で勝つという試合運びだった。

負けに、不思議の負けはない。
そして勝利とは奇跡に祈ることでもたらされるものではなく、負けない要素を積み重ねた先に掴み取るものだ。

ホークスは選手層の厚さや施設の豪華さに言及されることが多いけれど、彼らの強さは結局、ひとりひとりが正確なプレーをするために積み重ねてきた地道な練習によるものだと私は思う。

それはもちろんホークスだけではなく、他の11球団の選手全員に同じことがいえる。
そうやって切磋琢磨しているからこそ、プロ野球はどんどん面白くなっていく。

たった1ミリグラブが届かなかっただけで、
たった0.1秒振り遅れただけで、
たった数cm飛距離が足りなかっただけで、
勝敗が決まってしまう世界。

そんな厳しい世界に生きる彼らの背中を見ながら、私もまた『負けに不思議の負けなし』の言葉を胸に、自分の道を邁進していこうと思う。

今シーズンも、本当にお疲れ様でした。
また来シーズンも、笑顔でみんなと会えますように。

2020シーズンの開幕まで、あと5ヶ月。

***

昨日の日本シリーズは、私にとって勝利以上の意味のある試合だった。

やっと、やっと見られた福ちゃんのスタメン試合。

スタメンオーダーが読み上げられるとき、てっきり出るなら1番だと思っていたので牧原の名前が呼ばれたときはショックで気絶しそうになったけど、まさかの内川の代わりにファーストでの出場だった。

はじめて見た福ちゃんのファースト守備。

「ふ、ふくちゃんが、スタ、スタメンででてるよううううおおおおうううううううう」
と早々に泣き、妹にうざがられながら迎えた初打席。

「福ちゃんは絶対初球から打ちにいく。そしてたぶん菅野はそれをわかって打ち上げやすい球を投げるはず」
という私の予言通り、初球であっさり討ち取られた福ちゃん。

それでも第三打席では出塁し、塁上に立っている姿を見て「ねえええええええ福ちゃんが自分のバットで出塁してるんだけどおおおおおおおおお」と号泣する私。呆れる妹。

出塁したからには、絶対に、絶対に、ホームに帰ってきてほしかった。

8年前の日本シリーズ、彼の走塁は常に『代走』としてのものだったから。自分のバットで塁に出て、そして走って、ホームに帰ってきてほしい。

走れ、走れ。走って、福ちゃん!
周東が走りのスペシャリストとして試合を盛り上げたように、あのときの日本シリーズは福ちゃんが代走で出てきたら『必ず帰ってきてくれる』と期待が持てた。

必ずホームに帰ってくるから、リターナー。
その異名の本領を、ここで発揮してほしかった。

結果的に盗塁は見られなかったけれど、敵のエラーもあって、福ちゃんが無事にホームに帰ってきた。
そのときの感動は、きっとずっと忘れないだろうと思う。

自分で塁に出て、自分の足でホームに帰ってくる姿。
映像ではなんどもなんども目にしていたけれど、いざ同じ空間で、自分の目でその姿を見ていたら、涙が溢れて止まらなかった。

ちょっとでも何かが掛け違っていたら、年齢的にもトレードや戦力外になっていた可能性だってあった。
特に若手の成長が著しいホークスでは、1つ年を重ねることの恐怖は大きい。

それでも、福ちゃんは30歳の今年をキャリアハイにした。
懸命に努力しつづけることの意味を、なんども教えてくれた。

今年は、本当に福ちゃんが大活躍した年だった。
中継を見ていても福ちゃんタオルの人がすごく増えたし、セパどちらのファンからも『エースキラー』として認知されるほど、たくさんホームランも打って、走って、何度もホームに帰ってきた年だった。

でも、福ちゃんは今年でこのユニフォームを脱ぐことになるかもしれないから、ぜったいぜったい勝ってほしい、そして活躍してほしいと祈り続けた試合だった。

第二戦の試合前の円陣で、福ちゃんは『このメンバーで野球が出来るのは残りわずか』と言っていた。

とても素直な人なのでたぶんこの言葉に深い意味はないと思うのだけど、福ちゃんの来年の去就がどうなるかに関わらず、このメンバーで揃って野球ができるのは、昨日が最後の試合だった。

来年にはまたスタメンもベンチメンバーも代わり、コーチやスタッフさんたちも変わる。

私たちにとっても、『最後の一戦』だったのだ。

晴れて日本一になって、以前に比べれば格段に出場機会が増えて、そして彼は、プロ入り以来13年ずっと慣れ親しんできたホークスを出ていくことを決めた。

日本シリーズ終了後すぐに『権利を行使する』と正式に発表した福ちゃんは、きっと来年は違うユニフォームを着ている。

でも昨日も全力で『やりきった』という表情でにこにこ笑う福ちゃんを見ていたら、きっとどこにいっても大丈夫だと確信できた。

大好きな福ちゃんが、さらに活躍できる道を選べますように。
今はもう、寂しさよりも次への期待の方が大きい。新天地で活躍する姿を、早く見たいと思う。

来シーズン、福ちゃんがどこのユニフォームを着ていたとしても、私はまたそのユニフォームを着て、球場にかけつける。
これまでの5年間、ずっとそうしてきたように。

『宝物』というのはきっと、そうやって増えていくものなのだ。


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Retail Futurist / curator。「知性ある消費を作る」をミッションに掲げています。 将来は世界一の店舗メディアを作る予定。noteの有料マガジン「余談的小売文化論」とコミュニティマガジン「消費文化総研」もよろしくどうぞ!